ほぼ日本一周ツアー【12】(2000/09/22~09/23)
サンライズ出雲初乗車:
それから徒歩で松江駅まで戻ったら出発の1時間くらい前になった。駅近くの飲食店で夕食を済ませてからホームに上がると既に列車は到着していた。
自分の手配した部屋に入る。
やっと一息。
さてサンライズ出雲である。この列車は前にも触れたが珍しく電車寝台となっている。電車寝台と言えばかつて581/583系というのがあったが設計を欲張りすぎたせいで寝台特急としても座席特急としても中途半端という残念な車両だった。
その反省があったのかどうか分からないが、この車両は寝台専用列車に仕立てられていてその寝台も個室寝台が基本となっている。
B寝台はダブルデッキになっている。客車の開放式B寝台は上段に窓がないのであまり居心地の良いものではなかったが、この車両はそれぞれの個室に大きな窓が設けられ快適な空間となっている。
室内は上の写真のような感じである。木目が多用されていて温かく落ち着く空間に仕立てられている。ただ、写真に写っているテーブルは進行方向後方に位置している。東京から下る場合は進行方向にテーブルがあり、壁を背もたれにしてくつろぐことが出来るのだが、自分が乗った列車のように上り方向へ進む場合、その座り方だとずっと進行方向に対して後ろ向きに座る形になる。そしてそういう列車に乗るとすぐに酔う自分。。。
テーブルを背もたれにすると背中が痛くなってしまうので寄りかかるわけにもいかずどうにも落ち着かない。。。
廊下もこのような感じで木目パネルが多用されている。更に照明も間接照明になっていてシックで高級感のある設えだ。
手すりもまた同様。鉄道車両は列車火災などの時に激しく炎上しないように難燃化対策を行う必要があり、かつては燃えにくい木目パネルなどがなかったのでそうした対策が施された車両は大抵壁面などが無機質な単色のパネルとなっていた。
これが寝台列車なども含め上級車両にも関わらずどうにも無機質で冷たい印象を抱く遠因になっていたりした。まぁそれが独特な味わいを生み出しているとも言えるのだが。
それだけにこうした木目パネルの採用は今日では割と当たり前になってきたが、当時はなかなかの快挙だったのだ。
個室寝台なので周りに気兼ねなく電気を点けたままにしておけるので優雅なひと時を過ごすことが出来た。
そのせいかテンション上がりっぱなしで、あまり眠くもならず殆ど起きたまま東京駅に到着した。
こうして8日間のあてどない旅は幕を下ろした。気が大きくなったと言えばそういうことだが、なかなか冒険じみた面白い旅行だったと思う。ただ荷物の持ち運びがとにかく煩わしかった。そこだけが反省点。次回の旅行では荷物の取捨選択やパッキングをもっと厳密にやった方が良さそうだ。
後日談:
実はこのサンライズ号については後日談がある。自分は当時ミサワホームのシステム関連会社に常駐していたのだが、帰宅後同じオフィスの人と今回の旅行の土産話に花を咲かしていたら、
「サンライズ号の壁とか手すりとか本物の木みたいだったでしょ?あれ、うちのM-Wood使ってるんだよ。」
という話を教えて貰った。
M-Woodとは住宅建築の際に排出される端材を再利用してシート状に加工したものである。元が本物の木材の端材なので手触りは木そのもので薄いシート状なので様々な面に貼り付けて使うことが出来るという商品だ。
言われてみればサンライズ出雲の内装は確かにただの木目プリント合板とは異なる風合いだった。そもそも木は燃えるものなので難燃基準の厳しい鉄道車両において木材を使うのは本来御法度(なので、古い電車のニス塗りの木の内装が徐々に廃れていく原因になった)な筈だが、M-Woodは耐火性、耐候性も基準をクリアした上で採用されたそうだ。
しかし自分が常駐している先の商品が使われているなんて全く知らずに乗車してしまった。予め知っていたらもう少し違う視点で観察してみたかったなぁ。
(おわり)