— プロローグ —
例年の恒例行事となっている、夏休みの離島めぐり。
今年はついに長年の憧れの地、小笠原の父島・母島を巡ってきました。
小笠原諸島・・・・・・東京のはるか南、グアムやサイパンとの大体中間、東京から1000kmの海上に点在するおよそ30からなる島々。
古くは捕鯨船が水や食料を得るための寄港地として、欧米人の間では知られていたそうですが、定住者はありませんでした。
1800年代になって欧米人とハワイの人が定住し始め、それから明治の頃に日本人が小笠原を領有する目的で入植するようになります。
その後正式に日本領土と認められたため、先住民の欧米の人たちは日本に帰化しました。
つまり小笠原は日本で唯一先住民が欧米人という場所なのです。
そのため、帰化した先住民の子孫は、今でも「セーボレー」さんとか、「ジョンソン」さんとかカタカナの名前をもっています。
現在一般人が生活をしている島は父島と母島のみで、両島合わせておよそ2500人だそうです。
その他に、一般でない人、つまり自衛隊や気象庁の関係者のみが滞在する島として、戦争の激戦地として、そして現在では映画にもなってつとに有名な硫黄島と、 父島からはるか東にぽつんと存在する南鳥島の2島があります。
それ以外の島々はかつて定住者のあった島もありますが、現在は全て無人島になっています。
原付が小笠原の存在を知ったのは小学生の頃。
授業で西之島新島(にしのしましんとう)について取り上げられた時でした。
西之島新島は1973年に西之島の沖合で海底火山が噴火して誕生した、新しい島です。
東京の南にそんなワイルドな島があるということを知って、親にねだって東京都の地図を買ってもらい、その地形を眺めては、「実際に見たらどういう感じなんだろう?」とか「そこって人が住めるのかな?」 とか妄想を膨らましたものでした。
その地図には伊豆諸島や小笠原諸島の島々の地図も書かれていて、本土から遠く離れた島々で暮らしている日本人がいる事に衝撃を受けると同時に、そこではどんな生活が営まれているのだろうかと興味を持ったのでした。
小笠原への交通手段は東京の竹芝桟橋からだいたい6日に一度出港する船便のみ(母島へは直行便はなく、父島で乗り換え)しかなく、日本国内にありながら、ある意味非常にハードコアな島でもあります。
大人になってからも一度は訪れてみたいという気持ちを持ち続けてはいたのですが、乗り物酔いが激しい原付のこと、行きの船で間違いなくグダグダになるのは目に見えているし、他の友達とはスケジュールが合わないし、一人で行っても楽しめなさそうだったしで、ずっと二の足を踏んでいたのでした。
小笠原諸島は亜熱帯に属し、年間を通じて気温は温暖(なにせ元旦が海開き!)な常夏の島で、付近の海上にはクジラやイルカが悠然と泳ぎ回っています。
また、島の誕生以来、他の土地と一度も地続きになった事がないため、独自の進化を遂げた生態系を持っており、 「東洋のガラパゴス」とも呼ばれています。
そのうえ、太平洋戦争の遺跡もいたるところに存在し、観光資源に恵まれた島なのですが、沖縄や奄美などに比べて知名度はかなり低いように思います。
その原因はひとえに両島へのアクセスの悪さに尽きるのではないかと思われます。
例えば沖縄なら羽田から飛行機で片道2時間、行こうと思えば日帰りさえ出来るのに対して、小笠原は片道およそ25時間。
その上、前述のとおり交通手段は6日に一度の船便のみなので最低でも6日の日程を組まなければいけないという事では、とても気軽に行ける島とは言えません。
なにしろ、国内で片道25時間かかる場所は他になく、"日本で一番遠い村“と呼ばれるのもうなづけます。
もっとも、それがゆえに今日に至るまで手付かずに近い自然を残す事ができたと言えなくもないわけですが。
とは言っても島の人にとって丸一日かけないと他の場所に出れないという生活が不便なのは勿論のこと、折角の貴重な観光資源を生かすためにも空路の開設が熱望されているそうです。
しかし、空港を設置すると上述の大変貴重な生態系を壊してしまうことになりかねず、更には島自体の規模が小さく、訪れてくる観光客の受入れキャパの問題もあり、悩ましい問題となっているようです。
実は、数年前に東京~父島を18時間で結ぶ高速船TSL(テクノスーパーライナー)が就航する予定があったのですが、現在の航路と比べて燃費がかさむ上、近年の原油価格の高騰によって国交省、東京都が共に支援を撤退してしまい、一企業には支援なしではとても運用できないということで中断したままになっているのですが、既に建造された船は現在も製造元に繋留されたままになっていて、このまま受け取らないと廃船になってしまう可能性があるとのこと。
