奄美大島上陸【16】(2007/09/23)

奄美観光ハブセンター:


魚影は薄かったがとりあえずやり切った。残り半日。
で、いよいよ最後の観光である。奄美大島に来てこれを見ずに帰れるか、という物を見に名瀬へと戻ってきた。まだ島北端の笠利崎へ行けていないが、そっちまで足を伸ばす時間が無くなってしまったのでやむなくパスである。


かつて沖縄や奄美観光の目玉であったハブとマングースのショーというものがある。自分がそれを知ったのは何かのコミックにネタで取り上げられていたからだ。ハブとマングースがグローブをはめてファイティングポーズを取っているイラストに記憶がある。当時の自分はそれを真に受けて見に行ってみたいと思っていたのだが、それから何年かした頃から動物愛護団体からのクレームが相次ぐようになり10年位前に沖縄のショーは廃れてしまった。

ところが奄美では今も変わらずショーを開催しているという。沖縄のそれほどに有名ではなかったので団体の目につかなかったのかもしれない。とはいえ何時やり玉に挙がって見られなくなるか分からない。そうなる前に今回ぜひとも見学しておきたいと思っていたのだ。

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ショーを開催しているのは名瀬の市街地にある奄美観光ハブセンターという施設。
1Fはハブの革細工やハブ酒などの土産物売り場と受付窓口がある。その受付に観覧希望の旨を伝えると次のショーがあと5分ほどで始まるという。いいタイミングで来れたものだ。

料金を支払うと、2Fでお待ちくださいと案内された。

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2Fは資料室になっていて、ケースに収められたハブやハブが丸のみしたという小動物のはく製、パネル展示などがあった。
ゆっくり見学する時間がなかったのでさっと眺めることしかできなかったが、ハブに噛まれた人の足の写真は衝撃的だった。ハブ毒は肉を溶かしてしまうらしい。

ケースの中のハブはとぐろを巻いて大人しくしていた。自分の体に顎を載せて休憩する気分はどのようなものだろうか。というかヘビは自分の体のしっぽの先端まで自分の体だとちゃんと認識しているのだろうか。ヘビがのたくっているのを見ると頭が進んでいく方向に合わせて胴体以降の部分がついていくような動きをしている。とぐろを巻いていても頭が通ったところをしっぽまで律儀になぞるように進んでいる。そういう動きを見ていると実は自分の意志ではしっぽの先端まで自由に動かせないのではないか、という気がするのだ。


見学しているうちに開演時間のお知らせがあった。3Fに集合とのことなので今度は3Fに上がる。
3Fは学校の視聴覚室くらいの大きさの部屋で中央にハブとマングースが収められたケースがドーンと置かれている。そのケースを囲うように座席があって、自由におかけくださいとのことだった。

着席した時には室内に我々しか客がいなかったので最前列を確保、このショーってあんまり人気ないのかな、と不安になったがほどなくぞろぞろと入室してきていつの間に満席になった。そうだよね、みんなこれ見たいよね。

ハブとマングースが納められたケースは真ん中に仕切りがあって、今は両者別々の部屋で出番を待っていた。

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ハブさん。クネクネと体をくねらせてあたりの様子を見回している。仕切りの向こうの気配を感じているのかなんとなくソワソワしているようにも見えた。

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マングースさん。隅の方で固まってじっと待機。こちらはこちらで獲物の気配を感じているようだ。

マングースは長年ハブ害に悩まされ続けた沖縄や奄美の人たちを救うための救世主として海外から持ち込まれた生き物だが、期待したほどハブを捕まえてくれず、それどころか島にいる貴重な生き物を襲ってしまうのであっという間に憎まれ物になってしまった哀れな生き物だ。
そりゃ、自分を噛んでくるようなやつを相手にするよりはその辺の無防備なやつを襲った方が楽だもんな。

最近では生態系を乱す恐れのある外来種が特定外来生物として駆除の対象になっているが、その嚆矢となったのもこの生き物だったりする。


それからスタッフが登場し、始まりの挨拶のあと20分ほどのビデオを視聴する。ビデオの内容はこの施設の館長の経歴と施設紹介だった。
館長は奄美にやってきて、ハブにぶたれた(※)患者をどうやって救済するか、この地で何十年にもわたって研究を続けたそうだ。
(※ハブはニョロニョロ近づいてきてカプっとやるのではなく、離れたところから一気にとびかかるようにして噛みつくらしく、これを地元では「ぶたれる」と表現している。)

熱心な研究と啓蒙の甲斐あって最近ではハブに噛まれて死亡する人はかなり少なくなったそうだ。
この施設はただショーを見せるためだけのものではなく、そうしたハブとの付き合い方を啓蒙するための場として開かれたものであるとのこと。


ビデオを見終わると、スタッフのおじさんからハブについてのレクチャーが行われる。

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ハブの性質や体の構造などを説明される。流石にハブと長年対峙しているだけあって手慣れた手つきでハブを捕まえる。
肝心の説明は訛りがきつくてなんて言っているか分からないところもあったが、実演しているところを見ていれば何を伝えようとしているのかすぐに分かった。

そのあと写真のように首根っこをぎゅっと握りしめた。握りしめることであごの骨格が押し出されるらしくハブが大口を開ける。苦しそうだ。。。なす術もなくぶらんと体が垂れ下がってる。もっと尻尾でぐるぐる巻きついたりするのかと思ったがそんな余力もないっぽい。
スタッフの握り方にコツがあるのか、もとからそういう習性なのかは不明。

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握った所に毒腺があるらしく絞るように親指で押し付けると、牙の先から毒がぽたぽたと垂れてくる。
毒抜きをした後、そのままの状態で客席の方まで持ってきてその牙の様子を間近で見せてくれた。

触ってもいいですよというので恐る恐る触れてみた。もちろん胴体の方である。ヘビは変温動物なので外気に合わせて体温が下がる。そのせいか分からないが触った胴体はひんやりと冷たくてなんだか生き物らしくなかった。こういう所も蛇や爬虫類に不気味さを感じる一因かもしれないなと思った。

順番に見学者の前に持って行くが、興味津々に触っている人もいれば、顔をしかめて断固拒否の人もいる。色々いて面白い。


そうした説明がひととおり済んだら、いよいよハブとマングースのショーが始まる。いよいよか。どんなファイティングポーズを見せてくれるのだろうか。

Posted by gen_charly