沖縄離島探訪【21】(2006/11/24)

オーハ島の様子:


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ほどなく船はオーハ島の船着き場に接岸し我々だけが下船。島旅41番目の島となった。
船長から1時間後に迎えに来るのでその時にまでにここに戻って待っていてくださいと指示があり、我々を残して出港していった。迎えに来ると分かっていても、なんかおいて行かれてしまったようなソワソワした気持ちになる。

やがてクルーザーのモーター音も聞こえなくなると辺りは静寂に包まれた。

 

ここが長らく憧れていたオーハ島か。事前情報で殆ど住民はいないことは知っているが、全くひと気を感じない船着き場に立つと改めて寂しい場所だなと思った。船着き場には小屋がひとつあるだけで他には何もない。人家らしきものも何ひとつ見えないので本当にここがオーハ島なのか、という疑念すら芽生える。

実は今回、島の地図を持たずに訪島している。一応事前にネットの地図は見てきたが道らしきものが一切書かれていなかった。なので自分らが上陸したのが島のどの辺りなのかとか、どこをどう進んだらどこに行けるのか、といった情報が全くない。

考えてみたらこんな観光ツアーで無遠慮に上陸した観光客が島内をウロつくことを嫌がる住民だっているかもしれない。業者もその辺を考慮して集落とは無関係な船着き場に我々を降ろして、何を見たいのかは知らないけど無人島っぽい所をちょろっと見てってくださいよ、なんて考えている可能性もある。

 

船着き場の脇から奥の方へのびるあぜ道のような細い通路が見える。その奥の様子はここからだと窺い知れないがとりあえずそこを進むより他なさそうだ。藪漕ぎを強いられるような道かもしれないが、自分は半袖短パンにサンダル履きといういでたちである。島にはハブがいるという話も聞くので藪漕ぎは流石に躊躇する。あ、カミさんはそこまで考えての登山ルックだったのか!?

憧れの島に上陸したは良いものの、秘境めいた島なんていうイメージは自分が勝手に妄想しているだけで、実は大した見所はないのかもしれないなと思いつつ、意を決してその通路を進み始めた。まぁ港がある以上この道は集落の方向へと続いているものだとは思うが、案外反対側の海岸辺りに出ておしまいかもしれない。

 

それならそれで、そこまで行って昼食にしようかなんて言いながらカミさんとずんずん進んでいくと50mばかりで景色が開けた。
周囲は藪に囲まれているが数軒の民家が見える。おお、集落だ。よく物語で山道を歩いてようやく一軒家を見つけた、なんてシーンがあるが、その時の主人公の気持ちはこんな感じだったのかなと思った。

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1軒目のお宅はいかにも沖縄の古民家と言った佇まい。窓は開け放たれ部屋の中が丸見えである。何とも無防備だなと一瞬思ったが、ここを訪ねる部外者など滅多にいないのだから気にする必要がないのだろう。一見不便極まりない場所だが、そういう意味では開放的な気分で暮らせる魅力もあるなと思った。

無防備と言えば、おばあが部屋の中で昼寝しているのも丸見えだった。なぜか縁側すれすれのところで突っ伏して眠っている。そこで寝るか、という場所で寝ていたので一瞬倒れているんじゃないかと心配した。そんなフリースタイル具合も人目が気にならないこういう場所だからこそだな。

 

更に進むと10mばかり先に次のお宅を見つけた。こちらの家はガラス戸が閉ざされていた。
道はここで途切れてその先は藪になっている。あれ、2軒しかない。周囲を見回してもこの2軒の他に家屋は見当たらない。島には4世帯があると聞いているので他の家屋はここから見えない場所に有るのだろうか。別の船着き場からアクセスする場所なのか、はたまた藪に取り込まれてしまったのか。

ここで行きどまりだとしたら島の散策はもうおしまいだ。まだ島に上陸して100mも歩いていない。流石にあっけなさすぎるが、とはいえ藪漕ぎをしてまで探索したい訳でもない。ツアーのついでに立ち寄ってくれるオプションなんてせいぜいこんな物なのだろう。一応、島の雰囲気は何となくわかったので船着き場に戻って弁当でも食べるか。

カミさんにそう提案したら、意外にもカミさんはまだ道を探すことを諦めていない様子だった。入って行けそうな道がないか広場の隅まで行ってくまなく探していたが、やはり道らしきものは全く見つからなかった。やっぱりこれ以上何もないんだよ。

 

するとカミさんが意外なことを口にした。

「そこのウチの人に聞いてみようよ。さっき人影見えたし。」

そこのウチとは2軒目のお宅である。だが、ここの家人は我々が敷地の前辺りで道を見失ってきょろきょろしている時に、目が合った瞬間カーテンを閉めてしまった。明らかに我々を警戒されている。まぁ、それが普通である気もする。自分だって家の前を知らない人がウロウロしていたらカーテンを閉める。そんな人に突撃をかますのは流石に迷惑以外の何物でもないと思うのでカミさんの提案は却下した。

でも自分が納得するまで聞く耳を持たないのがカミさんである。案の定、

「でも、このまま帰るんじゃ勿体ないし、ダメ元で聞くだけ聞いてみよう?」

といって敷地に入っていった。大丈夫かなぁ。トラブルにならないことを祈りつつその後に続いた。

「すみませーん。」

・・・応答なし。

「すみませーん!」

そりゃあれだけ露骨に警戒していたんだから出てくるわけがない。あまりしつこいとトラブルになるかもしれないからもう諦めようよ、と言いかかったその時、、、

「はいはい、あ、ごめんなさいね。」

と建物の脇から声がした。それからちょっとの間をおいて、なんですか?と言う声と共にガラス戸が開き、中から腰の曲がった小さいおばあが顔を出した。声は普通の来客に対応する時のトーンたが表情は少し警戒している感じがした。

それを見てこちらも無遠慮に島の道を尋ねることを躊躇したが、呼びかけておいて何でもないですもないだろうと思い、思い切って質問してみた。

「すみません。ちょっと道をお聞きしたいのですが。。。」

「ああーそうですか。ちょっと上がっていきなさい。」

こちらの問いには答えずに家にあがれと促された。どういうこと!?
話は家の中でゆっくり聞きましょうと言う意味なのか、はたまた人の家の前をウロウロするんじゃないとお叱りを受けるのか、唐突な提案にその言葉の真意を測りかねて戸惑ってしまった。さっき露骨に警戒してカーテンを閉めたうえ、居留守を使おうとしたおばあであることを考えると多分後者なような気がする、と言ってもそれも変な話だが。だとしたらノコノコと家にお邪魔するのは得策ではないかもしれない。それに仮に前者だったとしても、一旦敷居をまたがせておいて5分でお邪魔しました、なんてことには多分ならないだろう。それなら立ち話で十分だ。あんまり長くなると今度はお昼を食べ損ねてしまう。

なので、いやーご迷惑になるので。。。などとやんわり遠慮したのだが、

「いいからいいから。どうぞ、上がってお茶飲んでいきなさい。」

こっちの言っている事を全く聞いてくれない。。。ちょっと道を聞きたいだけなんだけどな、という思いもあったが、強く拒んだらかえって印象が悪くなりそうだし、道を聞くにしても上がらないと教えて貰えなさそうな雰囲気だ。
じゃあ、ということで覚悟を決めてお邪魔することにした。

Posted by gen_charly