[DigiItem-03] NEC PC-9801US

(Spec : i386SX 16MHz 125MB内蔵HDD(後付))

1993年入手


父親が使っていたPC-9801VXを譲り受けたことで、自分のパソコン人生が始まったわけだが、やがて色々不満が出てきて(リンク先記事参照)、新しいPCが欲しくなった。とはいえ、当時はPCはとても高価で、気軽に買えるものではなかった。自分の親が何十万からの出費を容易に認めてくれるような家でないことは知っているからお願いしづらい。でも欲しい。

雑誌などで情報収集していると、中古買取り業者の広告が入っている。とある業者の買取表にVX41は50,000円で買取、と書かれていたのを見つけた。まぁ、焼け石に水だとは思うが、それを元手に新しいPCを買って貰えないかと父親と相談してみた。

「そういうことなら、倉庫にもう1台使ってないのがあるからそれも一緒に買い取ってもらうか。」

父親からまたとない情報がもたらされた。早速倉庫の中を漁ってみたら、父親の言うとおり同じVX41がもう一台出てきた。しかもなぜかRシリーズのキーボードと一緒に。。。なんだよ、ここにあるなら教えてよw

2台分あれば新しいPCの持ち出しがその分減らせる。これは自分に追い風が吹いてきている!


で、新しいPCは何を買うか。当時はPC-9801Fシリーズ(FA/FS/FX)が最新モデルだったが、それは出たばかりで高すぎて手が出ない。
そこで中古も視野に入れて探すことに。

9801シリーズは、なくてはならないものだったが、Vシリーズ(VM/VX)の後にRシリーズ(RA/RS/RX)、Dシリーズ(DA/DS/DX)、Fシリーズの順に、概ね1-2年に一度のペースでニューモデルがリリースされていた。R/D/Fの各シリーズの末尾についているA/S/Xは、Aがハイエンド、Sがミドル、Xがスタンダード(Vシリーズは逆にXがハイエンド)という位置づけで、そのほかに省スペースに特化したモデルとして、UM/UX/UF(UR)というモデルもあった(他にEシリーズやCシリーズと言った時代のあだ花モデルもあったが、ややこしくなるので割愛)。

それらの違いはというと主にCPUの種類の違いであった。細かい部分は色々異なるが、ざっくりいうと、

・NEC v30 → VM/UM/UF(UR)
・Intel 80286 → VX/RX/DX/UX
・Intel i386SX  → RS/DS/FS/FX(クロック違い)
・Intel i386DX  → RA/DA
・Intel i486SX  → FA

というようなラインナップとなる。
なぜか省スペース型は一貫して「Uなんとか」というモデル名になっていて、ラインナップの系統整理がややこしい。

中古となると旧モデルの中から選択することになる訳だが、旧モデルと言っても型落ちしてからあまり日が経っていないうえ、性能的にも大差ないので、これらの中古品は潤沢に市場に出回っていた。ただ、値段もそれなりだったので、どれでも買えるという訳ではなかった。

まぁ、とは言っても、80286搭載機種はVXと同スペックなので、選択肢からは除外できる。もちろんFシリーズも除外。そうなるとターゲットはi386CPU搭載モデル辺りに絞られる。

i386CPU搭載モデルは上記のとおりRA/RS/DA/DSが該当するのだが、DAは新しめのハイエンドなので中古価格も高い。DS/RSはスペック的にほぼ同じなので、それなら古いRAよりは新しいDSの方がいい。そうして消去法で消し込んでいくと、DSとRAが残った。

RAは古いがCPUスペックは高い。DSはその逆となる。販売価格はどちらも同程度なので、新しさを取るか、性能を取るかの差になる。なので、2機種の中から選ぶのはかなり迷う。


迷っているうちに、USというニューモデルが発売されるという情報を入手した。その型番が示すとおりUSは省スペースモデルとなる。ラインナップとしてはFシリーズに含まれる。新製品なのだが、省スペースモデルなので価格は他のFシリーズよりはだいぶ安い。
このUSはCPUにi386SXを搭載しており、性能的にはRS/DS/FS辺りと並ぶ。面白いことに、その価格もRA/DSの中古販売価格と概ね同程度だった。

だが、それなら新品の方でいいじゃん、と能天気に飛びつくわけにはいかない。省スペースモデルゆえの問題も考慮しなけれならなかった。

まず拡張性の問題。9801シリーズのフルサイズモデルは、拡張スロットが4スロット設けられているのだが、一方のUSは省スペースモデルゆえ2スロットのみとなっている。
今回購入するのが何であるにせよ、HDDはマストアイテムとしたかった。だが、純正の内蔵モデルは価格が大幅に上がってしまって手が出ない。そこでより安価なサードパーティの外付けHDDを取り付けることになるのだが、そのインターフェースとしてSCSIボードが必要になる。

つまり、購入時点で残り1スロットになってしまうのだ。今後増設したい機器が出てきたときに不足することはないだろうか。

次にFDDのサイズの問題。今持っているVXは5インチFDDが搭載されているが、USは省スペースタイプゆえ3.5インチのみとなる。すなわち、ソフトウェア資産が引き継げない。物理的に装着できないのだから対応しようがない。古い資産を全て処分しろなどと言われても困る。oo◎(こまるこまるおおこまる)。

