[OtherCar-05] お父さんのキャンピングカー

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お袋が父と離婚して数年後に再婚することになったのだが、この車はその相手が乗っていたキャンピングカーである。いや、どこからどう見ても中型バスだよな。。。

この再婚相手の人はお袋の境遇をよく理解してくれる人で、自分という血のつながりのない息子がいるという話も飲み込んで、何ならその子を遊びに寄こしなさいと誘ってくれるほど心の広い人だった。当時思春期真っただ中で父の態度に不満を感じていた自分は、父に内緒で金沢まで出かけてその再婚相手(以下、お父さん)に色々愚痴を聞いてもらったりしていた。

ま、その話はおいておいて。

 

1991年くらいだったか。自分は初めて金沢へと出かけてお袋や弟と数年ぶりの再会を果たした。その時に弟がキャンピングカーを見せてあげる、と言って連れてこられた駐車場に停まっていたのがこれだった。いや、ちょっと待て。

せいぜい5ナンバーのワンボックスタイプか何かがおいてあるのだろうとばかり思ったらなんだこれは。中型バスじゃないか。お父さんは何を生業にしている人なのか。。。普通の人生を送っている人はこんな中型バスをキャンピングカーに仕立て上げたりしない。

お父さんは至って普通の自営業を生業とする人だった。ただしキャンピングカーに並々ならぬ情熱を注ぎまくっている人でもあった。その情熱が高じてこんなキャンピングカーを制作するに至ったのだそうだ。

 

それから数年後にこのキャンピングカーに乗せてもらう機会を得た。この車で能登半島一周の旅に連れて行ってもらったのだ。その折にあまり写真を撮らなかったことが悔やまれるが車内の様子はある程度記憶している。

出入口は車両中央部にありそこから車内に入るとまず洗濯機。家庭用の全自動洗濯機が鎮座していた・・・って水何リットル積めるんだ?
正面はポータブルトイレ兼シャワールーム。車体後方3分の1が寝台スペースになっていて2段ベッドになっている。

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トイレの並びにキッチンと冷蔵庫。キッチンもちょっとした料理なら何の困難もなく対応できそうなほどのシステムキッチンだ。
そしてその並びにテレビとCDチェンジャー。テレビがブラウン管なのは時代を感じるが20インチ以上ある大型テレビが鎮座している。

そのテレビの方を向いて4人掛けの向かい合わせソファーとテーブルが配置されていた。このソファーは背もたれと座面を引き延ばすようにすることで2名分のベッドとすることが出来た。すなわち後部のベッドスペースと合わせて6人乗りということになる。

もはや下手なワンルームより立派で充実した空間である。車内で生活しても何の苦痛も感じずに過ごせそうなほどだ。テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコンと大電力を必要とする家電一式が搭載されているので、それらの電力を賄うための発電用ディーゼルエンジンが動力用のエンジンとは別に搭載されている。

 

自分もちろんこんなでかいキャンピングカーなど見たことがない。ひたすらため息しか出なかった。
これだけ充実装備の車両なので車両価格と合わせたその総工費は家が一棟建てられるほどになったそうだ。家よりも車の方が立派な家電が揃っているとお袋が苦笑いしていた。父といた時に比べるとお袋は朗らかに笑い、離婚する前とは別人のようになっていた。ちょっと破天荒な人ではあるが少なくとも父と一緒にいるよりは幸せそうだった。

 

ちなみにこの車、乗車定員が少ないので普通免許で運転することが出来た。と言っても図体は中型バスそのものだから、車両の感覚を掴めるようになるまではとてもじゃないけど乗りこなせなさそうだ。当時はまだカーナビなんて便利なシロモノはなかったので、基本的には大通りしか通らなかったのだろうと思うが。

立派なキッチンが付いているので車内で普段どおりの腕によりをかけた料理を作ることも可能。この車でドライブに連れて行ってもらった折、とある漁港で水揚げが終わったばかりの漁師のおじさんに話しかけて、ビニール袋いっぱいに入ったイワシを100円で譲って貰ったことがあった。それを車に持ち帰ってその場で捌いて食べたのだが、その時のイワシの味はどこの店でも食べられないような絶品だった。

 

お父さんはやがて諸事情によりこの車を手放すこととなってしまった。再びキャンピングカーを手に入れることなくこの世を去ってしまったのだが、そのDNAは弟に確実に相続され、数年前についに念願のキャンピングカーを手に入れた。堅実な奥さんからはあまりいい顔をされていないようだが。。。

Posted by gen_charly