[DigiItem-10] NEC PC-8801mc2
(Spec : [CPU]μPD70008AC-8 8MHz & 4MHz / [HDD]なし / [MEM]?)
1997年頃入手:
NECはかの有名なPC-9801シリーズの他に、PC-8801シリーズというパソコンも売っていた。
一足早くシリーズ終焉となったため、自分がパソコンショップに足を運ぶようになったころには、新品を店頭で見かけることはなくなっていた。
8801シリーズは9801シリーズの先輩格となる8Bit PCである。当初は単純に8bitの8801、16bitの9801という風なカテゴライズだったようなのだが、9801シリーズがビジネスユースでヒットしたこともあって、棲み分け?として、8801シリーズはニューモデルが発売されるごとにホビーユースを意識したモデルへと特化していった。
そのため末期のモデルではホビーユース向けに全振りしていて、テレビへの出力が可能なモデルや、9801シリーズよりも高性能な音源ボードである、サウンドボードⅡを標準搭載するモデルもあった。
ゲームサントラでは一家言あるファルコムも、ゲーム内の楽曲は8801+サウンドボードⅡの性能を活かしきるようなアレンジを施していた。
ちなみに9801の26K音源ボード向けは、その楽曲のパート数を減らしたりボイシングを変えたりして対応していたようだ。
(その割に8801のサントラと比較しても遜色なく聞くことが出来たのは流石だな、と思う。)
自分が初めて耳にして衝撃を受けた、ソーサリアンのサントラCDに収録されていた楽曲の音源も、8801+サウンドボードⅡの構成で再生したものを録音したものだった。
なので、いつか余裕が出来たら8801も欲しいなと思っていた。相変わらず動機が不純すぎるが。。。w
その8801シリーズの最末期にリリースされたモデルがこのエントリで紹介するPC-8801mc2(以下、mc2)というモデルである。
mc2は8801シリーズの集大成ともいうべきモデルで、基本全部入りであるうえなんとCD-ROMドライブが搭載されていた。
当時はマルチメディアというキーワードがある種のブームになっていて、特にCD-ROMの普及により高画質な画像や生音の音声などを取り扱うことが出来るようになったことから、CD-ROMアプリケーションの開発が活発化していた。PCでは富士通のFM-TOWNSシリーズ、ホビー分野ではNECのPCエンジンCDRom^2(ロムロム)がCD-ROMドライブを搭載し、それらアプリケーションやゲームが多数リリースされていた。
が、従来のカートリッジ式のゲーム機やFDを用いたアプリケーションと比較すると、読み出しに時間がかかったりデータの保存領域が別に必要だったりと、使い勝手はイマイチだった。そのせいか、PC分野ではFM-TOWNS以外にCD-ROMドライブを積極的に採用するメーカーは現れなかった。
そこへCD-ROMドライブが搭載されたmc2の登場である。8801シリーズの新たな地平を切り開くべく、満を持してCD-ROMドライブ標準搭載で発売されたのである。
だが皮肉なことにこのmc2を持って純粋な8801シリーズの開発は終了したため、mc2が8801シリーズ最後のモデルとなってしまった。
※この機種の後に9801と2in1になったPC98Do、Do+というモデルが発売されたが、88としても98としても中途半端な立ち位置でその評価は惨憺たるものだった。高校の同級生にこれを所有している奴がいて散々馬鹿にされてたなぁw
さて、そんな時代のあだ花的存在であるmc2、最末期モデルだけあって流通数が少なく市場にあまり出回っていない。
中古ショップでたまに売られていたが、流通量の少ないレアものであるうえ、リリースされてからまだ年数が経っておらず程度の良い機体が中心であったこともあり、どれも強気のプライスでとても買えない。自分は指をくわえて眺めるだけだった。
当時住んでいた家の近所に家族経営の小さなパソコンショップがあった。
主にPC-9801シリーズ本体やゲームなどのソフトウェアを取り扱っている店だったが、その店内の片隅にこのmc2の新品が所在なげに置かれていた。店としても普通に売ってさばけると思っていなかったのだろう。値段は29,800円という処分価格のようなプライスが付けられていたが、それでも長らく店頭に店晒しになっていた。
処分価格の新品mc2、購入意欲はあったのだが、働き始めてまだ間もない身分ゆえ3万円もの浪費はおいそれとできるものではなかった。
いや、是が非でも欲しかったらどうにか金を工面して入手したのだろうが、買ってやりたいことと言えばファルコムのゲームを買ってきてサントラを聞いてみたい、というのと、付属のデモCDにどんなコンテンツが入っているのか見てみたい、ということだけだったので、流石に無駄遣いかなと思って二の足を踏んでいたのだ。まぁ、ずっと店先に置かれているのだからすぐには売れないだろうし、お金が溜まったら買おうかな、くらいの気持ちでいたのだが。。。
