四国・山陰初日の出【7】(2009/01/01)

雪の四万十川川下り:


その船に乗るであろう団体さんの姿はまだどこにも見えない。ということはとりあえず団体さんが来るまでここで待機なのかなと思った。だったら待合室の方で待たせてくれたら良いのに。寒いし。。。なんて思っていたら、後ろから歩いてきた船頭から、お客様の乗る船はあちらですと別の船を指された。

20090101_105923

あ、そうなんですか、と指示される方へ歩いていくと、もう1艘別の屋形船が停泊していた。こちらは先ほどの船よりひと回り小さい船で、テーブルも集会場とか置いてありそうな簡易式の長テーブルが並べられただけのシンプル仕様になっていた。そしてお茶請けも出されていない。

そうかお茶請けはないのか。。。それはそれでそこはかとない残念さを感じたが、どうやらこの船は我々の貸し切りで運航されるらしい。それならお茶請けナシでいいです。

20090101_110257

船内は畳敷きなので船室の入口前で靴を脱いでから中に入る。室内はガラス張りになっているので外の寒風は入り込んでこないが、暖房が付いていないので深々とした寒さで満たされており、腰を下ろしたら尻が冷たい。

20090101_110105

でも風が凌げるだけマシか。ご覧のとおり船頭は室外で操船だ。正月早々我々のために寒い思いをさせてしまうことに申し訳なさを感じた。

 

我々が乗り込んだらほどなく出港。貸し切りなのを良いことにあちこち移動しながら景色を眺めたり撮影したり。良い景色が見えたらすかさずそちらの方へ移動できるのが嬉しい。
船頭は船を操りながらマイク越しに流域の見どころなどをガイドしてくれる。が、こちらにはマイクがないので会話は出来ない。何かリアクションしないと話を聞いていない人みたいに思われそうだったので積極的に相づちを打った。

20090101_110632

暫く進むと沈下橋が見えてきた。この橋は三里の沈下橋といい、先ほど見学してきた佐田の沈下橋のさらに上流にかかる橋である。
丁度橋を渡っている車が見えるが、高欄がないのでタイヤまで丸見えだ。丁度真横から写したので、ずっと見ていると一本橋を渡っているようにも見える。落ちるなよと無性に心配になる。まぁ、ハンドルをまっすぐ持っていれば落ちることはないが。

 

この辺りは流れがゆったりとしていて湖面のようだ。船頭の説明によると水深が6~7mほどあるらしい。とはいっても川なので川岸へ近づけば水深は浅くなる。船の通行中にそうした浅くなっている箇所も何カ所か通過したが、そういう所では水の底まで見通せるほど水が透き通っていて、川魚が優雅に泳ぎ回っている姿も見られた。こんな曇り空でそれなんだから晴れていたらさぞ透明度の高い清流が見られたことだろう。日本最後の清流と言われるだけはある。

この風景を見ていたら、昔TVで流れていたいいちこという焼酎のCMが連想された。それと同時にそのCMのBGMとなっていたビリーバンバンの「とおりすぎる、あーめー」というフレーズが頭の中でリフレインし始めた。だが記憶を辿る限り、こうした寒々しい風景を取り上げたCMではなかったような気もする。なんでそういう連想になったのかは自分でも分からない。

20090101_110710

橋の下はこんな風になっている。本当に板一枚、極力川の流れを妨げないように全ての面が丸く取られている。橋というよりは渡り廊下か何かの屋根の様だ。

20090101_110811

空を見ると雲が盛んに流れている。その流れに合わせて雨が降り出したり止んだり、雪に変わったりを繰り返している。向こうの山のてっぺんは白く雪化粧をしていて、粉砂糖をまぶしたみたいになっている。

しかし、しつこいようだが南国として名高い高知県の南端部である。雪をまとった四万十川はきっと珍しいのだろうと思ってしきりにシャッターを切っていたら、船頭が自分の気持ちを察したのか、今日はあいにくの天気ですね。高知はあまり雪が降らなさそうなイメージがあると思いますがこの辺りでは割と頻繁に雪が降りますと教えてくれた。へぇ、全く意外だった。

