0310 – 8mmビデオデッキのトラッキング調整
父から過去の旅行などで撮影した8mmビデオテープを預かって欲しい、と頼まれた。
殆ど父が後妻と出かけた時の物なので、個人的には見ても全然面白くないのだが、折角なのでざっと一式目を通してみることにした。
そしたら、タイトルなしのテープに自分が高校の頃に撮影したものが紛れてた。そういえば文化祭の企画でそんなことやったっけ。
懐かしい思い出なのでこれはデジタル化させておこう、と思ったのだが、映像、音声共にノイズがひどくて見れたものじゃない。
そのノイズの原因だが、テープの劣化や折れなどによって起こるのが一般的な原因だが、それ以外に再生時のトラッキング調整がうまくできていないだけ、というケースが案外多いらしい。
どういうことかというと、そもそも8mmビデオデッキはマニュアルトラッキングが出来ない。規格としてオートトラッキングが定められているせいらしい。
つまり、テープのトラッキング調整は再生機器に任せるしかないのだが、その機器が調整できるオートトラッキングの調整幅を超えているテープを再生しようとするとトラッキング不良となってしまう、ということである。
だったらそのオートトラッキングの範囲内でトラッキングできるように仕様が定められているんじゃないの?と思うのだが、さにあらず。
かつて8mmビデオカメラを製造していた各社ごとに微妙にそのセッティングが異なっているらしいのだ。
すなわち、撮影をした機器で再生すれば、正常に再生できる、ということになるわけだが、父は時代の流行廃りに合わせて、何度かカメラを買い直しているので、その時の機器が手元に残っている訳がない。
じゃあダメじゃん、と、それで終わってしまったら、エントリを立てた意味がない。ネットで調べて見つけた方法だが、これから紹介する方法は、もしかしたらうまく再生できる最後の一手となるかもしれない。
その方法とは、ざっくりいうと、力業マニュアルトラッキング、とも言うべき方法だ。
テープのガイドの位置を動かすと微妙にトラッキングが狂うらしい。それを敢えて行うことで、オートトラッキングの範囲を超えた調整が出来るらしいのだ。
ということで、藁にもすがる思いでチャレンジしてみた。
手元にある8mmテープ再生機はこれである。サムソンのVP-880L。父が昔購入したものを借りてきた。
まずはケースを開けてみる。筐体がコンパクトなので、取り回しが楽でよろしいw
しかし8mmのビデオデッキなんてよく今まで壊れずに残っていたものだ。
それはさておき、上の写真の中央付近、斜めに取り付けられている銀色の円筒形の部品が再生ヘッドである。
ヘッド部分の拡大がこちら。
カセットテープを挿入すると、左斜め上にある斜めになったガイドピンと、その左隣のマイナスねじのようなピンがテープをひっかけて下に見える溝を移動して、テープをヘッドに押し付ける。
それと同時に左にある中心が金色のパーツと、そのさらに左上にある黒いパーツの間にテープを挟んで音声信号を読み取る仕組みになっている。
カセットテープを差し込んで再生させた状態がこれである。
被検体となるテープだが、万一テープが損傷したら取り返しがつかないので、まずは別の同じ事象が出ているテープで試してみよう。
最初はこのようにきれいに再生されるが、
一旦何かのきっかけでノイズが乗ると、トラッキングがおかしくなって、
そのあとこんな具合になる。ずっと再生させているとそのうち元に戻るが、その間音声・映像が乱れまくるので、何が映っているかさっぱり分からない。
ここで、力業マニュアルトラッキングの出番である。
分かるだろうか。
要はガイドピンに力をかけて、テープがヘッドに当たる角度を微調整している訳である。指で少し力を加えると、それまでノイズで見れなかった画面が見られるようになった。ノイズで見られなかった画面がクリアになった瞬間に思わず声を上げてしまったw
その力の掛具合は、各自探ってください、としか言いようがないのだが、力をかけている割にピンはほとんど動かない。そのくらいの力のかけ方である。
また、どっち方向に力を入れればよいかもケースバイケースなので、うまく微調整して丁度良い場所を探ってみて欲しい。
なお、あまり強い力をかけるとテープが絡まるので注意。自分も一本のテープをそれでだめにした。
また、音声ヘッド側の当たりがおかしくなって音声の方にノイズが出たり、音声が聞こえなくなったりすることもあるので、そこも要注意である。
そもそも、デッキ自体が今となっては貴重な再生機器なので、あまり強引なことをやって壊さないように注意してほしい。
その辺の匙加減が不安な人は修復業者を頼ってみた方が間違いないかもしれない。
ちなみに、テープのシワや傷に由来するノイズは、この方法では消すことが出来なかった。
ということで、高校時代の懐かしい思い出がつまったテープは、ノイズが乗ってしまう範囲のうち7割ほどが正常に見られるようになった。
残りの3割は、同じポジションを維持して微調整を続けていると再びノイズが乗ってしまうことがあり、恐らくその位置でトラッキングの状態が変わってしまっているらしい。その時に最適なポジションを再度探ったりしたのだが、数値で表せるような調整ではないので、瞬間的にトラッキングが合わせられず、それ以上の調整は断念せざるを得なかった。