南紀初日の出【3】(2005/01/01)
橋杭岩:
車が停車する音に気付いて目が覚めたら橋杭岩と言う所にいた。
そこは目的地より手前だったが、カミさんが運転中に見かけて興味を持って立ち寄ることにしたらしい。果たしてどんなものかと車を降りて橋杭岩の方へ歩いていくと、そこには異様な光景が広がっていた。
海岸に沿うように10メートルほどの高さで起立する岩が列をなしている。なんだこれ、初めて見る景色にしばし見入ってしまった。
確かに橋の杭(橋脚)が1列に並んでいるようにも見える。あるいは隊列を組んでどこかを目指す巨人の群れのようにも見えた。
付近は浅瀬になっていて、丁度引き潮でそれらの岩塊のすぐ近くまで岩伝いに歩いて行けるようになっていたので、もう少し近づいてみることにした。
近くまで寄ってみるとこのような光景が広がっていた。これらの岩は地中にあった火山の硬い岩石と海の底に沈んでいた泥岩が隆起によって海上に姿を現し、後に柔らかい泥岩が浸食によってなくなって硬い岩のみが残ったものだそうだ。
航空写真などで上空から見ると陸地から沖合に向けて一直線に岩がならんでいる。もしかしたらここが活動していた当時は、伊豆大島の割れ目噴火やキラウェア火山のような光景が見られたのかもしれない。
近くにいい感じの岩があったのでそこに腰掛けて30分ほど奇岩をじっくり堪能した。自然の造形の妙にため息が出た。
カミさんが気にしなければ、こんな神秘的な場所を素通りするところだった。カミさんGJであった。
潮岬と紀伊大島:
再び自分が運転手となって次に向かったのがここからほど近い所にある潮岬(しおのみさき)。
潮岬は本州最南端の地であり、台風情報などで「潮岬の南南西〇〇キロ」などと読み上げられるので耳にしたことがあるという人も多いと思う。最南端には潮岬灯台があるが逆に言うとそれ以外にはこれと言ったものがなかった。灯台も中を見学することなどは出来なかったので、灯台を見たあと岬の向こうに広がる大海原を眺めるだけで終わってしまった。
潮岬のある場所は離れ小島のようになっているが砂嘴によって地続きになっている。だがすぐ東隣にある紀伊大島には砂嘴は形成されず、独立した島を形作っている。この紀伊大島は潮岬の手前から橋で渡ることが出来るようになっていたのでそちらにも行ってみた。この島は島旅25番目の島であった。
この島の見どころは樫野埼灯台とその周辺に点在する種々の施設くらいらしい。とりあえず灯台を目指して進むと道の両側はうっそうとした雑木林か畑が続くばかりで、これと言って興味を惹かれるものもなかった。
もしかしてこの島は無人島なのかと思ったが、どうやらこの道自体が元々集落を避けて通されているらしく、地図で見ると集落は少し離れた海沿いに点在しているらしかった。
当時はそうした集落にわざわざ足を運ぶほどの島好きではなかったので、集落には目も向けず島の東の端にある灯台まで進んだ。
灯台の最寄りまで来ると、それまでのどこにでもあるアスファルト敷きの県道がレンガタイル貼りに変わって、にわかに観光地的な雰囲気を漂わせ始めた。
駐車場に車を止め少し散策しようと思ったのだが、カミさんは車で待っているとのことだった。
なのでこの先1人で散策することになったのだが、時間は16時を過ぎ既にだいぶ日が傾いている。カミさんが車で留守番していることもあって急ぎ足での散策となってしまった。
こちらはトルコ記念館。トルコは親日国として知られている。明治23年にトルコの前身であったオスマン帝国からエルトゥールル号という軍艦がやってきたのだが、その帰路の際にこの紀伊大島付近の岩礁で座礁した。事故によって6百数十名の乗員のうち500名以上が犠牲になるという大惨事であったが、その際この樫野地区の人たちが総出で遭難者の救助にあたった。その逸話が本国に伝わり以来親日国家となったそうだ。
そうした事前知識があって、かつもう少し時間に余裕があったら館内を見学に行ったのだと思うが、当時の自分はそんな事件があったことも、トルコが親日国であることも知らなかった。それよりカミさんが車の中で退屈しているのだろうと思うと、早く戻らないとと急かされているような気分になってしまい、館内の見学はできずじまいだった。
こちらがその事件の慰霊碑でエルトゥールル号遭難慰霊碑と言うそうだ。立派な慰霊碑が建てられている。既に100年以上前の事件だが、今でも5年に一度慰霊祭が行われているそうだ。
そこから更に歩いていくと突き当りに樫野埼灯台がある。綺麗な白亜の灯台だが見た目に反して意外にも日本最古の石造り灯台らしい。
灯台を見ているうちにどんどん日が暮れてくる。冬の日没は早い。
と言うことで急ぎ足の島の散策はこれにて終了。トルコ記念館はもし再訪する機会に恵まれたら今度は見学してみたい。
さて、本日はの散策はこれで終わりにすることにした。連日の車中泊で少し疲れてきたこともあり、今日は温かい部屋で足を伸ばしてゆっくり休もうよ、と提案して宿に1泊することにした。
串本まで戻り、駅で探してもらったビジネスホテル串本が今日の寝床となった。
この宿は名前にビジネスホテルと冠されているが、古い観光地にありそうな家族経営の旅館っぽい雰囲気の宿だった。
嬉しいことにこのホテルには温泉が併設されている。なぜか風呂場はホテルの建物からちょっと離れた所にあるのだが、とても良いお湯でのんびり浸かって疲れを癒した。
それから部屋に戻り近隣のコンビニで買って来た弁当をつまみながらゆっくりとした時間を過ごした。コンビニに行ったついでにこの辺りのガイドブックを入手してきた。今頃見るのかよと言う感じがしなくもないが。
それをパラパラめくりながら明日以降に行ってみたいところをピックアップして就寝。