[Inst-01] CASIO CT-607
中学生になって初めて我が家にCDコンポがやってきた。だがCDは気軽に買えなかったので、専らレンタルショップで借りてきて、カセットテープにダビングして聞いていた。
最初のうちは、街角で流れているような普通のポップスやロックのCDを借りていたが、そのうちゲームミュージックコーナーというのがあることに気が付く。そこを何となく見ていたら、テトリスのサントラがあった。ゲームのテトリスは家にあり、どんな曲か想像がついたので、物は試し借りてみることにした。ら、衝撃的だった。
テトリスの曲そのものはロシア民謡やクラシックの曲などが使われているのだが、そのCDにはそれらをテクノやマンボ、ハードロック、フォークなど様々なジャンルにアレンジしたものが収録されていたのだ。
それがきっかけでゲームミュージックのサントラCDを漁るようになった。
その頃、何故か無性にキーボードが弾きたくなった。きっかけは分からない。中学2年か3年の頃と思うが、親にねだってカシオの40鍵くらいのミニキーボードを買って貰うことができた。
最初はそれでひたすら耳コピをしていた。両手なんか使えないからメロを弾くだけだが、それでもだんだんとCDに合わせて弾ける曲も増えてきて、楽しくなってしまった。
だが、40鍵くらいしかないので、ちょっとでも音域の広い曲は対応できない。もっとちゃんとしたキーボードを弾いてみたいと、2年後くらいに再びおねだりをした。
そしたら誕生日に買って貰えることになった。
当時は、色々あって家計が苦しい時期だったので、何でもいい、という訳にはいかなかった。結局買って貰ったのはお店で売られているキーボードの中で一番のエントリモデルであった、このCT-607であった。確か2万円弱くらい。
買いに行ったときには、売られているキーボードの機能の違いなんて全く分からなかった。そこそこ音色が選べて、鍵盤がいっぱいついていればOKくらいの希望しかなかったので、標準鍵のキーボードが手に入ったというだけでとにかくうれしかった。
音色は20音くらいのベース音色があって、それを2系統組み合わせることで120種類くらいの音が出せた。
手に入れて以来、相変わらずメロを片手で弾くことしかできなかったが、曲に合わせて音色を変えたりして、いよいよその曲の(まだ見ぬ)演奏者になりきっていた。
そうしてキーボードを触り始めると他の製品のことも気になって来るし、雑誌などを呼んで目や耳が肥えてくる。
この期に及んで、自分のキーボードがタッチレスポンスもベンドもMIDI端子も付いていない超入門機である事実を知った。
それが分かると、途端に自分の持っているものがショボく見えてくる。さらに、高校に入学してからDTMにも興味が出てきたので、MIDIが付いていないこの機種では、音源のコントロール用として使うことも出来ない、ということが分かって、再び父に新しいものが欲しいと相談した。
結果、新しいキーボードを入手することが出来たので、このキーボードは引退することになった。
暫く家の物置にしまってあったが、高校の同級生がキーボードを始めたい、と言っているのを聞いて、譲ってしまった。