[読み物-03] 住まいで振り返る半生記【39】
部屋番号21 - 東京都調布市某所(その1)
勢いで契約してしまったその物件は、つつじヶ丘の1つ先、柴崎という駅から徒歩5分くらいのところにあった。烏山と比べると更に10分ほど都心から離れてしまうが、この頃は派遣業から足を洗っており、職場が転々とする心配がなかったので場所的に問題はなかった。
なにより新築でメゾネットタイプの1LDKという自分の好みにド直球で刺さる物件である。幼いころのほとんどの期間を集合住宅で暮らしていたので、階段のある家へのあこがれが強いのである。16.の時にメゾネットタイプの部屋を取り逃がした恨みが未だに自分の中に残っているからでもあるw
ただし、家賃は10万円となった。派遣業をしていた当時だったらかなり厳しい家賃だが、正社員になったこと、多忙で残業が多かったこと、業績の良い会社だったのでボーナスが弾んだこと、などの理由で収入も増えていたので、大丈夫だろうと思った。
間取りはこんな感じ。
図面を起こす段になって思い出したが、この部屋はセキスイハイムの物件であった。セキスイハイムと言えば、13.でも触れたとおりユニット工法で有名なメーカーである。図面を書いている時に各部屋の寸法がユニット工法の物っぽいことに気づいてピンときた。
13.のM1の時はコンテナハウスにしか見えなかったが、ここまで来ると同じ工法に由来している建物とはぱっと見には分からない。その進歩ぶりに驚くと同時に、基本的な設計思想は全く変わっていないんだな、と思った。
風呂は広くなって追い炊き機能も付いた。前の家では湯船に浸かることがあまり出来なかったが、これなら冷める心配をせずにゆっくりと浸かることが出来る。しかも窓が付いている。柔らかな外光に照らされながら朝風呂をしゃれこむのも面白そうだ。。。などと新生活へのイメージが膨らむ。
トイレにはウォシュレットがおごられている。キッチンもガスコンロが2口あるシステムキッチンになり、なんならインターホンはカメラ付きになった。新築物件って本当にいいものですねw
1階は風呂トイレと、洋室が1つ。2階はワンルーム形式のLDKという構成になっている。
当初はその間取りに合わせて家具を配置するつもりだったのだが、いざ家具を置いてみたら1階の洋室は思いのほか使い勝手が悪かった。微妙に寸足らずで家具が配置しづらい。やっぱりセキスイだ。。。
それと、最新の設計がふんだんに採用された新築の家なのに、冬場は1階が特に寒かった。この部屋で過ごそうと思ったら、暖房費が跳ね上がってしまいそうだったので、結局ここは物置になってしまった。
それで、専らの生活の場が2階のリビングだけになってしまったので、なんかワンルームに住んでいるような感じだった。
2階のLDKは、縦長のルーバー窓が並ぶ洒落た作り。決して広くはなかったが、2人で生活するには十分だ。
部屋には最新鋭の24時間換気システムが導入されていたのだが、その割に冬場の結露が酷くて、敷きっぱなしにしていた布団に2度ほどカビをはやしてしまった。それ以降、我が家では起床したら布団を上げる決まりになった。
1階の部屋は掃き出し窓があってタタキもあるのに、何故か物干し台がなかった。一方、2階は腰高窓になっていてベランダがないのにもかかわらず、窓の外に物干し竿を架けるフックが付いていた。庇がないので雨が降ったらアウトである。
洗濯機は1階にあるので、洗い物を持って上がるのが面倒なことこの上なかった。しかも腰高窓なので窓から身を乗り出して干さねばならず、殊の外やりづらい。
折角1階にもいい感じの空間があるのだから、そこに干した方が合理的な気がするが、下着ドロボーなどに配慮したのだろうか。
自分で物干し竿を買って設置する手がない訳ではなかったが、もっぱら部屋干しで済ませてしまったので、結局買わずじまいだった。
1階の窓の外には小ぢんまりとした土の庭があった。彼女の発案でそこにナスやプチトマトなどを植えてみた。土があまりよくなかったのか、収穫はささやかなものだったが、野菜の成長を眺めながらの日々はこれまでにない充実感があった。
駐車場は自宅から1分くらいのところに借りることが出来た。
この部屋も駐車場も通りに面していたせいか、時々いたずらされることがあったのが悩みだった。車のバンパーにイタズラ傷をつけられたり、家の入口の階段に落書きをされたりと続いたので、誰かに狙われているんじゃないかと疑心暗鬼になったこともあった。
ここの家に住むようになってから、2人でよく散歩に出かけるようになった。これと言った店などがあるわけではないが、30分くらい歩けば多摩川の河川敷に出ることが出来たし、行く先々でちょっとしたお店を見つけたりして、ブラブラとあてどなく散歩するのが楽しい街だった。