185系普通列車で箱根へ (1989/05/04)
1989/05/04
この年、自分は中学生になった。その学校でK君という同級生と仲が良くなった。彼もまた鉄道が好きで、瞬く間に意気投合してつるむようになった。
で、今回は箱根へ行ってきたのだが、そのきっかけは特急踊り子号用の185系で運転されるという普通列車に乗ってみたいと思ったことだった。この列車は各駅停車であるものの、普段特別料金を払わないと乗れない電車に運賃だけで乗れるというのだから何ともお得感がある。しかも1日1本しか走らないので、わざわざ出向くだけのプレミア感もある。
その列車は東京発国府津行きなのだが、国府津駅まで乗ったところでその辺りには撮影するようなものがあまりない。なのでもう少し足を延ばして登山電車の写真を撮ろうと考えた次第だ。
この旅行では祖母のカメラとポケットカメラの2台を持参し万全の態勢を整えたつもりだったのだが、祖母のカメラは相変わらずトラブル続きであまり良い写真が撮れなかった。最悪なことに撮影の最中でフィルムケースのフタが開いてしまい、フィルムが感光してしまったのだ。。。
K君と東京駅に到着し東海道線ホームに向かうと、すでにその列車は停まっていた。前述のとおり185系は普段は特急踊り子用として使われている車両なのだが、この列車は普通列車なので、前面のヘッドマーク用の幕の部分にはそっけなく「普通」と大書きされていた。
普通列車なのでもちろん自由席である。めいめい席を確保して国府津駅へと向かう。リクライニングする座席に深々と腰を下ろして沿線の風景を眺めた。なんと贅沢な移動だろうか。
神奈川方面に行き慣れていない自分にとって、沿線の風景は目新しいものばかりで、だいぶ無駄にシャッターを切ってしまった。そのせいで後半戦はフィルムの枯渇に悩まされた(新たにフィルムを購入するという選択肢はなかったようである)。
終点国府津駅で下車し列車を見送る。
そこから次の列車で小田原駅まで乗車し、まずは伊豆箱根鉄道大雄山線の車両を撮影しに行った。
この時、大雄山線乗車したかどうか記憶がないのだが、途中駅で撮影した写真があったので、撮影のために数駅ほど乗ったようだ。
その時の写真は上述のトラブルにより感光してしまったので非公開。
当時は相模鉄道のおさがりの旧型電車と、自社発注の5000系の2種類が運行されていた。それにしてもひどい構図だな。。。
再び小田原駅に戻って今度は登山電車に乗って箱根湯本駅へ。ゴールデンウィーク真っ只中の箱根湯本駅は、多くの観光客でごった返していた。ここから先、強羅駅方面へ向かう列車の乗り場は改札の外まで続く長い行列ができていた。その列の最後尾に並ぶために自分らも一旦改札外へ。
線路沿いを少し歩くと80パーミルの勾配票を見つけた。箱根登山鉄道は当時日本で最も急勾配を登る路線だった。今では大井川鉄道井川線に最急勾配の座は譲り渡したが、井川線はラックレールを使って登っているので、粘着式(車輪の力だけで登る)鉄道としては、未だに最急勾配路線の座に君臨している。
それはさておき、写真右側にちらりと写っている群衆の姿が分かるだろうか。これが全て強羅駅方面への列車に並んでいる人たちだ。整理誘導している駅職員がメガホンでしきりにアナウンスしている。それによると、現在乗車までの待ち時間は1時間半ほどあるそうだ。
箱根登山鉄道は箱根湯本駅から先の区間で登山電車としての本気を出す路線だ。自分はまだこの先の区間を乗車したことがないので、登山電車の登山電車たる区間をまだ味わっていない。なので今日こそ強羅まで乗り通してやろうという意気込みでやってきたわけだが、そのためにはこの長い長い行列に並ばなければならない。
だが、自分は行列に並ぶということが嫌だったのでこの行列の一員となることを躊躇した。そこでこの後どうするかK君に尋ねてみたところ、K君は並ぶことにためらいはないという。じゃあ覚悟を決めて並ぶか。
そもそも登山電車は、2両の小さい電車が20分から30分おきにしかやってこないので、1列車で乗車できる人数に限りがある。乗り切れない人は次の電車を待つしかないので、その間列は全く進まない。1人でここに並んでいたら、もどかしさのあまり発狂してしまいそうな気がするが、K君と無駄話にふけっていたら、いつの間にか順番が回ってきた。
幸い後ろの車両の最後部の一席を確保することができた。だが、またモハ1であるw
この路線は強羅駅までの区間に3カ所のスイッチバックがあることで知られている。地形などの制約により大回りしながらの登坂ができないような場合に、折り返しながら登ることで標高を稼ぐ手法が取られることがある。その折り返し場所をスイッチバックという。
写真のとおり線路は突き当たりとなって、列車は一旦手前で停車し、運転士が反対側の運転席に移動して今度は反対方向へと進んでいく。別段当たり前のことをしているだけなのだろうが、その光景は何とも不思議なことをしているように見えた。
早川の鉄橋や、スイッチバックを堪能して列車は強羅駅に到着。ようやく終点まで乗り通すことができた。やっぱり箱根登山鉄道は凄い。
というわけで、ここで昼食を取ることにした。
駅の裏側にはモハ3形と、魚菜電車と呼ばれるユ1形(だったかな)が保存展示されていた。周りに車が停まっていて、あまり保存されているという感じでもなかったがカメラに収める。
箱根湯本で長時間順番待ちの列に並んでいたこともあり、だいぶ時間が押してしまっている。
この先に進むか相談した結果、慎重派のK君はもう帰宅したいというので、今回はケーブルカーから先の区間の乗車はお預けとなってしまったが、まぁ、昨年乗車しているからいいか。
駅に戻ろうとした時、強羅駅に列車が入線してきた。サンモリッツだ!
サンモリッツは当時箱根登山鉄道の最新鋭である2000形という車両だ。かぁー、乗りたい。
が、駅で入場に手間取っている間に発車していってしまった。次の電車に乗ったのだと思うが、写真に撮っていないところを見るとまたモハ1形だったのかもしれない。
そして小田原駅からロマンスカーに乗って日帰りの箱根散策は終了。
(おわり)