[DigiItem-29] J-PHONE SHARP J-SH04
J-PHONE SHARP J-SH04
2000年購入:

2000年にJ-PHONEから発売された機種である。この機種について語るなら写メールの話は避けて通れない。この端末は携帯電話にデジタルカメラを搭載した(おそらく)日本初のモデルだった。
当初は携帯電話にカメラなんかつけてどうするの?みたいな評価をする人も多かったが、こんにちカメラの付いていない携帯電話が存在しないことを考えればいかに先見の明であったかが分かろうというもの。フィールド系のエンジニアが外出先でチェックした機器の状態などを手軽に報告したいという要望が元になって開発されたものだという話を聞いたことがある。
当時は出先で撮影したものを誰かに共有しようとしたら、デジカメで撮影してそれをパソコンに取り込んでからメールなどに添付して送るという手段があったが、複数のステップを踏まなければならないので煩わしかった。携帯に付けられたカメラで撮影してそのままメールで送れた方が圧倒的に手軽である。
自分はそれまでJ-P01という機種を使っていたが、この機種に一目ぼれして即座に買いに走った。上の写真のとおり画面はカラー液晶となり、画面が明るく華やかになった。撮影した写真を画面に表示させる必要があるのだからカラー化は必須だったのだろう。

本体背面はこのような感じ。黒丸の所がカメラ、その脇に自撮り用のミラーが付いている。カメラのスペックは11万画素で、96*128または120*160ピクセルの写真を撮影することができた。
このスペックは当時のデジカメとしてもかなりのロースペックで、正直いって大した写真を撮ることはできなかった。静止している物を撮影する分には、それなりに撮影対象を判別することができたが、動いているものはまともに映らなかったので、あくまでメモとしてくらいしか使い道はなかった。