20090101_111935

雨のせいで水滴が窓に着き始めて、外の景色が見づらくなって来てしまった。貸し切りなのをいいことに少し窓を開けてその隙間からカメラを構えた。

20090101_112258

さらに進んでいくと今度は佐田の沈下橋が見えてきた。背後に見える山々はなかなか険しい。いかにも山奥っぽい感じがする場所だが、この辺りで河口からわずか8キロほどということだ。四万十川は全長200キロからの大河である。そのうちの8キロだから下流も下流だ。

それでいてこの山の険しさ。四万十川は河口付近までこうした山々の間を縫うように流れ下っている。だから清流が維持できるのかもしれない。

 

船頭からまたアナウンスがあった。曰く、この先は水深が浅くなって船が進めないのでここで折り返すとのこと。河口に近い方が水深が浅くなるというもまた意外だ。

ゆっくりとUターンして今度は上流方向へ。

20090101_112417

Uターンしたあと振り返りざまにもう一度撮影してみたら、雲が地表近くまで降りてきていよいよ水墨画のような景色になってしまった。

20090101_113211

川岸に船が数隻、無造作に係留されていた。この船は川で漁をする漁師の物だそうだ。この川では川魚はもちろんのこと、エビなども獲れるそうだ。かつては全国各地で見られた川漁師だが水質の変化や護岸工事、ダムの建設などによって漁が出来なくなり、今でも続けている人はだいぶ珍しくなったらしい。

 

それからガイドが川岸に生えた木の上の方を指さした。その木にはビニール袋が引っかかっていた。前回川が増水した時に引っかかったものだそうだ。その位置は水面から優に3mはあり、そこまで水かさが上がるということだ。

へぇ、なんて関心しながら話を聞いていると、ふと隣にいたカミさんの上半身が前方にぐらついた。視線を送ると案の定船を漕いでいた、と言ってもこの船ではない。船漕ぎのイメージトレーニング中、というか要はウトウトしていた。

流石に船頭の話を睡眠学習で聞くのは失礼だと思い、体の位置を変えるふりをして音を立ててさりげなく起こしたが、数秒経つとまた頭が下に下がってしまう。何度かそれを繰り返したがやがてその物音にも反応しなくなったので、もう放置しておくことにした。

20090101_114550

だが、それから数分ほどで船着き場に着いて強制的に起床となった。
船頭にお礼を言って下船。その後傘を返しに事務所に立ち寄ったら道に横付けされたバスから団体客がぞろぞろと降りてきた。この人たちはお茶請け付きの船で川下りを楽しむのだろう。

ただこの天気である。この天気を風流と感じながら川下りを楽しめる人はあの中にどのくらいいるのだろうか。殆どの人はがっかりしているのではないだろうか。

20090101_115056

道向かいの斜面に白い線と日付が書き込まれていることに気が付いた。いうまでもなく川が増水した際に達した水位を記録したものだ。バスと比較するとその高さが良く分かる。書かれている日付から2年前と4年前の2度洪水に見舞われたようだ。もちろん店も水没したことだろう。だから建て替えたばかりで真新しいということかどうかは分からないが、この立地だと近い将来にまた同じ目に遭いそうな気もする。その点どのように折り合いをつけているのだろうか。

 

今回の旅のマストである川下り体験が無事果たせたので次の見どころへ移動することにした。今日は元日なので初詣を済ませようと思い事務所のスタッフにこの辺りの人はどこへ初詣に行くのですか?と聞いたら一條神社を紹介してくれた。

と、その前にぼちぼち昼時なので昼食を先に済ませたい。ガイドをめくるとこの辺りにしゃえんじりという川魚の料理をふるまう店があるらしい。折角だからアユの塩焼きでも食べるか。ということでナビに住所をセットして案内に従って進み始めた。

案内に従って進むと、ほどなく広い国道に合流した。あれ?広い道あるじゃん。そっちを案内してくれたらすれ違いに難儀することもなかったのに。。。

少し走って店の前までやってきたが開いていなかった。まぁ元日だもんな。

Posted by gen_charly