九州めぐりと寝台特急はやぶさ乗り納めツアー【16】(2008/11/25)
寝台特急はやぶさ号 後半戦:
2008/11/25
寝台列車の旅というのは他では得られない特別な旅情に満ちている。座席ではなく寝台なので好きな時にゴロゴロできるし、過ぎゆく景色を見ながら遠くへ向かっている気分に浸るのもよい。だから寝台列車の旅は好きなのだが、自分の場合駅などで停車する都度目が覚めてしまうという致命的な欠点がある。
浅い眠りしか得られないので列車を降りた時にはそこはかとないけだるさと疲労感を感じていることが多い。だから眠くなるまで車窓を眺めていることにしている。今回もそうだろうと思って窓側のカーテンを少し開けて車窓を眺めていたのだが、今回は早々に眠気が襲って来た。流石に寝不足だな。
ただ、ここで眠ってしまっては勿体ないのでもう少し頑張ってみることにしたのだが、気が付いたら広島に居た。もう少し起きてるぞと更に外の景色を見ていたら次の瞬間岡山。。。だめだ、寝る。
カミさんから声をかけられて目覚めた時、列車は富士の辺りを走行中だった。お向かいの男性とおばちゃんも既に起床していた。おばちゃんはお向かいの男性の座席に腰掛けて男性と談笑している。
寝室内をざっと片付けて着替えてからカーテンを開けて皆さんに挨拶。カミさんも下段に降りてきて朝食を取った。その間おばちゃんはしきりに男性に話しかけている。男性は物静かな方でおばちゃんが繰り出すマシンガントークに、ややたじろぎながら返事をしていた。というかおばちゃんいつの間にそんなにフレンドリーになったのだろう?昨日は上品な淑女、と言う感じだったが今日はもうその辺のおばちゃんである。。。
彼女は男性の三脚に興味を持って、あなたカメラやってるの?などと質問攻めを繰り広げる。
三脚のことは実は自分も少し気になっていた。てっきり自分らのようにはやぶさの写真を撮るために乗車しているのだろうと思ったのだが、その割に門司や下関では寝台に籠ったままだったのでどういうことなのだろう、と思っていたのだった。
聞いてみるとその人は二眼カメラで撮影をするのが趣味で、そのカメラで阿蘇山の写真を撮影するために九州に来たのだそうだ。鉄道に興味はなくはやぶさに乗ったのも単なる移動手段としてだったらしい。
いいですね、なんて相槌を打ったらおばちゃんからあなたは結婚してるんだからあまり趣味にお金を使ったらだめよ、とたしなめられた。なんか余計なお世話感が凄い。これぞおばちゃん。
そんな話をしているうちに東京が近づいてきた。もう終点か。花が咲いた?座談会もほどなくお開きとなり各自荷物を片付ける。
そして東京駅到着。いつも寝台列車に乗ると降りる時に物足りなさを感じてしまう。でも今回は18時間も乗るのだからそれなりに堪能できるだろうと期待していたのだかと思っていたのだが、やはり物足りなさを感じてしまった。所詮十数時間程度の列車の旅ならそんなものか。それこそ大陸の列車みたいに3昼夜かけて移動するとかそのくらいの時間がないと堪能するには至らないのだろう。
列車や乗務員にとっては毎日の仕事なのだから今日が特別いつもと違うと言うこともないのだろうが、やはり自分らのような旅行者からすると特別に非日常な列車である。やはり長距離移動ご苦労様という気分になる。
EF66はザ・機関車というシルエットをしている。力強さを余すところなく表現したデザインはチビッ子にも人気。だが、ブルートレイン運用がなくなったら活躍の場が大幅に狭まる可能性がある。今後どうなるのか気になる所だ。
そして、客車の車体はこんなことになっている。あと少ししたら運用が終わるのでちゃんと修復することすら諦めてしまっている。そういうとこだぞ。
あとがき:
このところJRは経営効率重視の姿勢を強めている。寝台列車は昼間は使えないので効率が悪く、速度も遅いので他の速達列車の足かせになるなんて言ってもはやお荷物の扱いだ。一方の利用者からしても設備の割に料金が割高なので、よりリーズナブルな他の移動手段へ移ってしまうのも致し方ない所である。そういう状況下でブルートレインはどんどん窮地に追い込まれている。
だったらいらないじゃないというのがJRのスタンスなのだろうが、それではあまりに夢がないではないか。高速バスでの移動は疲れるし空を飛ぶのは怖い。でも新幹線はただ移動するための手段になってしまったので旅情がない。もちょっとマシな列車だったら寝台で行きたいんだけどなーというニーズは案外根強いのではないだろうか。
サンライズ号のように快適な設備を備えて更に格安に移動できるゴロ寝部屋を設けた列車は未だに人気が高い。こういう車両をもっと投入してビジネスホテル(かせめてカプセルホテル)と張り合えるくらいの価格帯で提供できないものだろうかと思わずにはいられない。
それはさておき、自分はこの足でそのまま出勤である。有休にしたかったが職場の雰囲気がそれを許さなかった。仕方ないのでシフトで11時出社にしてもらって有休をとることは諦めた。が、同じ職場のカミさんはしっかり有給取得である。部署が違うとこうも違うのか。。。
荷物はカミさんに任せて、重い足取りで会社へ赴いたのだった。
(おわり)