ほぼ日本一周ツアー【3】(2000/09/19)
西鉄で甘木へ:
2000/09/19
というわけで今回の放浪旅はここからが本番。前述のとおり今日は鉄道に乗って広島の辺りを目指すことにしている。
自分にとって初めての九州である。初上陸の地なので見るもの全てがお初である。もちろん鉄道もだ。
九州にも多くの鉄道路線があり、全部見ようと思ったら何日もかかる。だが自分にとって九州のみならず中国、四国地方を含めた西日本全体がそう易々と来ることが出来ない場所である。なので出来るだけあちこち見て回りたい。
ということで九州滞在は今日の午前中までとした。その限られた時間の中で効率よく鉄道写真を撮影するにはどういう経路で回れば良いか、昨晩あれこれ検討した。色々吟味した末、今回は西鉄福岡駅を皮切りに、西鉄、甘木鉄道、篠栗線、筑豊電鉄の4路線に乗車して車両ハントにいそしみつつ、北九州から下関へと抜けるルートで乗車してみることにした。
西鉄福岡駅から西鉄大牟田線特急で久留米駅まで乗車。西鉄特急と言えば8000形という特急専用車があるが、やってきたのは通勤形の5000形だった。特急は30分に1本程度だったので次の列車を待つ時間が惜しんで結局その5000形の特急に乗り込んだ。ロングシートは残念だが、まぁこれも初物だからいいか。
久留米駅から折り返しで宮の陣駅へ。そこで今度は甘木線に乗り換え。甘木線は終点の甘木駅まで乗車した。
あてどない鉄道の旅は久しぶりである。見るもの全てが目新しくてワクワクする。このところ鉄道はもっぱら何かの用事を済ませるために乗るものとなっていたが、今回の旅で乗る列車は全て用事がないのに乗る列車だ。
用事がないのに列車に乗るという行為は時間的にもお金の面でも無駄そのものである。だがそれが旅ではないだろうか。
この旅はするべきだったのか、自分の人生において無駄な時間になってはいないだろうか、という背徳感をかすかに感じつつ、一方でこの先に何があるのか、周りに何が見えるのか見てみたい。その行為は無駄ではないはず。だから旅をする。これこそ旅の醍醐味だと思っているのだがいかがだろうか。
なぜ甘木線を選んだのかというと、甘木線は西鉄のかつての名車200系が走っていた路線として知られていて、流石に今はもう走っていないがちょっと古めの鉄道車両に乗れるのではないかと期待したからである。
乗車した車両は600系であった。最新鋭ではないが言うほど古くもない車両だった。ちなみに上の写真は途中の本郷駅での交換風景。割と近年になって交換可能駅になったようで増線された方の線路はバラストも枕木も新しい。
そのせいでホームを多少削っているようなのだが、これはどうなんだろう。
白線の内側に点字ブロックがあるところまでは分かるが、その背中合わせで反対番線用の白線が引かれている。つまり安全地帯は点字ブロックの幅のみ!
「白線の内側に下がってお待ちください。」とアナウンスされたら、皆この点字ブロックの上に横一列に並ぶより他ない。世間で日本一狭いホームと称される阪急の春日野道駅と比べてもそん色ないレベルの狭さだ。
もっとも、ここは全ての列車が停車するので進入速度が速くない。利用客もそんなに多くはなさそうなのでこれでよいのかもしれない。万一ここにホームドアを設置することになったら面白いことになりそうだ。
甘木鉄道で基山へ:
それから終点、甘木駅まで乗り通して下車。ここで甘木鉄道に乗り換えることが出来る。といっても駅は100mほど離れていて少しだけ外の空気を吸う。
甘木鉄道は国鉄甘木線が第三セクター化されて誕生した鉄道会社だ。
甘木線は自分がさっき乗ってきた西鉄甘木線の経路と概ね並行している。私鉄が並行している国鉄路線は大抵採算が悪い。一般に私鉄路線の方が様々なサービスを行って乗客の利便性を高める努力を続けているからである。
この甘木線もそれらの路線の例に漏れず収支が悪かったので、やがて第1次特定交通線に選定され廃止の議論が巻き起こる。だが地元自治体はこの路線を第三セクター化することで存続していく決断をした。
そうして甘木鉄道として再出発をしたわけだが、増便などの積極的なサービス改善を行った結果収支が好転。第三セクター化以降長らく黒字経営を続けていた鉄道会社として知られている。
このレールバスに乗って終点の基山駅まで向かった。沿線の途中駅から次々と乗客が乗り込んできて立ち席の客もいた。噂に違わぬ盛況ぶりである。
JRで直方へ:
基山駅でJR鹿児島本線が接続しているので、その足で博多駅へ戻る。
博多駅で少し撮影タイムを取って、いくつかの列車を撮影してから今度は篠栗線、筑豊本線を経由して直方駅へ。
篠栗線・筑豊本線は今は電化されているが、当時はディーゼルカーでの運転だった。しかもここで運行されているキハ66、67は九州でもここでしか走っていなかったので撮影してみようと考えての立ち寄りである。
筑豊電鉄で黒崎へ:
そして、直方駅から少し歩いたところにあるのが筑豊電鉄の筑豊直方駅。筑豊電鉄もまた物珍しい路線である。ここ筑豊直方駅と北九州の黒崎駅の間を結ぶ郊外鉄道のような性格の路線なのだが車両は路面電車風である。
これは当初、熊西駅から黒崎駅までの間を西鉄の北九州本線という軌道線に乗り入れていたことに由来している(現在は北九州本線は廃線、熊西駅-黒崎駅間は筑豊電鉄に移管)。
車体は3車体連接になっていて、真ん中の車両は両方の台車が連接になっているため短くなっているが、路面電車というには規模が大きい。そんな路面電車のようで路面電車でない、ローカル線のようでローカル線じゃない不思議な電車にちょっと乗ってみたいと思ってピックアップした路線だ。
これに乗って黒崎駅まで向かう。駅数が多いのに各駅停車しか走っていないので結構な時間がかかった。
乗り疲れたなと思う頃に黒崎駅に到着。
自分はここで大きなヘマをしでかした。黒崎駅から折尾駅まで西鉄の北九州本線が走っている。何かの本で2000年頃に全線廃止という話を読んだ気がするのだが、廃止日はちゃんと確認しておらず既に廃止されたと思い込んでいた。
だが自分が訪問した時には実はまだ営業を続けていたのだ。
結局、自分が訪問した2カ月後の11月が廃止日で、訪問時は撮影のラストチャンスだった訳だがそれを撮り逃すという大失態をしてしまったのだ。悔やんでも悔やみきれないとはこのことを言うのか。