仕事の帰りに散歩がてら甲州街道を歩いていて、ふとそこはかとない違和感を覚えた。なにに違和感を覚えたのかとっさに分からなかったが、振り向いたらそこにトヨタセラが停まっていた。セラ自体やや珍しい車なので、それでかなと思って納得してまた前を向こうとした直後、思わず二度見。
よーく見ると、、、フェンダーミラー仕様だ!
フェンダーミラーというのは最近ではタクシーくらいでしか見かけなくなったが、ボンネットの上(と言うかサイド=フェンダー)につけられたサイドミラーのことを指す。20年前くらいまでの日本車はドアミラーが認められていなかったので全てフェンダーミラーだったのだが、ボンネットの上に角が生えたようなシルエットはデザイン上見栄えが悪いという声が多かったのか、後に法改正してドアミラーが認められるようになった。
ドアミラーが認可されて以降、日本で販売される車はほぼすべてドアミラー仕様に切り替わったのだが、フェンダーミラーで慣れている層もいるのでメーカーはフェンダーミラーをオプションとして用意することでそれらのユーザーの救済を行っていた。
特にタクシー業界ではフェンダーミラーの方が車幅感覚が掴みやすいのと、ミラーを見るときの視線移動が少なく後部座席の乗客にいらぬ視線を送らずに済むという理由から、未だにフェンダーミラー車が多数走っている。
そうした業界関係の車ではなく、個人でフェンダーミラーにこだわる人もいるにはいるが、比較的年齢層が高く保守的な考え方の人が多い気がする。なので街中でフェンダーミラー仕様の車を見かけても大抵黒・白・シルバーいずれかのセダンで、シートにレースのカバーをかけているようなザ・おじさん車ばかりである。
翻ってセラである。天井まで回り込んだグラスエリアと、それごと開閉するガルウィングドアが採用されたかなり異色の車である。曲面を多用したデザインは当時としては随分と近未来的な物だった。フロントがスラントした2ドア車でスポーティーさと若者らしいフレッシュさを積極的にアピールしている。
そういう車なので、少なくとも車にフェンダーミラー仕様を求める保守的なおじさんが選ぶ車の条件にはまず当てはまらないような気がするのだが、トヨタはこういう車種にまでオプションを設定しているというのか。
設定があることも驚きだが、それを選ぶ人がいると言うことの方が驚きだ。保守的なのか前衛的なのかオーナーの人物像が全く想像できない。
そもそもデザインの前提がドアミラーなので、スラントしたノーズから伸びたステーがやたら長い。まるでカタツムリの目だ。本当にこれで良かったのだろうか。余計なお世話だが。