ほぼ日本一周ツアー【6】(2000/09/20)

思い付きで自転車を借りる:


土生港のターミナルを覗くと多くの乗客が船の到着を待っていた。殆どが年配の方である。まぁ時間的にそんなもんか。
ターミナルの一角に案内所があったのでそこで島の見どころを質問してみた。すると島の観光ガイドマップを広げてサイクリングをおススメされた。

なんでもしまなみ海道は自転車でも通行することが出来るらしく、道が通っている島々の各所でレンタサイクルが利用できるそうだ。しかもマップに掲載された貸し出し場所であれば乗り捨ても可能らしい。

 

ほほう自転車か。自分はインドア側の人間だが、自転車がないとどこへも行けないような所で育ったので足腰にはちょっとした自信がある。しまなみ海道を自転車で渡って今治まで行く、というのもまた得難い体験であるような気がしてやってみたくなった。

地図を見ると因島の自転車貸し出し場所はここ土生港と島の北端にある重井港にあるようだ。・・・と、その前にぼちぼちお昼だ。とりあえず腹を満たしたい。

なのだがターミナルの周囲を見回しても何かを食べさせてくれる店がぱっと見で見つからなかった。そこで自転車は重井港で借りることにして、そこまでの道すがらでいい感じの店を見つけて昼食というプランに決定。

 

件のJazzUpの歌詞は、上記の詞の後に「初恋を乗せてペダル踏んでた」と続くのだが、今の自分は「重たい荷物を背負ってとぼとぼ歩く」である。

海としまなみを見ながらの歩行はなかなか楽しい。だが歩けども歩けども店が見つからない。楽しいと思っていられたのも最初のうちだけで20分も歩いたらもう背中のバッグが重くてしょうがない。9月下旬ではあるがまだまだ陽気は夏のそれである。30度を超す気温に汗が止まらないし、バッグは肩に食い込んで痛いしで土生港で自転車を借りてから食事処を探すべきだったなぁと大いに後悔。。。

それでも頑張って2、3キロは歩いたが、店はおろか重井港も全然近づいてこない。もうだめ・・・ギブ。

 

自分が歩いている道はバス通りになっているようで時折バス停の脇を通過していた。次のバス停が見えてきたらそこからバスに乗ろう。そう決めてリビングデッドのように歩く。

やがて見つけたバス停(もう忘れた)でバックを地面に投げ出してバスを待った。暫くしてバスがやって来たので迷うことなく乗車。冷房の効いた車内は天国であった。やっぱ文明の利器ってすごい。

 

自転車:


重井港のレンタサイクルの貸し出し場所は異様に趣のある建物だった。農家の納屋というか、あばら家のようなというかそんな佇まいで建っていた。
傍らの詰所にいた係員の老人が自分が来たことに気づいて中から出てきた。その係員に自転車を借りたい旨を伝えると、ここの中にある自転車だったらどれでもいいよという。そう言われて中を覗いてみると停まっているのはメーカーも色もサイズもバラバラの自転車。どうやらレンタサイクル用に新調したものではなく放置自転車等を再整備して貸し出しているっぽい。

 

自転車のタイプは押しなべてママチャリである。まぁ、レンタサイクルなんだからママチャリを借りることになるのだろうな、とは思っていたが、ギアも何もないママチャリで長距離走ることが出来るかと言われるとやや不安を感じる。

係員は並んでいる自転車をいくつか見繕って、こんなのとかいいんじゃない?と自分に薦めてくる。見ると一応3段変速のギアが付いていたりする。そうだなこれなら行けるかな。。。

とりあえず曖昧に頷きつつ他にはないか一通り探していたら、ママチャリに紛れて一台だけマウンテンバイクがあった。すかさずこれも借りられる自転車ですか?と聞くと大丈夫とのこと。そのマウンテンバイクは前が3段、後ろが7段の計21段のギヤを搭載していて見た目は流石に薄らぼんやりしているがママチャリと較べたら遥かに機動性が高そうだった。

しまなみ海道の橋はかなり高い所を通っている。その橋を渡るわけだからそこまで登らないとならない。だとしたら多段変速の自転車の方が絶対楽だろう。ただマウンテンバイクなのでカゴの類が一切付いていない。カゴがあれば荷物満載のスポーツバッグを押し込んて肩を楽にできるのだが、、、そこは諦めか。

カゴの有無は多少悩んだが、結局そのマウンテンバイクを借りることにした。ということでそれが自分のしまなみの旅のお供となった。

 

早速走り出してみた。リユース品だがギアなどはちゃんと整備されているようで変速もスムーズ。

「♪重井港から海沿いの道を荷物を背負ってペダル踏んでた~」

などと件のJazzUpを替え歌を口ずさみながら土生港の方へと戻る道を進む。道は広く車もそれほど多くはないのでなかなか快適だ。

ちなみにこの曲はその後に「246から渋谷に抜ける今の僕と何が違うの?」と続く。要は都会に出てきてイケイケになっているけど、昔、初心な気持ちを抱いていた頃の自分と何が変わったのか?ということを歌っている訳だが、こんな替え歌の主人公は将来都会でイケてる暮らしを送っているイメージが全くない。都会に出てからも何となく垢抜けない毎日を送っていそうな気がする・・・って、そりゃ俺だw

 

生口橋:


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しまなみ海道は因島から生口(いくち)島へと渡る。その橋は生口橋といい数百m程度の海峡を斜張橋で一跨ぎしている。
自転車は自動車とは別の場所にある専用の通路によって橋へとアプローチする。その分岐は道に看板が立っているのですぐわかる。自分もその指示に従いアプローチ道路の方へと進む。

アプローチ道路は自転車専用道路なので道幅は自転車1台分。真ん中に白線が敷かれて上下交通がバッティングしないようになっている。そして自転車で登りやすいように勾配が緩やかに作られている代わりに橋までの経路はかなり遠回りをしている。

ギアを軽い段に入れ替えてゆっくりと登る。足が沢山回転する割に全然進まなのでもどかしいが、ママチャリだったらもうこの時点で押し歩きになっていた気がする。

 

潮風を受けて少し乾き始めていた汗が再び噴き出してくる。5分くらい一生懸命足を動かしたら橋の路面が目線になり、ようやく橋への入口にたどり着いた。

橋の手前にはちょっとした休憩所と自転車道用料金所が設けられていた。自転車は50円とのこと。自転車も有料なのか。
ただ、特にゲートなどで塞がれている訳ではないので、素通りしようと思えば素通りも可能、ただし監視カメラで監視されているらしく不正通行が発覚したら罰金だそうだ。

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50円を回収箱に落として橋の上へと進む。橋の上は起伏がないので再び爽快なサイクリングとなる。

生口橋は790mというので、自転車で快調に飛ばすと物の5分くらいで通過してしまう。それもなんかもったいない気がしたのでゆっくり途中で景色などを見ながら進んだ。

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自分は海なし県である埼玉県の出身なので海がある景色を見るだけでテンションが上がる。まして関東周辺で島と言えば火山島である伊豆諸島くらいしかないので島が点々と密集して浮かぶ光景はひたすら新鮮なものだった。
海岸から見る景色もよい景色だったが、橋の上から眺めた景色もまた格別。左側は因島の市街地、正面の小島が平内島、その奥が生名島、左側は弓削島、右側が岩城島といった具合である。

Posted by gen_charly