小笠原上陸【30】(2008/09/15)
南島散策 - 上陸:
という訳でついに上陸。自分の島旅52番目の島は南島となった。南島は父島の南西に位置する無人島である。島の全域が石灰岩で構成されている。この島とその周辺海域は沈水カルスト地形が発達している場所として知られている。沈水カルスト地形は耳慣れない単語だが、当初海面下にあった地盤が海水面の低下によって陸上となり、その状態で浸食を受けた後、再び沈下して海面下に没した地形を指す言葉だそうだ。上空からの写真を見ると水面下にもくぼみなどのカルスト特有の地形が広がっているのが分かる。
そして沈下の際に地上部分として残ったのが南島である。こうした地形は世界でもこことベトナムのハロン湾の2カ所しかない非常に珍しいものだそうだ。
(リライト時に再度調べたら下地島の通り池も沈水カルスト地形であるらしい。更に最近の調査で石垣島の名蔵湾も沈水カルスト地形であるとした調査報告もあった。なんか、ちゃんと探せばもっとあちこちにありそうだな。。。)
全員が上陸を完了した後、照一さんは再びボードに戻った。ボートを移してくるのだそうだ。少しここで待っててと言われ我々4人が島に取り残された。
一昨日と昨日の観光客が上陸適わなかった場所に立っている。そこはかとない優越感、感無量である。だが感極まるのはまだ早いw
島に到着してから概ねこんな感じの好天が続いている。にもかかわらず接岸できなかったというのだから、今日もダメだったとしても何ら不思議ではない。なので上陸できなかった時に自分を慰める言い訳を考えていたのは秘密だ。
見える範囲の植物は殆どが芝生のような背の低い草で一部にフクギのような灌木があるくらいだ。これを見ただけでもいかに植生が貧弱であるかがよく分かる。上陸した観光客が歩いて良い場所は厳密に定められていて踏み跡から外れることは厳禁とのこと。それでも人が歩くところがすぐに荒れてしまうのか踏み跡の上に踏み石が点々と置かれている。とにかく地面を踏むなということである。
照一さんが戻ってくるまで4人で他愛もない話をしながらきょろきょろと周囲を眺めていた。すると別のツアーのボートが鮫池に入って来た。Come・クルーズの船よりも一回りほども大きな船で、人が沢山乗船しているのが見えた。まずい、あいつらが上陸したら誰もいない島の風景が見られなくなってしまう。
早く戻って来い照一さん!という願いも空しく、そのボートは自分らが上陸した地点とは別の場所に接岸して乗客がぞろぞろと下船を始めた。おい、何人いるんだ?
遠目で見た感じ30人くらいの人が上陸したように見えた。先頭にガイドがいてまるで農協ツアーである。一行はこちらへと移動してきて自分らの前を横切りながら目の前の踏み跡へと進んでいった。やられた。。。
丁度その時照一さんが戻って来た。待ってたよー。。。でも鼻の差で遅かった。彼らは自分らよりも先に進んでしまっているので我々は彼らの後ろをついていくしかない。正直落胆の色が隠していなかったと思う。
・・・と思ったら向こうのガイドが照一さんに頭を下げて我々に道を譲ってくれた。お、ただの農協ガイドではなかったようだ。
再び先頭に立って島の奥の方へと進む。自分が常にカメラを構えているからか自分を先頭に立たせてくれた。視界の範囲に背丈の高さを越えるような木々は一切ない。その光景はどこかの高山を連想させた。
石を敷いてある部分の右側が踏み荒らされている。石は傾斜に合わせて少し斜めに置かれているので歩きにくいと言えば歩きにくい。だからついこの踏み跡の方を歩いてしまうのかもしれない。だが一度踏み荒らされた場所が回復するのに長い時間がかかる。でもその前にまたこの上を踏んで歩く人がいるのだから回復はもはや絶望的だ。
南島散策 - 西側の尾根:
小さなピークを過ぎるとその先で道が二手に分かれる。直進すれば南島の一番有名なスポットに達し、右に進めば島の高台からの展望が楽しめる。
