四国・山陰初日の出【6】(2009/01/01)
2009年の初日の出:
昨晩は何年振りかに就寝中に年越しを迎えた。夜半過ぎになって風が吹いて車を揺さぶり始めてきた。更に雨が落ちる音も聞こえてきて何度も目を覚ます羽目になった。
雨が降っているということは流石に初日の出は見られないだろうな、と思いつつ半ば無理やり眠っていたら今度は周りがざわざわとする音で目が覚めた。その時には空は明るくなっていた。時計を見ると6時少し前、そろそろかと思いつつ起き上がってみると、
雪だ。就寝中若干寒いなと思ったが、そういうことか。。。って、ここ高知のほぼ最南端だぞ。そんなところで雪が降るのか?
今年の年末年始の天気は全国的に荒れ模様だという天気予報は耳にしていたが、まさか雪が降ってくるとは。
まぁ、見た感じ大した雪ではなさそうなので、恐らく程なく溶けてなくなってしまうだろう。そうならなかったとしてもスタッドレスは一応履いているので心配いらないと思うが、、、あまり積もらないで欲しい所である。
それはさておき、雪が降ってたら初日の出どころじゃない。だったらもう一頻り惰眠を貪ろうと写真だけ撮って再び布団に入った。
それから暫くしてカミさんの太陽が出てきたよ!という声で起こされた。カミさんの言うとおり窓に差し込む陽光を感じる。水平線から昇る太陽じゃなくても初日の出は初日の出。じゃあちょっと外に出てみるかと着替えて車を降りた。
雪は上がって辺りの地面はしっとりと濡れそぼっていた。雪が止んだばかりなので気温もきりりと寒い。冬はつとめて、の一節を思い出した。
車を降りたら駐車場の生け垣をニワトリが散歩していた。君たち寒くないの?というか、ニワトリが放し飼いにされている道の駅なんて初めてだ。まさか野生じゃないよね?
車に差し込んでいた太陽は、雲間に見えつ隠れつしながらゆっくりと登っていた。これが2009年の初日の出となった。
今年もよろしくお願いします。
海岸に沿って視線を動かすと、川の向こうに砂浜が広がっていて、その上にうっすらと雪が積もってスフレのようになっていた。
海は水温の差で海霧が発生していて、なんだか合成写真のような幻想的な光景だった。
とりあえず寒い。防寒して外に出ているがそれでもあっという間に体温が奪われる。ここ本当に高知か・・・はさっき言ったか。
ずっと外に出ていると体が震えてきたので、ほどほどで車に戻ってエアコンを全開にした。
それから、カミさんが朝食の準備を始めた。昨日残して置いたスープと具材に更に野菜と餅を足してお雑煮である。正月と言えばお雑煮、異論は認める。
暫くしてお雑煮が出来上がった。昨晩の具材からもダシが出ているので、複雑で風味豊かなお雑煮が出来た。
沈下橋:
さて、食事も済ませて本日の行動開始である。昨日キャリーオーバーさせてしまった四万十川の川下りをしに向かう。
川下りをやっている店は中村の市街から四万十川に沿って少し遡った所にある。四万十川と言えば日本最後の清流として有名である。そのせいか分からないが周囲はあまり開発されていない感じで道も狭い所が続く。その割に交通量はそこそこあってそのたびにすれ違いで難儀させられた。
そんな道を暫く走っていくと佐田の沈下橋と書かれた看板が目に留まった。そう言えばそんなものもあったなと思ってちょっと寄り道。
こちらが佐田の沈下橋である。沈下橋というのはその名のとおり川に沈む橋ということになる。と言っても橋が上下する訳ではない。上下するのは川の水位だ。
四万十川は古くから暴れ川として恐れられてきた。大水が出ると川にかけられた橋によって流下物がせき止められ、やがて橋が壊れると鉄砲水となって下流地域を襲う。とはいえこれだけの大河なので橋をかけなければ不便極まりない。そこで編み出されたのがこの沈下橋である。ご覧のとおり橋には欄干がない。また橋げたも隙間が多く華奢なものになっている。なので仮設橋っぽいがこれで完成形である。
こうしておくと川の水量が増えた時は橋そのものが水没するので、流下物を妨げることなく下流に流すことが出来るという訳だ。
看板が出るほどに四万十川の沈下橋は高い知名度を誇るが、かつてデレーケから日本の川は滝と評されたとおり、ほとんどの日本の河川は傾斜が強い。なので暴れ川とされる川も全国各地にあり、ここ四万十以外にも同じような沈下橋が点在している。
我が故郷の埼玉県坂戸市にもしれっと島田橋という沈下橋があり、かつてキリンジも島田橋をモチーフにした歌を歌っていてまぁまぁ有名な物件だったりする。地元にいたころに何度か通ったことがあるので自分にとって佐田の沈下橋に目新しさを感じた訳ではないが、やはり四万十川の沈下橋のほうが何十倍も知名度が高い。
なにより日本最後の清流との組み合わせは日本の原風景であり、多くの写真家や画家の題材となっている。
橋の方まで上がってきたが、こうしてみるとなかなかスリリングな橋である。この道幅ではすれ違いもままならないし鬼バックも恐怖だ。もちろんそこは橋に進入する前によく確認して通過するのが暗黙のルールとなっているのだろうが、すれ違いが無くてもハンドル操作を少し誤っただけで容易に転落できる。
実際、自転車で通過中に転倒してそのまま落下してしまうような事故もまれに起きているらしい。だが、利便性と安全性を両立させようとしたらやむを得ない選択なのであろう。
四万十の碧:
再び車に戻り、もう一頻り上流の方へ進んでいくとようやく目的地に到着。
今回訪れたのは四万十の碧という屋形船の店である。年末年始も営業しているという店はここくらいしかなかった。だがこの悪天候なので客の姿が見えない。暖簾は出ているので営業中とは思うが、他の客がいないから船が出せないなんてことはあるかもしれない。
暖簾をくぐるとちゃんと受付してもらうことが出来た。次の便がもう少ししたら出るのでそれに乗れます、とのことだった。出港の時間まで事務所の待合スペースでストーブに当たりながら待った。
10分ほどで出港を知らせるアナウンスがあり、船のところまで移動するように言われた。よしと思って事務所を出て船が係留されている所へ歩き始めたら、丁度入れ違いで店内に向かっていた運転手っぽいおじさんから店の傘を差していくよう促された。
せっかくのご好意なので一旦店に戻って傘を借りて再び船着き場へ向かったが、船着き場までは1分もかからなかった。雨は小雨だったので戻るくらいならそのまま行っても同じだったなと思ったが、好意は有難くいただくものである。
船着き場には何艘かの船が係留されていた。写真の船は座卓が有ってその上にお茶請けが並べられている。ということは間もなく団体さんがやってきて一緒の船で川下りをするということだろうか。
折角ひと気の少ない川下りが楽しめそうだ、と期待していたのでちょっと落胆を禁じ得なかった。