上の写真はJ-SH04で撮影した写真の一部。まぁご覧のとおりである。それでもデジカメは持ち歩かなくても、携帯電話は大体持ち歩いているわけで、日常ふと気になったものやちょっと物珍しいものを見つけた、なんて時にさっと取り出して撮影することができるというのは新鮮な体験だった。
画素数を欲張っていないせいか電池へのインパクトも少なく、かなり頻繁に撮影しても電池はそこそこ持った。そうしたところも手軽だったので、画質の貧弱さを踏まえた上でも使い勝手は悪くなかった。
カメラ付携帯電話が世に出回るようになったことで新たな問題が浮上するようになった。盗撮問題である。携帯にカメラが付いたことで、一見それと分からずに盗撮ができるようになった。といっても、盗撮を防止するために撮影の際にシャッター音を鳴らすことが必須だったため、普通の人は魔が差したとしてもなかなかできるものではなかったが、中にはシャッターが鳴らないように不正改造してまで施して事におよぶ本格派もいたらしい。
そうまでして盗撮行為に手を染める執念はある意味で凄いなとも思うが、それで撮影できるのは上で掲載したレベルの画像である。はっきりいってリスクにリターンが見合っていないと思うのだがどうなんだろう。
この機種の発売と同時にJ-PHONEは写メールというワードをCMで宣伝するようになった。カメラで撮影したらその画像を周りの人に送って共有するといった活用方法の提案である。最近はあまり耳にしなくなったが、一時期は一般的な慣用句になるほどバズったワードだった。自分も未だに時々「写メしておいて」とうっかり口にしてしまったりする。このカメラ付携帯電話の出現はそのくらい画期的な出来事だったのだ。
実は当時、携帯電話のメールは送受信に料金が発生していた。まぁ、今もパケットとして消費されているわけだからお金がかかっていることには違いがないのだが、メールを送受信すると基本料とは別に1件10円とかそういうレベルでお金がかかっていたのだ。
送信は自分の意思でやるものだからまだいいとして、問題は受信の際にもお金がかかったことだ。すなわち不要なものを送りつけられてもお金がかかるのだ。当時、スパムメールを送る業者というのが出始めた時期で、そうした業者が無差別にメールを送りつけてきた。なので望まざるメールが届くと、その分をユーザーが負担しなければならないという理不尽な状態になっていた。
不思議なことにこのスパムメール送りつけ問題はドコモの携帯で顕著だった。母数が大きいからターゲットにされやすかったのかもしれないが、スパム対策としてメールアドレスを変更しても、数か月も経たずにまたスパムが送り付けられてくるイタチごっこで、ドコモユーザーは押しなべて呻吟していた。
J-PHONEはこの機種の発売と時を同じくして、メール送受信無料という料金プランを開始した。もちろん写メールを活用してもらうためだ。で、自分はこのタイミングでJ-PHONEのメールアドレスを取得し、それから数年に渡って同じメールアドレスを使い続けていたのだが、スパムメールが送られてくることはほとんどなかった。
その理由を考えてみると、①J-PHONEというキャリアがマイナーなので宣伝効果が低く、スパムのターゲットになりづらかった。②自分の設定したメールアドレスがスパム業者に類推されにくいものだった。③メール受信が無料化されたのでスパムを送りつけるメリットがなかった。の3つくらいが考えられるだろうか。
①はこんにちのスパムメールを見ればわかるとおり、基本的には自動送信されるものなので、宣伝効果など考慮せず無差別に送りつけるのが普通だ。そう考えるとドコモよりユーザーが少ないからといって、全く送られてこないということは考えにくい。
そして②も同様だ。スクリプトが自動でメールアドレスを作り出して送信しているのだから、いつかは餌食になるはずだ。
となると③か。上ではあえて主語を省略して書いたので分かりづらいと思うが、スパム業者にとって、メール受信にお金がかかろうがかかるまいが関係がない。だが、仮にスパム業者とキャリアがつながっていたらどうだろうか。
当時、メールアドレスを頻繁に変更しているのにすぐにスパム業者に見つかってしまうことから、キャリア自身がメールアドレスのリストを流出させているのではないかという憶測が流れたことがある。キャリアとしては誰かがメールを送ってくれればそれだけで両手で儲かるのだ。だったらこっそり情報を業者に横流しすればwin-winの関係となる。もちろんただの憶測にすぎないが。ただ、J-PHONEはメール送受信が無料なので、メールアドレスのリストを流出させる動機がない。それでスパムが送られてこなかったのだとしたら、なんかどこかで話が繋がっちゃうような気がしなくもない。
話が逸れたので元に戻す。そのほかの機能として着信音がビープから16和音に対応する音源へと進化した。16和音といえば、かなりしっかりとしたアンサンブルでも表現できるほどの性能だ。標準の着信音もそれを活かした迫力のあるものが収録されていた。
一方、着メロについては16和音もの曲データを入力するのは恐ろしく骨の折れる作業となり、手打ちはだんだん下火になっていった。その頃にはJ-Skyやi-Modeなど携帯電話用のサイトも充実するようになり、着メロそのものがダウンロードできるようになってきたので自分ももっぱらそこから気に入った楽曲をダウンロードして設定していた。
また、液晶がカラーになったことで、壁紙の概念が携帯にも持ち込まれた。これは撮影した写真かネットからダウンロードした壁紙を設定することで、オリジナル背景が実現できるものだった。
この機種は気に入って2年ほど使った。以前のエントリでも折り畳みタイプの携帯が好きだと書いたが、J-P01もこのSH-04もストレートタイプである。次くらいには折り畳みタイプのカメラ付きが出ないかなと思っていたら、翌年にJ-SH05という折り畳みタイプのモデルが発売された。その発表を聞いた時、あと1年待つべきだったなと少し後悔したが、奮発して買ったものなのでそう易々と機種変更ができない。我慢してというほどでもなかったが、そのままJ-SH04を使い続けていた。
それから1年ほど経って後継モデルで発表されたのがJ-SH08という機種だった。この機種は折り畳みタイプで画素数も向上した使いやすそうなモデルだったので満を持して機種変更(というか新規買い換え)することにした。
で、その機種変更をしに行った日。ショップの店員から中のデータはどうしますか?と聞かれた。電話帳などのデータは引き継ぐが、撮影した写真は引き継がれないのだそうだ。てっきり全部移行してもらえるものとばかり思っていたのでバックアップも何もしていない。この機種には外部メモリが搭載されていない。ではどうやってデータを救出するかというと、メールに添付して送るしかなかった。
写真の枚数をチェックしたら30枚ほどだったので店員にその旨話したら、今やってもいいですよとのことだったので、急遽メールを使ったバックアップを行うことになった。メールに添付できる画像の数は1通につき1個。なので30通からのメールを立て続けに送る羽目になった。
その間、店員は黙って待っていてくれたが内心嫌だっただろうな・・・。