・・・なんだけども、コンパクトな筐体に必要な機能が整然と収まっている姿は何とも愛らしい。拡張性を考慮して中古で我慢するか、新品にして所有することへの満足度を優先するか。。。これまた悩む。


いやいや、そもそもそれ以前の問題は、手元にあるVXがいくらで買い取ってもらえるのか、と言うことだ。それなりに老朽化したマシンだし、キーボードも1台は別機種の物なので、相場表に書かれている満額で買い取ってもらえないかもしれない。あまりに査定が低かったら、買い替えが絵に描いた餅となってしまう。。。

ということで、まずはVXの査定をしてもらって、そのついでに上記の悩みについて相談してみることにした。
VX2台を車に積み込んで、父親と一緒に買取り屋に持って行った。その店は中古PCだけではなく新品PCも取り扱っている。RAやDSの中古も店頭に並んでいるし、USの在庫もあった。

まずVXを査定してもらう。その間に実機を見たり、カタログを眺めたり。暫くして提示された査定金額はなんと満額の10万円だった。


ということで、今度はUSについて質問する。まず拡張性についての懸念を聞いてみた。

「HDDは本体に内蔵できるので、それを使えば現時点でSCSIボードは不要です。ただし今後他の機器を増設するときには必要になるかもしれません。」

HDD内蔵モデルについてはもちろん承知している。だが、高すぎて手が出ない、と話すと、

「サードパーティ製の物にすれば125MBの物で6万くらいですよ。」

え。SCSIの外付けと同じくらいの金額で純正より容量が大きい内蔵HDDなんて出てるんだ!
でも純正じゃないものなんか使って何か問題は起こらないだろうか。

「その辺は全く問題なく動くので大丈夫ですよ。」

へぇ。じゃあ、それがいいじゃないか。拡張スロットも消費しないし、内蔵となれば見た目もすっきりする。

ちなみに、また、万一増設したいものが増えてスロットが足りなくなったら、拡張I/Oボックスというものを付ければスロットを増設することが出来ることも教えてくれた。それだと折角の省スペース性が犠牲になってしまうが、その時はその時で考えればいいか。


もう一つ、FDDの事も聞いてみた。そんなの知らんがな、と言われそうな気がするが。

「それなら、FDDは外付け5インチのドライブを一緒に買っていただくのがいいと思いますよ。内蔵FDDと同時に使えるし、外付けFDDから起動することもできますし、もちろんコピーなども普通にできますので。」

へぇ。外付けFDDなんてものがあるのか。それなら今までの資産も活かせる。今日は目からウロコなことばかりだなぁw


そんなわけで、自分が抱いていた不安要素は店員の親切な説明により、瞬く間に氷解した。USを購入することへのデメリットはほぼないことが分かったので、USを購入する方向で見積もりを作ってもらった。

その結果、締めて30万円ちょっと。そこから買い取り金額を差し引いて、差額が20万円ほどとなった。それまで横で黙って話を聞いていた父親の顔を見る。

暫く間があり、その後首を縦に振った。
本当はモニタも新しくしたかったのだが、これだけあれこれオプションを付けたらそれ以上の贅沢は言えなかった。


で、無事購入し、一式車に積み込んで帰宅。すぐに開梱の儀を執り行ってセットアップを行う。

20090613_141924

写真は退役後に倉庫に置いてあったものを引っ張り出して撮影したものなので、だいぶ汚れが目立っているが、当時はコンパクトで必要な機能がぎゅっと凝縮されたピカピカのPCであり、その姿に惚れ惚れとしたものだ。

FDDの下のふたを開けるとHDDスロットがあり、ここにノートPC用のHDDパックを装着できる。

本体の上にモニターを載せたらもの凄く頭でっかちな見た目になってしまったwそこまでは考慮していなかった。

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一応、縦置きも可能なように作られている。縦置きする場合は、本体横の面に取り付けられているパネルを90度回転させるとブックエンドのようになって倒れにくくなる。
縦置きすれば頭でっかち感は軽減できるのだが、自分のパソコンラックはモニターとPCを並べて置けるスペースがなかったので、結局本体の上にモニターを載せるスタイルで使うことになった。

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背面はこんな感じ。拡張スロットが二つしかないのがウィークポイントだが、それ以外のコネクタ類は標準モデルと同じものが付いているので、その点拡張性が制限されていないのは立派である。

USはFM音源内蔵となっているので、FM音源ボードも不要になった。本体に音声出力端子がついているので、内蔵スピーカーのみならず、ヘッドフォンやオーディオ機器などに接続することも可能。とはいっても、所詮はFM音源なので、ゲームのBGMをコンポから流してもしょうがないよね、といった程度の物ではあったが。

また、9801シリーズは標準でサービスコンセントが用意されている。もっぱら電源連動させたい機器をここに繋いでおくと一括で電源のON/OFFができて便利だった。

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上記は、別の機会に撮影したものなのでPCが別物だが、5インチのFDDは上記写真の左端の物である。下のPC本体はEPSONのPC-486SRで、寸法はほぼUSと同じである。なかなかに場所を取るので、折角のUSの省スペース性をスポイルしまくる存在だった。