折角作ったものだし、既に八丈島へは一日4便の空路が設定されているので、 例えば沖縄の石垣島のように八丈島をハブにしてそこからTSLを運行するとか、 そういうアイディアは考えられないものなのでしょうか。。。
それなら、毎日運行とまでは行かないにしても今の半分、3日に一度くらいで運行出来そうですし、東京から八丈島間の燃費は掛からないので費用の補償も何とかなりそうな気がします。
その上、父島周辺に空港を作らなくとも、現在よりも時間は短縮できるでしょうし、場合によっては、ヘリポートだけ整備して、東京愛らんどシャトルのようなヘリを飛ばす方法も考えられそうな気もします。
もっとも、これくらいの事は既に他の誰かが絶対考えていそうだし、実現していない所を見ると、なにかと問題が多いということなのでしょう。。 。
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当初8月頃に休みを取って何処か行こうという話から、小笠原か屋久島が候補に挙がったのですが、カミさんが屋久島を強く押していたこともあり、一旦は屋久島行きで決めたのですが、公私共に急に多忙になり、スケジュール調整が難航したことから、一旦計画そのものが流れてしまいました。
ところが、8月に入った辺りで身辺が少し落ち着いてきたので、改めて計画を立てることにしたのですが、色々考えると屋久島は3、4日程度で回ることが出来るので、行く機会は今後もまだ有りそうだと思ったことや、もし近い将来小笠原に空路が開設されれば、今の手付かずな小笠原を見ることが出来なくなってしまいそうだと思ったことをカミさんに話したところ、次第に興味を持ってくれて、小笠原行きが決まったのでした。
さて、小笠原へいく場合、一般的なスケジュールは、
1日目 ・・・ 竹芝桟橋出港
2日目 ・・・ 父島二見港入港
3日目 ・・・ 自由行動
4日目 ・・・ 自由行動
5日目 ・・・ 父島二見港出港
6日目 ・・・ 竹芝桟橋入港
というパターンになります。
船は基本的におがさわら丸(以下おが丸)一隻で運用されていて、東京を出港した船は翌日に父島に着き、その後父島で3泊して、また一日かけて東京に戻るというサイクルで運用されているので、一度東京を出発すると再び東京に帰ってくるのに6日間必要になります。
時間のある人は帰りの便に乗らず一つ次の便まで滞在する、あるいはそのまま居付くケースもあるそうです。
ちなみに小笠原へのアクセス手段について厳密に言うと、貨物船の共勝丸が東京父島間を不定期に運行しており、この船も数名程度乗船できるので、この便を使う方法があるのですが、所要時間はおが丸の倍の50時間近くもかかるうえ、小さい船なので揺れが激しく、時間があり余っている人で、かつ、船に乗るのが好きな人でないと厳しいそうです。
それでも、おが丸で言う所の特二等と同じ2段ベットの個室が使えるうえ、朝昼晩の3食付きにも関わらず、料金はおが丸より安いということで、 わざわざこの船を選ぶ隠れファンもいるそうです。
ところで、おが丸の一回の運行を現地では「1航海」と呼ぶそうで、殆どの生活物資や観光客の動きがこの船のスケジュールで動くので、内地で一般的な一週間の単位より1航海のスケジュールの方が優先されているそうです。
島の店の多くがスケジュールをこの航海単位で組んでいるので、船が出港すると平日でも島内の店はお休みになったりするそうです。
それなら、船の滞在をもう一日伸ばして7日間で1航海にすればずれずに済むのにな、と思ったりもするのですが、それはまた別の話。
一生に一度のことかもしれないので、できる事なら2航海使って充分に見て回りたいところですが、そこは所詮しがないサラリーマン、2航海なんかした暁には自分の席が無くなっていること請け合いなので、必然的に1航海で帰ってくることになるわけですが、上述の通り行き帰りでそれぞれ一日ずつ時間を取られるので、6日間もの日程を組んでいるにも関わらず、観光に使える時間は4日(3泊4日)しかありません。
それでも父島の他に母島と南島は最低限行ってみたいと思い、ちょっと欲張りながら下記の予定で回ることにしました。
1日目 ・・・ 竹芝出港
2日目 ・・・ 父島入港、そのまま母島へ
3日目 ・・・ 母島->父島
4日目 ・・・ 一日ツアーで南島上陸
5日目 ・・・ 父島出港
6日目 ・・・ 竹芝入港
例によって9月の3連休に繋げて夏休みを取るつもりでいたので、その時期のおが丸のスケジュールを確認すると、9月12日の金曜日に出港するとの事。
13日出港なら何の問題も無くすんなりと日程が決まったのですが、そんな甘えを一切許さないスパルタンさが小笠原訪問の魅力でもあります。
上長に許可を貰おうとしたら、「金曜日から休んだら、他のメンバーの連休が取れなくなるじゃん!」と嫌味の一言も言われる訳ですがそこは平身低頭、許可を貰えばこっちのものw
