0246 – カンカラ三線の修理とお手入れ
もうずいぶん昔の話だが、沖縄に旅行に行った際に買ったカンカラ三線がある。目が欲しかっただけなので、買ったはいいものの大して弾きこなすこともできず、半ばオブジェと化していた。
でもせっかく入手したのだからたまには弾かないとな、と一念発起し、数年前に一度手に取ったのだが、チューニングを合わせようとカラクイを回していたらなんと折れてしまった。
カラクイはいわゆるペグに相当するもので、これが折れてしまうとチューニングができなくなる。
三線なんて半分手作りのような楽器だから、楽器屋に修理に出さないと直せない気がするが、所詮おもちゃなので、これに大金はたいて直そうという気にもならず、そのまま完全なるオブジェとして余生を過ごすこととなった。
そうして数年。
先日、チビが習っているピアノ教室の関係者の三線奏者が三線が持ち込んで演奏したことがあったらしい。
それでチビが興味を持ったらしく、この三線を指して、これ弾けるようにならないの?と言ってきた。
チビが弾くというなら直してあげたいが、ずっと使うことは多分ないので、修理に出すほどでもない。修理に出すくらいなら新しく買った方が安い気がする。
ということで、DIYでリペアできるならやってみようかな、くらいの気持ちで情報収集してみることにした。
改めて状態をチェック。よく見たらチル(弦)を乗せるウマ(ギターでいう所のサドル)がいつの間にか紛失していた。
ウマは取り外せるようになっており、なくさないように外していたのだが、それがどこかに行ってしまった。なくさないようにしまった筈なのに。。。
ウマくらいならamazonあたりで売っていないかな、と思って調べてみたらやっぱりあった。それならカラクイもあるんじゃないか、と思って調べたらこれも売られている。
それなら手順が分かればDIYできそうだ。ということでネットで修理方法を検索してみたら、直し方が書かれたサイトも見つかった。
そのサイトを熟読したら、どうやら自分でもどうにかできそうな感じだったので、チャレンジしてみることにした。
カラクイはamazonで多種多様なものが売られていたが、ちゃんとした三線に付ける前提の装飾の施されたものが多かった。それをカンカラ三線に取り付けてもカラクイだけが浮いてしまうような気がしたので、ただの丸木を加工したようなシンプルなものを選んでみた。
ちなみに、そのカラクイは穴あけ済みと言うことだ。三線はカラクイに空けられた穴にチルを通して巻き取る仕組みになので、カラクイの先端に穴が開いている必要があるのだが、売られているものは穴が開けられていないものが殆どだった。
というのも、三線は手作り楽器で、ヘッド部分の作りに個体差があるので、現物に合わせて微調整しながら穴を開ける必要があるかららしい。
だが、これは所詮おもちゃなのでそこはこだわらない。というか、5mm程度しかないカラクイの先端部に、1mm以下の直径の穴をまっすぐあけるなんて、とてもDIYで出来る気がしない。
この三線は購入して15年以上経つが、その間一切ノーメンテだった。弾いていないのだから手入れもしない、という訳で。
これからチビが演奏に使うのであれば、この機会に消耗品類も一式交換した方が良いだろう、ということでチルと糸掛けも一緒に交換してしまうことにした。
と言うことで、発注して数日後に部品が届いた。上のコの字型のパーツがウマ、その下の黒い結ばれた糸のようなものが糸掛け。
そしてチルとカラクイ。
カラクイはなんか作りが雑だった。それぞれの長さも違うし、テーパーになっている部分の処理もまちまち。
1000円くらいで売られてたものなので、まぁ、こんなものなのかな。。。
と言うことで交換開始。まずは古いチルとカラクイを外す。
カラクイが残っている弦はカラクイを回して糸を外したが、カラクイが折れている弦は回せないので、弦を切ってほどいて外した。
チルはブリッジに当たる部分で糸掛けに結ばれている。糸掛けはスルーネック状のボディーの尻の部分(ミジアティ)に引っかけているだけなので、カラクイ側のチルを外したらそのまま糸掛けごと外すことが出来た。
折れていないカラクイはヘッドから引っこ抜くだけで外すことが出来たが、折れているカラクイは引っこ抜けるだけの長さがなかったので、反対側の穴からキリで押し出して外した。
チルを外してネックが露になる珍しい機会なので、ネック部分にオレンジオイルを塗って指板保護をしておくことに。
オイルが乾くまでの時間の間に、新しいチルを糸掛けに結ぶ。結び方がよく分からなかったので、ネットに出ていた方法を参考にして結び付けた。
そして新しいカラクイの取り付け。元のカラクイ同様に穴にさし込んでみたら、反対側の受け穴まで届かなかった。
穴に合わせた加工が為されている訳ではないので、やむなしか。。。
ヤスリを持ち出して、カラクイをころころ転がしながら、先端部分の径を少しずつ細く削っていく。
カラクイは穴との摩擦の力によってチルが緩まないようになっているので、削りすぎたらアウト。
少しずつ削って、現物合わせしながら程よい太さになるまで削った。
カラクイがちゃんと奥まで差し込めたのを確認してから、チルを結んだ糸掛けをミジアティにひっかけて、カラクイへ通す。
カラクイを回して弦にテンションをかけるが、途中何度かチョーキングして締め付けてやらないとすぐに緩んでしまうのは他の弦楽器と同様。
それからウマを立ててチルを乗せた状態でチューニング。
アナログ楽器なうえ、張りたての弦なので、チューニングが一向に落ち着かない。
暫くあれこれいじって、どうにかいい感じの所でチューニングも整った。
ということで、数年ぶりに復活である。
チビに渡した当初は手慰みに弾くくらいだったが、次回の発表会で沖縄の曲をやることになり、この三線でステージに上がることになったので、それ以降本腰入れて練習していた。
まだ運指が適当だし、ピッチの取り方もイマイチだったが、それでも一生懸命練習して、ステージで堂々と演奏していた。
この楽器を買ってよかった、と思った瞬間だった。
折角なのでこの機に自分も何か一曲くらい覚えてみようかな。