所有している資産を3.5インチにコンバートして、5インチ資産を処分することも考えたが、自分の周りのPCユーザーに5インチユーザーがまだ多かったのと、FDのメディアが3.5インチの方が高価だったのとで、結局移行がはかどらず、終始接続したままで使っていた。


ちょっと話が先走ってしまったが、まずは電源を投入。何はともあれHDDのフォーマットがファーストステップ。当時使っていたのはMS-DOS Ver.3.3cだったのだが、それのフォーマットコマンドが上限80MBまでしか認識せず、購入したHDDの全域をフォーマットすることが出来なかった。
ただし、そうしたユーザーに配慮してHDDに専用のフォーマッタが付属しており、そちらを使ってフォーマットすることで無事125MBのフォーマットが完了した。

フォーマット完了したら、FDを抜いてリセットするとHDDから起動してくる。早い。圧倒的に早い。しかも大容量。感涙ものである。
そのHDDにゲームやアプリをインストールして準備完了。PCもゲームも全く快適に動作して、実に快適だった。


暫くの間、それで満足して使っていたが、あれこれHDDにインストールしていたらやがて容量が枯渇してきた。購入当時は大容量だと思っていたんだけどなぁ。。。VXを所有していた頃に色々アドバイスをしてくれた同級生のIとそんな話をしていたら、ディスク圧縮ソフトなるものの存在を教えてくれた。

ディスク圧縮ソフトはディスクI/Oのタイミングでデータを圧縮・展開する常駐プログラムで、藁にもすがる思いで入手。インストールしたらディスクが倍とまではいかないが、1.8倍くらいは使えるようになった。が、たまに誤動作することがあった。誤動作すると圧縮ボリュームが参照できなくなったりした。これはかなり冷や汗ものであった。

なんか、HDD付属のフォーマッタが悪さをしている気がするのだが、原因追及するほどのスキルは持ち合わせていなかったので、だましだまし使っていた。


話は変わって、当時通っていた学校の男子生徒の間で同級生というアダルトゲームがブームになったことがあった。
同級生はFD8枚からなる当時としては大作ゲームで、ある友達が入手したのをきっかけに瞬く間クラス中にコピーが出回った。

このゲームはHDDインストールに対応しているのだが、当時HDDを持っていたのはIと自分だけだった。もちろんFDだけでもプレイはできる。できるのだが、ゲーム内で発生するイベントが各FDにちりばめられて格納されており、そのイベントが発生した時に「ディスクxxを入れてください」というメッセージが出て、ディスクの入れ替えを要求された。

このゲームは、主人公がフィールドの中を移動しながら様々なイベントを拾い集めていくシミュレーションゲームで、その取捨選択によって結末が変化するので、何度も楽しめるゲームだったのだが、主人公の自宅の真ん前の家に一つのイベントが用意されていた。ただ、いつもイベントがあるわけではなく、家を訪ねても何も起こらないこともある。
何も起こらなくてもディスク入れ替えだけは要求される。プレイの際に興奮して力が入ると、うっかりその前の家に入ってしまい、ディスク入れ替えを要求され、イベントが何もないと、再び元のディスクへの入れ替えを要求される。この無駄なイベントで1分くらい浪費してしまう。

こうした面倒はHDDにインストールしておくと回避できるのだが、FDでプレイしていたクラスの連中の間では実に不評だった。まぁ、盛り下がるもんな。。。

そして、男はエロで動く生き物だ。ブームになったのは夏休み前だったが、夏休み明けにはバイトして、とか、親にねだって、とか理由は様々だったが、軒並みHDDを購入していた。

嘘みたいな本当の話である。


当時のCPUの開発スピードは非常に早く、自分がUSを入手した2年後くらいには早くも486DX 66MHzなんてPCが売られる時代になっていた。
遅れてPCを入手した友達が、最新機種を買って、それの初期導入に行ったりすると、どうしても自分のPCと比べてしまう。
まだ購入して数年しか経っていないのだが、もはやUSのどんくささが嫌になって来る。

もちろん、思うがままにPCを買い替えられるような家ではないので、高校卒業してからも暫くの間はこのPCをメインマシンとして使い続けた。

そうこうしているうちに、世間はWindows95の世になっていた。Windows95は大ブームとなり、パソコン人口が一気に増えた。そうしてDOSの時代からWindowsの時代へと一気に進歩してしまった。
もちろんUSはWindowsを動かせるようなスペックではないので、DOSマシンのままで使わざるを得なかったわけだが、仕事でもWin95を扱う業務に就いたこともあり、流石にいつまでもDOSマシン、ってわけにもいかんよな、ってことで、ようやくPCを買い替えた。

そして青春を共に過ごしたこのPCは退役することとなった。もっとも自分がWindowsマシンにたどり着くまでに、色々寄り道をしている。

その辺は以降のエントリを参照いただきたい。

Posted by gen_charly