四国・山陰初日の出【3】(2008/12/31)

見残し海岸:


岸壁から海岸に沿って遊歩道が伸びている。ここを歩いて行くと見残し海岸に行くことができるので我々も進んでみることに。遊歩道と名前がついているが自然に出来た波蝕棚の上を歩いて行くような感じである。一応歩きづらそうな箇所には人が歩ける程度に足場が固められていて歩くのに危険は感じはあまりないが、足腰の程度は選ぶ道である。

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ご覧のとおり手すりなども整備されていないので、不注意があれば海に転落する可能性もある。波が高い日などはとても歩けないだろう。
今日は幸い気候が安定していて波も穏やかなので、自分らが歩くのに危険を感じる場所はなかった。

見残し海岸はこの海岸に沿って奇岩が連なっている。周遊コースにはなっていないので同じ道の行き帰りとなるが、概ね1時間程度の散策コースだそうだ。

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こんな岩場が続く海岸だから、そりゃもうそこかしこで釣り人が糸を垂らしている。自分も釣り道具を持参していたらちょっとやってみたくなるような場所だった。

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まず最初は波の花道と名付けられた場所。海岸スレスレに設けられた細い通路を抜けるスリリングな花道だ。少しでも波が荒くなれば容易に波に洗われそうだ。

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こちらは特に名前が付いた場所ではなかったが、山の上から一筋に削れている岩だ。いわゆる雨裂と言うやつだと思う。下から見上げると凄い迫力だ。

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別の場所にはこんな岩もあった。ここは小さな岬のような場所で、通路は写真左側からここを回り込んで右側の湾状になっている方向へと延びている。湾側の方は恐らく浸食が早くどんどん波に削られて陸地が後退したが、この岩壁のみ削り残された感じになっている。ご覧のとおり薄く不安定な角度で立ち上がっていて、今にも倒壊してしまいそうな微妙なバランスで成立しているのが面白い。

地質に詳しい人なら写真を見ただけでピンとくるかもしれないが、この岩の正体は砂岩である。砂岩という名前だけあって波に侵食されやすい。その結果こうしたおおよそ岩らしくない造形を見せている。

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こちらはこけし岩と呼ばれているそうだ。柔らかい砂岩の中に硬い火成岩などが貫入した場所で、砂岩だけが浸食された結果こうしたものが残る。これの大規模なものが橋杭岩である。

こけしと言われればそんな風に見えなくもないが、自分が見た時に最初に抱いた印象はミイラであった。
中央の丸い岩の左側に1体、右側にひざを折った状態で1体の2体のミイラが寄り添っているように見える。絶妙な生々しさを感じて背筋がゾッとした。

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こちらは人魚御殿。表面と内部で岩の種類が異なるのか色合いが違っている。何かしらのきっかけで表面に穴が開き、中の砂岩がどんどん削られて窓のような形に発達した穴になったようだ。人魚が住む家と言われたら、確かにこんなものなのかもしれないなと思った。

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この写真は何を写した物か分かりづらいが太鼓バエという見どころである。その名のとおりこの岩場に波が打ち付けると太鼓のような音が聞こえるそうだ。今日は波が穏やかなせいか打ち付ける力が弱く、太鼓のような音を聞くことはなかったが、波が当たるとくだけで盛大な波しぶきが上がる。ちょっとだけ東映映画の冒頭のアイキャッチを思い出した。

その様子をカメラに収めたかったのだが、タイミングが合わせづらくそれっぽい写真は撮れなかった。

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こちらは蜂の巣城と名付けられている。小さな穴が無数に空いていて確かに蜂の巣のようにも見える。
左下に落ちている岩のようなものがこの砂岩内にあって、それが露出した時に波によって岩の周囲が徐々に削られる。やがて穴が大きくなるとその岩が落下してこのような穴が残る。

いわゆるポットホール的なものと同じようなものなのではないかと思うのだが、ポットホールは一般に水平面に丸くくぼんだ穴を指したものだ。常時水流に洗われることでそういう穴が出来上がる訳だが、ここは垂直面となっている。当然常時水に洗われることはないはずなので同じ機序で形成されたものなのかと言われるとなんとも言いがたい。

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先端の辺りを拡大して撮影してみた。ポットホールではないとしたら元々岩の中がこういう空洞だらけで、それが露出しているだけなのかも知れない。ただいずれにしても自然の造形の妙である。

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そして細かい穴と言えばこちらも負けていない。見残し海岸の奇岩の中でも主役級の見どころがこのチェーン岩である。カッコ書きで鎖岩と補足されているがチェーン=鎖というのは大抵の人が知っていると思う。

これまたどうしたらこのような規則正しい列のようになるのだろうか。

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どこで写したものか忘れたが、こんな感じでポコポコと穴が開いている岩が至る所にある。
下半分の岩が何となくドクロのようにも見える。

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こちらは渦巻き岩。名前のとおり渦巻いたように削られた岩だ。砂岩が層状に重なっているところが削られてバームクーヘンのような模様が出来上がっている。

ここに限らず太平洋沿岸では地層が縦方向に走っている場所が沢山ある。海底下にあった地盤が太平洋プレートの押し込みによって持ち上げられ地層が90度起き上がったようになってしまうせいらしい。

こうした砂岩は見るからに脆そうだが実際脆い。手で少し触ってみると簡単にさらさらと剥がれて来る。こんなに脆いからこそこうした複雑な造形が出来るのだろう。触ったくらいで剥がれるような岩だから侵食の速さは他とは比べものにならないくらい早そうだ。そう考えると今こうして見ている岩々もそう遠くない未来には全く別の形になっているのかも知れない。

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人魚御殿のような場所がもう一つあった。こちらは厄抜け穴と呼ばれていて中がトンネル状になっている。厄抜け出来るのならということでくぐってみた。

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最後に見返りの門と名付けられた場所。いわゆる弁慶の七戻り的な物件だ。いつ崩れて来るかと思うとヒヤヒヤする。

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ポコポコと穴が空いている様をずっと見ていると、肺の中の拡大図を見ているような気分になりキモっ!てなる。。。

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特に名付けられたものではないが、ヘラでこねられた後のような形状の砂岩。

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そしてこちらも名前はないが、ポットホールのような物を見つけた。こうしてみるとやっぱりポットホールなのだろうか。
ちなみにこちらの岩は実は上を見上げて撮影している。即ちこの岩の直径よりも穴が大きくなってしまったらこの岩は落下してくるのだ。そう考えると少し怖い。こんなのに頭を直撃されたら大けがでは済まないかもしれない。

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そしてこちらが見残し海岸の本当のラスト。これもまた特段の名称はないが模様がヒョウ柄のように見えたので撮影したものだ。

という訳でひとおおり見学して折り返しで戻って来た。
チケット売り場でパンフを貰っていたのでそれを見ながら見学してきたが、帰宅後にネットで調べてみたらまだ他にも色々あるらしい。そういった意味では自分らも「見残し」である。弘法大師様をうっかりさんだねなんて言えない。

 

船着き場に戻ると船が既に停泊していた。この船は20分に1本出ているらしいので丁度1時間だったのだろう。船に乗り込んで待っているとほどなく出港。

行きの船で船底のグラスをのぞき込んで気分が悪くなったんので、戻りの便ではデッキで過ごすことに。
ただ、そのデッキが海面に近い所にあったので盛大に水しぶきを浴びる羽目になった。。。

Posted by gen_charly