日程を決めたのは良いのですが、宿なり交通手段なりを手配しなければなりません。
大体の場合、船、宿を自ら手配する方法と、小笠原海運さんが主催する「おがまるパック」というパッケージツアーを利用する方法と、ナショナルランドさんが主催する「なしょなるパック」というツアーを利用する方法の3通りのどれかを選択することになります。
自分で手配するのが一番自由度が高いのはいうまでもないのですが、パックツアーの割引はかなり大きく、それと比べるとかなり高くついてしまいます。
しかも、繁忙期は3日とも泊まらない客は予約を断られてしまうこともあるらしく、原付の考えているプランからすると、いずれかのツアー会社を利用したほうがよさそうです。
しかし、ネットでどのプランを見ても、初日を母島、2日目以降を父島のように分割して設定しているツアーが見つからず、やむを得ないのでとりあえず3日とも父島に泊まるプランで予約しておいて、予約後に宿に事情を話して初日分をキャンセルしたうえで、母島の宿を自前で手配することにしました。
母島の宿はネットの記事で印象のよかった民宿「つき」さん。
母島にはレンタカーがなく、レンタバイクか民宿の車を交渉して借りるしか移動手段がないらしいのですが、つきさんはレンタルバイクもやっているとのこと。
直接電話して部屋は無事予約することが出来ました。
ただ、バイクに付いては当日に申し込んでください、とのこと。
母島の手配が済み、ナショナルランドさんにツアー申し込みの連絡を入れたところ、WEBに出ていたプランは旅程の融通が利かない 「おがまるパック」なので、そういう事情ならセミオーダーに対応できる「なしょなるパック」で組めば実現できますよ、と教えられました。
なーんだ、最初からこっちへ連絡しておけばよかった。。。
結局、「なしょなるパック」で初日の宿泊抜きでプランを作ってもらうことが出来ました。
セミオーダーに対応しているだけにツアー料金はおがまるパックよりも少し割高になってしまったのですが、最初は父島の一泊分を捨てる覚悟もしていたので、全然問題無しです。
無事に宿の予約が出来たところで、あとは滞在中の移動手段とオプションツアーの申し込み。
当初父島ではレンタカーを借りようと考えていたのですが、レンタバイクに比べて料金が高くなるのと、中日に南島観光が入ることから使いたい日が初日と最終日に分かれてしまって勿体無かったのとで、カミさんは父島もレンタバイクでいいんじゃない?と言っています。
本館Search In MyMotherで書いたとおり、原付は原付に乗ったことがないので、正直レンタカーの方が良かったのですが、まぁ、そうは言っても交通量はたかが知れたレベルだろうということで、両島ともレンタバイクで回る事になりました。
ところが。。。
レンタバイクをやっているパパヤマリンスポーツさんに電話すると 「事前の予約は受け付けていないので当日連絡ください」 とのこと。
つきさんでも予約できなかったので、小笠原では全体的に予約を受け付けていないんだなぁ、と思いつつ結局レンタバイクは予約しませんでした。
ちなみに、他にレンタバイクをやっている業者として父島タクシーさんがあったのですが、パパヤさんより値段が高かったので、どうせ予約してないなら良いやと思って電話しませんでした。
オプションツアーに付いては、父島の戦跡ツアーと、ナイトツアー、南島に上陸するツアー、ドルフィンスイムかホエールウォッチングツアーの4つが候補に挙がりました。南島に上陸するのはドルフィンスイムかホエールウォッチングツアーのいずれかとセットなので、カミさんに聞いてみると、
「どっちも見たいけど、どちらかと言えばドルフィンスイムかな~。」
とのこと。
クジラはイルカと比べて遠洋を泳いでいそうなイメージがあって、原付も波浪高い遠洋では激しい船酔いなりそうな気がしたので、比較的穏やかそうなドルフィンスイムを探してみることに。
沢山の人数でぞろぞろ回るようなツアーは苦手なので、4、5人程度で定員になるツアーを探した所、Come・クルーズさんが弁当付きで定員7名との事だったので、電話した所無事手配できました。
それでメインのツアーが決まったので、そのほかのツアーを決めることにしたのですが、戦跡ツアーは時間が合わなかったので、消去法的にナイトツアーに行く事になり、ネットのクチコミなどを参考に見つけたブルースカイビッグホースさんに予約を申し込みました。
それらの手配を無事に済ませて、いよいよ出発の日となりました。
天気予報を見ると、13日から16日まで曇りか雨の予報。。。
>「またかよ。。。」 と思いつつ、例によって原付夫妻はなんだかんだで天気に恵まれる晴れ男&晴れ女w
それ程ひどい天気にはならないだろうと思いつつ、一応天気がよくなるように願掛けをして出発です。
さて、どうなることやら。。。