[読み物-03] 住まいで振り返る半生記【34】
【Episode 6 – 26歳~30歳】
長々と書き続けてきた一連のエントリも、ようやく最終章である。再び1人に戻った。散財しまくって余裕がなかったのでスモールスタートで再起を図ることになった。父が実家に帰ったことで後妻からの干渉は少なくなったものの、自分の身の回りはその後も波乱続きで暫くの間安定しなかった。
だが、転職先で(おそらく)生涯の伴侶となる人とお付き合いすることになった。その人と付き合うようになってからは、生活が目に見えて安定するようになった。
この一連の波乱な人生は、この結末を迎えるための御膳立てだったのだろうと思いたい。
部屋番号20 - 東京都世田谷区某所(その1)
父のわがままに振り回される格好で引っ越した19.の家だが、1年経たないうちに父が家を出て行ってしまったので、再び1人に戻った。
19.の家は父と家賃を出し合う前提で借りた部屋なので、自分1人の収入では家賃を払い続けられない。そもそも3部屋も必要がない。やむなくまた新しい家を探すことにした。
探すことにしたとは言っても、18.19.と毎年のように引っ越しをしていたので、もはや先立つものがない。とにかく初期費用が安く、家賃が格安の物件に移住して、生活の立て直しを図らねばならない。とはいえ、派遣業に従事している都合上、いつ何時客先が変わるか分からないので、通勤の事を考えたらできるだけ都心から離れたくない。
その辺の事情を勘案して導き出された家賃の上限は5万円。通勤に便利な所であれば、最悪、風呂なしトイレ共同でもよい。今時そんな物件があるかどうか分からないが。。。
とりあえず手近なところから探してみようと、つつじヶ丘、仙川、千歳烏山、芦花公園、八幡山、と順番に不動産に当たってみたが、やはり5万円の物件など見つかる筈もなかった。相場としてはワンルーム6万円から、と言う感じであり、そもそも風呂なしトイレ共同なんて部屋が存在しなかった。
翌週、改めて千歳烏山の不動産を巡っていて、ふらりと入った不動産で店員が出してくれた情報をパラパラとめくっていたら、ある物件に目が留まった。その物件は、芦花公園駅から徒歩8分、6畳、4.5畳の2間で、バストイレもついていながら、家賃5万8千円である。共益費は水道代込みで2千円とのこと。
そのうえ、敷金礼金も各1か月のみ。毎月の家賃は想定を1万ほどオーバーしているが、部屋も広く駅もそこそこ近い。初期費用も抑えられて、何も我慢する必要がない物件である。店員にこの物件を見せてほしい、と伝える。
「あー、この物件ですか。。。」
店員はカウンターの向こうで頭をボールペンで掻きながら、顔をしかめる。なに、事故物件?
古い分にはいくら古くても我慢する覚悟はあるが、事故物件は流石にご免蒙りたい。。。
「いや、事故物件じゃないんですが。。。めっちゃ建物が古くて。。。見たら多分引きますよ。」
紹介している側の店員をして引くという物件とはどんなものだろうか。怖いもの見たさもあって見てみたくなった。
ぜひ案内してほしい旨を伝えると、店員は複雑な顔をして準備し始めた。
店員に連れられてその物件にやってきた。うん、なかなかに衝撃的な外観である。
外壁がトタン張りで、戦後のバラック小屋のようだ。確かにこれは只者ではなさそうだ。。。
建物を回り込むように裏に回ると玄関。玄関ドアを開けるとまず内階段で2階に上がるようになっている。
2階に上がると、手前に4.5畳、奥に6畳という間取りだ。しかも東、南、西それぞれの方角を向いた窓があり、日当たりも悪くない。内装も外観同様クラシカルだが、お風呂は意外にもユニットバスがおごられている。
はっきり言って、建物が古い以外、何も悪いところはない。即決した。