四国・山陰初日の出【15】(2009/01/03)

大根島:


今回の旅もいよいよ佳境である。今晩には東京への帰還を開始するので日没までが散策に使える時間である。残りの時間でどこへ行こうか、としばし思案しているうちに境港にある鬼太郎ロードを見に行ってみたくなった。境港へ行くなら中海に浮かぶ大根島を訪ねてみたい、と連想ゲーム式にプランがまとまり、まず最初に大根島へ向かうことに。

雲州平田駅から中海へは宍道湖のほとりに沿って通じる国道431号を進んでいく。

20090103_140803

どんよりとした曇り空が続き、宍道湖も全体的に平板な印象になってしまっている。

20090103_143829

対岸には雲に半分隠れた鳥取の名峰大山(だいせん)の姿が見えた。雪や雨が降るでもなくただどんよりとしているだけ、というのがどうにもスッキリしない。冬の日本海側はそんなものなのかもしれないが。

この宍道湖の東端に位置するのが島根県の県庁所在地である松江である。市街を抜けて更に進んでいくと今度は中海に沿う道となる。この中海に沿った道を暫く走っていくと湖の中を割って一直線に伸びる堤防が見えてくる。

20090103_144046

堤防の上は道になっていて車で走ることができる。

中海を地図で見ると中央やや北側に島が2つある。大きい方が大根島、小さい方が江島となる。で、その両島から腕を伸ばすかのように堤防が続き、湖の北側3分の1ほどが囲われている。

この堤防はもちろん大根島や江島への陸路でのアクセスを確保することを目的に作られたものではない。昭和の初期に計画された中海干拓事業のための潮受け堤防として建設されたものである。

この事業は農地拡大を目的としたものであり、計画では湖の北部(本庄地区)を干拓しそこに広大な農地を造成する予定だった。また、同時に江島と弓ヶ浜半島の間に水門を作ってそれより内側の水域と宍道湖を淡水化することで、この干拓農地への水源とするという計画も進められた。ところが地元漁業関係者による反対運動が巻き起こり事業は頓挫。更に国の農業政策が減反へと舵を切ったことも重なって干拓事業は中止となり、結局この堤防と水門が建設されたのみで事業は終了となった。

 

で、その堤防道路を走っていくと大根島に上陸となる。島旅の59番目の島となった。「おおねじま」と読むのかと思ったら「だいこんじま」と読むそうだ。しかしだいこん島である。そう名乗るからにはさぞかし良質な大根が収穫できるのだろう、と思ったら島の名産品は高麗人参だそうだ。なんでやねん!

元々大根とのつながりはなく、「たこ」が訛ったものなんだそうだ。ほんとかぁ?

 

大根島の溶岩トンネル - 幽鬼洞:


それはさておき大根島である。と言っても湖に浮かぶ島に橋を渡って上陸できるのが面白そうだからという理由だけで訪問したので、当初はそのまま素通りするつもりだった。でも折角やってきたので見所があるならちょっと見に行ってもいいかなと思い、手元のガイドブックをめくってみた。確か大根島のページがあったよなと思いつつページをめくると、この島の名所として由志園という庭園が紹介されていた。庭園か。流石にあまり食指が伸びない。

他の見どころを探すと大根島の溶岩隧道というのに目が留まった。溶岩?この島は火山なのか?目の前に広がる島のシルエットはほぼ平坦で山らしきものは全く見当たらない。なのに溶岩の隧道があるという。なんだか無性に興味が沸いてきたのでちょっと見に行ってみることにした。

 

だが、ガイドマップの地図が大雑把で場所が特定できない。この辺だろうなという場所までやって来たが、周囲は閑静な住宅地が広がり道も集落の小径のような曲がりくねった道が続いている。そのうえ案内標識もないのでとても洞窟のありそうな場所という感じがしない。

暫く行ったり来たりしているうちに奥の方に看板のようなものが見えたので、そちらの路地に入ってみたら、

20090103_145307

ようやく駐車場と書かれた看板を見つけた。ガイドブックに載るような観光地と言っても知名度がなければこんなものか。
駐車場から少し集落の路地を歩いていくと、どこにでもありそうな住宅地内の公園みたいな一角に地中へつながる穴が口を開けていた。

20090103_145218

ん!?これ?
住宅地の中に突如、穴が口を開けている。その周囲は石垣で巻立てられているがだいぶ荒れている。しかも穴の周囲がフェンスで囲われているので一切近づくことが出来ない。そもそも火山の姿も見えないし洞窟っぽさもない。だから流石にここは違うと思った。戦時中の防空壕とか暗渠の廃墟の類ではなかろうか。

ところが傍らに解説板があったのでそれを読んでみたら、これこそがその溶岩隧道であると明記されていた。あのー、理解が追い付かないのですが。。。

 

その解説板によるとこの穴は幽鬼洞(ゆうきどう)と言って、国の特別天然記念物に指定されているものだそうだ。そうなの?
それにしてはこの隧道を管理しているであろう事務所は見当たらず、そこにあるのは柵で囲われた穴だけである。つまり、とにかくここが溶岩洞窟なんだから外から眺めて後は想像しなさいと言うことだろうか。まぁ貴重には貴重だけど内部を公開するような物でもないのかもしれない。

解説板をよく見ると、文末に「見学をご希望の方はxxxxまでご連絡ください。」と書かれていた。なるほど、連絡したら人が来て開けてくれるということか。先に言ってよ(言ってる)。ただ、その連絡先は個人名で書かれ、連絡先も携帯電話の番号である。ということはここは個人の所有物なのか。いずれにしても正月まっただ中にコールしたら流石に迷惑だろう。それ以前に出ないと思う。

別にさほど期待値が高い訪問先という訳でもなかったので写真を撮って次に行こうとしたら、カミさんから、休みって書いてないんだから電話してみなよ。ダメならダメでしょうがないんだから、と促された。相変わらず逞しいな。でもまぁ万が一見学させてくれるのならそれはそれでラッキーなのだから、カミさんが言うことも一理ありということで記載された番号に電話をかけてみた。すると数コールで相手が電話に出た。看板見たのですが今日は見学できますか?と聞くと、5分くらいで向かうのでちょっとそこで待っててくださいと回答があった。かけてみるものだなぁ。

 

それから5分ほど待っていたら向こうから走ってきた軽自動車が我々の前で停まり、窓から髭を蓄えたおじさんが顔を出した。正月休みなのにわざわざすみません、とこちらが口を開くよりも前に、

「今、この洞窟は中が水没してて見られないんです。近くにもうひとつトンネルがあって、そちらを案内するのでちょっとついて来てください。」

と言われた。だからこんな放置状態になっているのか。急いで車に戻っておじさんの車の後についた。

Posted by gen_charly