その店には月に一回程度の頻度で足を運んでいたのだが、ある日店に行くと定位置が妙にスッキリしている。
あ、無くなってる。。。
自分で後回しにしていたくせに、売れてしまったと知ってかなりがっかりしたことを覚えている。無理してでも買っておけばよかったかな、と思ったところで後の祭りであった。
まぁ、そのうち中古価格もこなれてくるだろう、と思って幾星霜、、、じゃなかった、2年ほど過ぎた。
ある日友達から、知り合いが7000円で売りに出したいって言っているけどいる?という打診があった。
いります。もちろんいります!ということで、すかさず名乗りを上げ、果たして念願のmc2が我が家にやって来た。
これがあのmc2か、と筐体をしげしげと眺めた。7000円の内訳にはゲームソフトも付属しており、とりあえずそれを入れて起動してみた。
8801シリーズは画面解像度が640*200ドット、というサイズだった(9801シリーズは640*400ドット)。
これはテレビの解像度に合わせられており、上述のとおりRCAピンジャック経由でテレビをモニタとして使えるモデルもあった。
そんな解像度なので、画面はやっぱり9801からすると粗い。まぁ、昔はこれでも立派だったのだろうな、と思いを馳せることはできたが、何かゲームをプレイしてみたい、という気分にはならなかった。
一応、8801シリーズ用のソーサリアンを入手してきて起動させてみたが、まぁ、CDサントラに入っている音と同じ音である。新鮮味を感じることもできなかった。買う前に気づけと言う話だが。
この機種は8801シリーズの立ち位置が曖昧になって迷走した末のモデルゆえか、特徴的な部分も多い。詳細はWikipediaなどを参照いただきたいが、他の8801シリーズとの目立つ違いとして2カ所挙げられる。
まず1つ目が設置方法が縦置きになったことである。PC-8801シリーズのライバルはシャープのX68000シリーズとされているがこの機種は縦置きモデルが多かった。同時にCD-ROM搭載パソコンの先駆者であるFM-TOWNSもまた縦置きである。
それを意識したのかどうかは分からないが、mc2は8801シリーズで唯一の縦置きモデルになっていた。そのためかつてのようにPC本体の上にモニターを置いて、という格調高い設置方法は出来ない。ただ頭にCD-ROMドライブ搭載している都合上、この寸法が最小幅となるため、シルエットどことなくずんぐりしていて、X68000と比較してスマートな印象ではなかった。
そしてもう1つが、上述のとおりCD-ROMドライブの搭載である。
上の写真はCD-ROMドライブ部分を写したものであるが、見てのとおりNECの家庭用ゲーム機であるPCエンジン CDRom^2用のドライブと同じものが搭載されている。そのため脱着が可能になっている。手前についているプラスチックカバーを手前に引き出すと、ドライブが脱着できるようになっていた。
ちなみにPC Engine CDRom^2とものが同じなのでドライブを使い回して共用することも可能で、mc1というCD-ROMドライブなしのモデルもラインアップされていた。まぁ、共用したいという需要がどのくらいあったのかは知らないが。
8801シリーズで最初で最後のCD-ROMドライブ搭載モデルであるのだが、そのCD-ROMドライブは残念ながらこれと言った活用方法がない。なにしろアプリケーションが殆ど発売されていないのだ。
いかんせんこの機種にしか搭載されていないうえにシリーズそのものが斜陽だったので、CD-ROMアプリ開発が非常に低調だった。
なので7000円の内訳にも付属している筈のデモCDも含めCD-ROMタイトルが1つもなかった。
デモCDは恐らく8801の性能をフルに使った渾身のデモンストレーション作品が入っていたものと思われ、それがどんなものか一度見てみたいと思っていたのだが、叶わずじまいだった。
何とか活用する方法はないか・・・1つだけある。音楽CDプレーヤーだ。音楽CDをセットして電源を入れると画面にCDプレーヤ画面が表示されて、そこで曲を選択したり再生・停止などを行ったりすることが出来るようになっていた。
わざわざ大きな電力を消費するパソコンの電源を入れて音楽を再生するのである。これをお大尽と言わずなんという。
どうにも残念なことに、音楽CDを再生中は内蔵のプレーヤーがロードされていることから、別のアプリを起動することはできなかった。排他制御なのか。やっぱり使えない。。。
ファルコムのゲームの一部タイトルは市販のサントラCDをドライブにセットすると、ゲームのBGMをCDからロードするような機能を実装していたらしい。それを持っていればわずかながらこのマシンを購入した意義が見いだせるのだが、わざわざそのゲームを買いに行くほどでもないんだよなー。
ま、そんなわけで7000円で我が家に嫁いできたわけだが、憧れのマシンが手元にあるという満足感が得られたのみで使い道はほとんどなかった。手放すのが惜しかったので、長らくインテリアとして部屋の片隅に鎮座していたが、カミさんから邪魔だと死刑宣告されてしまったので、手放すこととなった。