その有名スポットをこそ一番乗りしたかったのだが、あろうことか照一さんは右に行きましょうと言った。えー、と思ったがここではガイドの指示は絶対である。とても異を唱える雰囲気ではなかったので彼の後を追った。
我々が道を外れると我々の後ろに続いていた例の30人がぞろぞろと直進していった。あーあ。
小さなピークの左側はひときわ高い丘になっている。そのてっぺんの部分だけが石灰岩の岩盤が盛り上がって溶岩ドームのようになっていた。なだらかになっている部分はあそこから崩れ落ちたものなのだろう。
正面は大きく開けた谷間になっていてその中央部に池がある。陰陽池というそうだ。このところの異常気象に影響を受けているのかは不明だがその大きさは年々縮小しているらしい。
照一さんはずっと上裸。海人だね。
フクギの間をかき分けるように斜面を登っていく。恐らくこの島には毒を持った虫や動物はいないのだろう。だからこそ上裸でも突撃できるという訳だ。
フクギをかき分けて数十mほどの場所にあるピークに着いた。こちらは数人が立てばもう立錐の余地もないような小さな場所だった。と言うことは彼らはここには来れないはず(もしかしたら順番に登るかもしれないが)。そこも含めての時間調整をしてくれたのかもしれない。
そこから分岐地点を俯瞰できた。正面の丘の上にさっきの溶岩ドーム風のものがある。既に右奥にこの島で一番の見どころが見えてしまっているが、ここでは触れない。勿体ぶるよ。
白い砂浜の影に隠れて見えないが、例の団体さんたちはもう浜辺に着いたようだ。
向きを変えると鮫池が一望出来た。また新しいボートが到着して次の観光客が上陸するのが見えた。数分で我々も含めて40人ほどが上陸したことになる。あと60人、このペースで続々と上陸したら恐らく午前中には定員に達してしまうことだろう。と言ってもそこは業者間である程度オーバーしないように調整はされているのかもしれない。流石に出発したはいいが現地を目前にして上陸不可でした、なんてことになったら申し開きのしようがないだろう。
それはさておき、鮫池という名前はこの湾内にネムリブカという鮫が生息していることからつけられた名前だそうだ。鮫と言っても至って大人しい性格らしく人を襲うことはまずないそうだ。まぁ、ネムリブカなんて名前が付けられているのだからよっぽどおっとりしているのだろう。普段は割と容易に見られるらしいのだが今回我々は目撃することが出来なかった。
それはそうとここからだと湾の入口部分のこの上なく邪魔な位置に岩礁が居座っている様子がよく分かる。ボートの大きさと比較してみても、ここを通過することにかなりの困難を伴うであろうことはすぐに分かると思う。
沖縄の台風のうねりの影響でという話を聞いた時には、実際それほどまで荒れている訳でもないのにどういうことなのだろうと思っていたが、これだと僅かなうねりでも近寄りがたいものだと納得せざるをえない。
尾根の背後は父島の姿が見える。手前に横に長い岩礁が浮かんでいる。これまた何とも邪魔そうな場所にあるが、この岩礁は閂島(かんぬきじま)というヒネリのない名前が付けられている。そのままやがなー。
父島の海岸沿いに綺麗な白砂のビーチが見えた。あれがジニービーチだ。これまた父島きっての名勝地なのだが、ある意味南島以上に到達難易度の高い場所だと言われている。小港海岸から険しい山をいくつも越える遊歩道を2時間ほど歩かないとたどり着けないのだそうだ。
我々は明日出港までの間に行ってみようと思っているのだが果たして。
父島の南岸は恐ろしいまでの高さの絶壁がそそり立っている。軽く100mはあるのではないだろうか。
写真中央に見える周りと色が異なる岩は千尋岩(ちひろいわ)という。その形状からハートロックという別名が付いている。ハートに見えないこともないが、ちょっと苦しい。