[DigiItem-11] TOSHIBA Libretto 20

(Spec : [CPU]AMD Am5x86 75MHz / [HDD]270MB / [MEM]8MB)

1997年頃入手(多分):


自分は昔から小さくて機能的なものに魅力を感じる性分だった。パソコンを触るようになってからはその対象がノートPCにも及んだ。
とは言ってもA4サイズのノートPCにはあまり興味を惹かれなかった。小さければ小さいほど良いのだ。

当時一番小さいWindows95ノートPCと言えばこの東芝のリブレット20だった。これまでどのメーカーでも実現できなかったA6サイズの筐体にTFTカラー液晶、HDD、ポインティングデバイスが内蔵され、Windows95が動く。当然めっちゃ欲しくなる訳だが、まぁ安月給のペーペーが気軽に買えるような価格ではなかった。

色々調べると欲しくて仕方がなくなるのであまり見ないようにしていたのだが、ある日職場にこれを持ち込んでいる人がいた。購入して得意げになっている。その自慢話を聞きながらちょっと触らせてもらったらもう欲しくて仕方がなくなった。買えないんだけど。


ところが、リブレットシリーズは半年後には30、更に数か月後に50と言った具合に矢継ぎ早に新機種をリリースしていて、そのせいで初代の20はどんどん値崩れし、程なく中古市場でも安価なものが出回るようになってきた。

たまたまお手頃価格で販売されているのを見つけ、衝動買いしてしまったのだった。

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当時自分の持ち物を撮影する習慣がなかったので撮影は気分次第である。なので写真が残っていないものも結構多いのだが、このPCは撮影していた。とはいっても写ルンですの余ったフィルムを現像に出す前に使い切ろうとして雑に撮影したものなので、ピンボケのこの一枚しか写真が残っていない。


さて、リブレット20である。スペックはCPUがAMDの5×86 75MHz、HDDが270MB、メモリが8MBである。CPUはともかくHDDもメモリもWindows95を動かすためには最低限のスペックでしかない。実際起動すると動きはかなりもっさりしたものだったし、ディスクの空きが少なかったのであれこれアプリを入れて動かすような物でもなかった。

そもそもインターフェース類が最小限しかなく、PCMCIAのスロットこそ1ポート付いているものの、シリアルポートもなければディスプレイポートもないうえにモデムも内蔵されていない(シリアル/ディスプレイポートはオプションのポートリプリケーターを購入すると利用可能)。オプションでPCMCIAのFDドライブが有ったが、自分が購入した物には一切付属されていなかった。

つまりこの本体を買っただけでは何一つ追加のアプリが入れられない。ソリティアで遊ぶか、メモ帳で字を書くぐらいしかできることがない(それをどこかで共有する手段もない)のだ。

眺めているだけではつまらないので、せめてネットワークには繋げるようにしようと、PCMCIAのLANカードを購入し、デスクトップPCの共有フォルダ経由でアプリなどを取り込んでセットアップした。と言ってもOSが起動すると少ないメモリのせいでスワップしまくりだったので、もっぱら軽量なフリーソフトのゲームくらいしか入れなかった。


画面はTFTの発色の良い液晶が搭載されていて見やすいものだっが、画面はVGAサイズ(640*480)でしかなく、そのうえサイズも6.1インチと極小なので、画面に置かれたアイコンがデスクトップの幅を取りまくっていた。一応OSの設定でアイコンサイズを小さくすることも出来るのだが、小さくすると今度はアイコンが判別できなくなる。

感心したのはこの小さな筐体にトラックポイントが搭載されていたことだ。しかも場所は画面の横という前例のないもので、これは画面を挟み込むように持って親指でトラックポインタを動かし、人差し指と中指で裏面にある左右ボタンを押すような仕組みになっていた。
この形状だと文字を入力しながらトラックポインタを動かすような使い方は難しいが、ネットサーフィンなどのマウスオペレーションをするだけであれば殊の外使い勝手の良いものだった。ただし、ポインタは画面の右側に設置されているので左利きの人のことは一切考慮されていない。


キーボードは極小だった。本体のサイズを考えたら仕方のない所だが。一応全てのキーが省略されずに搭載されていたのでこの文字が打てない、みたいなことはなかったが、まぁブラインドタッチなどは望むべくもない。このPCで外出先でドキュメント作成などは出来ないこともなかったが、流石に非効率極まりないものだった。

一応ノートPCなのでバッテリは搭載されており持ち運んで使うことも勿論可能だが、肝心のバッテリはせいぜい1時間くらいしか持たなかった。だから新幹線で移動中にずっと作業をし続けるみたいな使い方は出来なかった(当時は新幹線にコンセントはなかった)。どちらかと言えばオフィスなど電源が確保できるところで、ちょっとしたWebの閲覧やメモなんかをするような用途が丁度いい感じだった。だったらこんなに小さなもの作ってもしょうがないじゃんという気がしなくもないが、作ったことが大事なのだ。

カバンの中に入れておくと若干ずっしりとした重みも感じるが、本体がコンパクトなのでカバンのスペースを邪魔しない。その点が一番のメリットだったかもしれない。


まぁ様々なメリデメのあるPCではあるのだが、とにかくディスクがカツカツなのがどうしようもない。少し懐に余裕が出来たらHDDの入れ替えでもやろうかなと思っていたのだが、インターフェースがないのでHDD入れ替え後のOSの入れ直しのために専用のFDDを購入しなければならない。それ以前にこのPCのHDDはサイズこそ2.5インチであるものの、厚みが通常の物よりもの薄い専用品になっていて、市販の安いHDDと交換することが出来なかった。一応東芝からパーツを卸して貰っている業者が専用品をバルクで販売していることもあったが、それとて一般的な市販品と比べたら随分と高価だった。

OSの入れ直しが出来ないってことはOSが壊れた時はどうするのさ、という話になるのだが、FDDを持っていない人がOSを再インストールしなければならなくなったら東芝にPCを送ってメーカー側で修理扱いでOSを入れ直して貰わなければならなかった。今では考えられない話だ。


まぁ、そんな訳で所有欲はがっつりと満たしてくれるPCだったが、自分の手に余るものでもあった。結局大した活用も出来ないままそのうち使われなくなり、暫くした頃に同僚に譲ってしまった。

Posted by gen_charly