[DigiItem-08] DDI Pocket Kyocera PT-101

DDI Pocket Kyocera PT-101

1996年入手:



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自分が初めて手にした携帯電話がこれだった。世間では都市鉱山がどうのとか希少金属の回収がどうとかで使用済み端末の回収が推奨されているが、自分は今まで所持してきたものを手放すことに抵抗があって、なんだかんだで今まで使った端末は大体所持している。

たまに眺めてノスタルジーに浸るため、というのが主な理由だが、こうして思い出話を書くときに存外に役に立つから、と言う理由もあるw


自分は高校卒業後親元を離れ、1人で暮らすことしたのだが、その時、緊急時の連絡用として父が所持している携帯電話を貸してもらえることになった。当時父は複数台の携帯電話を持っていたので、その中から使用頻度の低いものを貸しておいてやる、と言う話だった。

父がなぜ複数の携帯電話を持っているか、別に悪い仕事をしているわけではない。当時PHSはPDC系の携帯電話よりも格下に見られていて、手軽で格安に通話したいという層以外は基本的にPDCを契約していた。そこで、PHSキャリアはシェア拡大のために多くの携帯ショップで投げ売りのようなことを行っていたのだ。買うのはタダだし、月々の通話料金も微々たるものだったので、父はそうした廉価販売の情報を聞き付けては契約して帰ってくるようなことを繰り返して、結果的に複数端末を所持していたという次第。

もちろん使いもしない電話機を持っていてもしょうがないので、便利でない電話機はやがて解約していたのだが、今回自分が独立するタイミングでたまたま2台持ちをしていたので、近く解約するつもりだった方を貸してもらった、と言う次第。


自分も携帯電話を持つことには憧れがあったので、まさに渡りに船である。しかも通話料金は父が負担してくれるという。そんなイージーモードを享受してよいものか。。。もちろん享受した。
通話料金は基本料金の中に何円分かの通話料金が含まれている、と言うようなプランだったと思う。流石にのべつ幕なしに使えるほどのドラ息子っぷりは発揮できず、基本料金の範囲内に収まるように気を付けて使っていた。

もっとも当時は通話相手が大抵固定電話だったので、外から携帯電話でかけなければならない状況は殆どなかった。だから使う機会もそんなになくて、別段我慢していたと言う感じでもなかった。

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さて、自分が初めて手にしたこのPT-101、相当にクラシカルなデザインである。父がバラマキされていたものを貰って来たというだけあって、当時でもかなり古臭いと感じたものだ。基本的にはトランシーバーの発展形のようなモデルで、通話以外の機能は何もない。メールなんて当然使えないし電話帳もなかった。マナーモードもバイブレーターもついてない。当時はマナーモードと言う概念がなかったので、電話がかかって来ればピロピロその辺で鳴り出すような感じだった。

電話帳の機能はなかったが短縮ボタンが4個付いていて、そこに任意の番号を登録することが出来た。その短縮ダイヤルにはイラストで想定する用途が描かれていた。その絵柄は、自宅、職場、お父さん、お母さん、である。もちろんそれに合わせる必要は全くないのだが、お父さんのアイコンに彼女の番号なんか登録したら、毎度ボタンを押す時にくすぐったい気持ちになりそうだ。。。w

画面は数字が表示されるだけである。アルファベットを含め、数字以外の表記は一切できない。

この機種はキー操作ロックがハードウェアスイッチになっていた。本体脇に物理的なスイッチが付いていて、そのスイッチをONにすることでキーがロックされる仕組みである。他人に操作させないための機能ではなく、あくまでポケットの中などで誤操作しないようにブロックするための物だった訳だ。当時はまだセキュリティを考慮する必要がなかったのだ。


当時のPHSは地下鉄でも電波が届くことがウリだった。その頃の勤務先の通勤経路に地下鉄区間があったので何気に重宝した。またPDC電話機と比べると音質が良かったので、会話が聞き取りやすかった。
反面、移動する車や鉄道では基地局間の切り替えが間に合わずに通話が切れてしまうという弱点があり、車の運転中は使えなかった。そのうえエリアはまだまだ狭く、大都市であればまぁまぁ使えるものの、ちょっとした地方都市では圏外となる場所がザラだった。

なので、もっぱら都市部で使う人が保有していたように思う。


この頃は携帯電話を使う際のマナーについてまだコンセンサスが出来上がっていなかったので、電車の中でも大声で会話する人や、延々長話をする人が後を絶たなかった。そういう人に限って注意すると逆切れしたりするものだから、やんわり遠慮してもらうための口実として、携帯電話の電磁波が心臓ペースメーカーに悪い影響を与える可能性がある、ということを根拠にして車内での通話を控えるようあちこちでアナウンスされていた。

やんわりとしているが、要はあんたの無駄話で人を殺す可能性があるけど、それでもいいのか?と脅している訳だ。その効果はてきめんで数年ほどで車内で大声で通話する人はとんと見なくなった。マナーモードにして着信音が鳴らないようにしたり、鳴っても小声で最低限の会話をして切る、というマナーが広く周知された。

だが、実際にそうした状況においてペースメーカーが誤動作した、と言った話を聞いたことがない。
知人のお母さんがペースメーカーを入れているのだが、その本人が日常的に携帯電話で通話しているのだから、まぁ、後は分かるな、という話だと思うのだが。

そうしたことがやがて認知されると、いつの間にかペースメーカー云々、というワードはひっそりと消し去られていった。


ただし、未だに電磁波によって自分の思考が読み取られていると思い込んでしまう人もいるわけで、電車の中で電話をかけている人を見つけると、ヒステリックに怒鳴り散らしたりしている。その人にはその人の悩みがあるのだから、それをとやかく言うのは野暮だと思うが、錦の御旗を与えてしまったような気がして、なんだかな、と言う気もする。


それはさておき、まぁ電話自体はショボいものだったが、それでも初めて手にする携帯電話と言うことで、それなりに愛着を持って使っていた。使用期間は1年くらいだったと思う。その頃に父が使っていた電話をまた譲って貰うことが出来たので、新たな機種に交代となった。

Posted by gen_charly