沖縄離島探訪【11】(2006/11/22)
与那国島:
さっきの積乱雲による降雨だろうか、与那国空港は雨で路面が濡れていた。雨が降った直後だからか少し肌寒さを感じたのでカバンに入れておいた長袖を羽織る(カミさんは最初から長袖)。
島旅39番目の島は与那国島となった。飛行機からエプロンに直接降りるので、タラップの降り口の前でちょっとだけVIPのような気分を味わった。
いや、そんな悠長なことをやっている場合ではない。荷物が出てくるのを待っている間に再びトイレに駆け込む。いつまで経っても落ち着かなくて困惑している。腹薬もう少し頑張れ。
このまま悪化して高熱が出たり、腹痛で進退窮まって救急搬送なんて事態にならなければよいが。。。
この島で借りるレンタカーは営業所が空港のロビーに併設されている。そこに行く途中にあった土産物屋などを冷やかしつつ店に向かう。
明日は宿をチェックアウトしたら石垣に戻ることになっているので、車は今日は夕方まで半日のレンタルとした。車を借りている間に島内を観光するつもりだ。
そのレンタカー屋は米浜レンタカーという地場の店だ。小さな事務スペースでおばちゃんが1人で店番をしていた。手続きを済ませると車は駐車場に鍵付きで停めてあるからナンバーを確認して乗って行ってください、と言われた。駐車場でその車を探したらほどなく見つかった。この島でのレンタカーは濃紺のミニカである。
荷物を積んで運転席に乗り込むとハンドルだけがやたらと黄ばんでいる。熱でやられたのかななどと思いつつふとメーターの距離計を見たら16万キロを超えていた。随分と物持ちがいいことで。
島で16万キロはなかなか走れないと思うのでどこかでリースアップになった車を安く調達してきたのかもしれない。まぁ、ちゃんと走ってくれさえすればそれで充分。
ドアを閉めたらペコンと軽い音を立てた。なんともしみったれた気持ちになったがこれも離島の味わいだ。。。とは思えないなw
ティンダハナと崎元酒造:
とりあえず車を出発させ、まずは島の北東に位置する祖内(そない)集落の背後にそびえたつ山にあるティンダハナ(天蛇鼻、ティンダハナタとも称する)に行ってみることに。
ティンダハナの「ハナ」は崖を指す古い言葉である。聞き馴染みのない表現であるように思えるが、漢字で書けば鼻なのでどういう場所なのかは何となく想像がつく。この辺りの方言ではなく本土でもそういう名前が付けられている場所はあちこちにある。
与那国では崖のことを「ハナ」と称するが、沖縄本島だと「バンタ」、宮古島あたりでは「バナタ」などと変化する。以前宮古島に社員旅行に行ったときに伊良部島で見たフナウサギバナタもこれに該当する。
遊歩道入口前の駐車場に車を置いてそこから歩いて向かう。さっき雨が降ったばかりなので道が濡れている。こういう時ってハブが出るんじゃなかったっけ?与那国にハブは・・・いる。周囲に注意を払いながら恐る恐るその遊歩道を歩いた。
数分ばかり進むと崖がえぐれて片洞門のようになっている場所に出た。ここがティンダハナである。かつて当地を治めていたサンアイ・イソバと呼ばれる女酋長の根城があった場所とされている。
崖は祖内集落背後の高台にあり集落と東シナ海が一望できる。祖納集落は島の中心的な集落で町役場も置かれている。
これだけ見晴らしの良い場所なら敵の襲来も良く見通せたことだろう。それにしても・・・天気が微妙だ。
そこから順路に沿って更に進むと、2、3人の島の女性と思しき人が白装束で祈祷している場面に出くわした。彼女らはウチカビ(打ち紙)と思しき紙の束を備えて、一心不乱に祈りを捧げておりその姿は真剣そのもの。我々が近づいたことにも気づいていないようだ。そうした儀式は沖縄の島々では一般的と言うが、これまで目の当たりにしたことはない。
それだけにどのような儀式なのか見てみたいと思ったのだが、なんの断りもなしの見学はのぞき見をしているようで気が引ける。でもちょっと見たい。。。そうして少し眺めていたら徐々に自分らが立ち入ってはならない場所に入り込んでいるような気がしてきて、だんだんソワソワしてきた。これはやはり見てはならないものなのだろうと思い、程なくその場を離れた。
という訳で次の見どころへ。次は琉球泡盛の酒蔵を見学しに行く。近くに与那国という泡盛を製造している崎元酒造という蔵元があり、見学可能とのことだ。というか我々の旅行において蔵元の見学は非常に珍しいイベントだが、ガイドブックを見ていたカミさんが泡盛の酒蔵を見学してみたいと言い出したためだ。
工場に到着し店員に声をかけたらすぐに案内してくれた。酒蔵に入るとムワっとした酒の匂いが充満していた。流石酒蔵である、アルコールに弱い自分はこの臭いだけで酔えそうだw
店員がここで作っている泡盛の種類や醸造の工程などを懇切丁寧に解説してくれた。だが酒を飲まない自分には何が何やらw
カミさんが聞いているだろうからいいやと適当に聞き流してしまった。
説明は15分ほどだった。お礼を言って外に出る。ここは直売所も併設されていて作っているお酒を買うことが出来る。我が家は自分は下戸だしカミさんも家では酒を飲まないので自宅用は不要なのだが、知り合いに酒飲みがいるのでお土産として買って帰ることにした。
与那国は30度、45度、60度の3種類が売られている。どれも自分の感覚からしたらこんなの誰が飲むんだよ、と思うほどの度数だ。この度数が酒飲みにとってどういう位置づけになるのかよく分からないが、売っているということは飲むやつがいるということだ。だが、それでも買って帰ってこんなの飲めるか!なんて言われたら悲しいのですんなりと手が伸びなかった。色々見ていたらそれぞれの度数の物が100mlほどの小瓶に入ったセットが売られていた。これなら味見程度の量だから大丈夫だろうか。
かように酒が飲めない人が酒を土産に買っていくのは難しいものなのだ。
店を出てからカミさんに感想を聞いてみたら話が長くて退屈だったと言っていた。自分が行きたいって言っていたのに。
なぜ酒蔵を見学したかったのかと更に聞いたら試飲目当てであることを白状した。結局試飲にありつけなかったので不満だったらしい。なんだかね。
ちなみに与那国にはもう一つ酒蔵があるのだが、そこが出している銘柄はどなんという。「どなん」と「与那国」、発音すると全く異なる言葉だが語源は同じらしい。と言うのも与那国方言ではyの音がdに変化する特徴があるそうだ。つまり与那国の「与那」を与那国方言で読むと「どぅな」となる。つまりどなんだ。どなんとはこの島が黒潮の真っただ中にあり、渡ることが困難だったことから「渡難」と呼ばれていたことが由来であるそうだ。
片方は試飲目当てでもう片方はロクに聞いていない。不真面目極まりない見学者たちであったがトイレだけはしっかり拝借した。