東京水辺ライン【6】(2009/05/30)
江戸東京ぶらり旅 - 荒川ロックゲート体験:
5分ほど待っていたら水門が開いて奥から船が出てきた。それと同時に水門上にある信号が青に変わってこちらの番になった。
船はゆっくりと進んで水門の下をくぐった。水門の真下に到達した時に水門から滴る川水を浴びてしまった。当然そうなるよな。軽くショック。
そして奥に見えるスペースに船が収まると背後の水門が閉じて排水を開始する。
ゲートの周囲には水門の開閉を見に来たと思われる人が柵越しにその様子を眺めていた。なんならたまたま散歩で通りかかったと思しき人も足を止めてその動きに見入っていた。
正面側のゲートには水位下降中であることを示す電光掲示板があるが、洗面台に貯めた水を抜くような勢いで排出されるものではないので目に見えて分かるような動きはない。
写真だと水面の10cmくらい上に見える濃い茶色に変色しているラインが排水開始前の水位である。
進入時点での水位差は1.5mほどらしい。正面の電光掲示板にあとどのくらい水位を下げるのかが表示されている。
排水完了まで10分ほどかかるということなので1分15センチほど。太陽が動いていないように見えるのと同じような感覚で、少し間を開けて再度見てみると、あ、前より茶色い部分が増えているなと分かる感じだ。
停泊場所の脇の壁面にある水位計を見ると、結構大きく水位が変わっていることが分かる。
こうして10分ほどで排水が完了し、正面側の水門が開くと船は旧中川へと前進する。また水門から滴る水を浴びた。。。
旧中川は川幅もだいぶ小ぢんまりとして・・・といってもちょっとした地方都市でメインを張っている河川くらいの川幅はあるが、水上バスの船体にはちょっと窮屈そうだった。
視界の先には都営新宿線の東大島駅がある。この駅はご覧のとおり川の上にホームがある。
前に触れたとおり、この旧中川はかつての中川の忘れ形見なのでこの先で再び荒川に行く手を阻まれる。どの辺まで遡っていくのだろうかと思ったら、旧中川はお試しだったらしくすぐに船の向きをかえて再びロックゲートをくぐり始めた。
そしてもう2度ほど川水を浴びて、再び荒川に戻りさらに上流方向へと進み始めた。
荒川へ復帰するとほどなくデッキに陣取っていた見物客たちはわらわらと船室に戻って行った。お前らロックゲートだけかい。
江戸東京ぶらり旅 - 旧綾瀬川:
この先水上バスはこれといった見どころもないまま、ひたすら荒川のだだっ広い水面と河川敷を眺めながら遡上する。右手にはずっと首都高中央環状線の高架が続き、左は広大な堤防内に広場やレクリエーション施設がずっと連なっている。やや退屈なシーンではあるが、荒川を遡上する水上バスはこのツアーくらいしかないので、ここからの景色は殊の外レアである。なので再び閑散としたデッキからその景色をじっくりと堪能しながら進んだ。
だが、平井発着場を過ぎた辺りで屋上デッキから立ち退くよう係員から指示された。階段を下りて階下のデッキに移動すると、係員はその階段に繋がるハッチを締め切ってしまった。なぜだろうと思いその係員に質問したら、この先にある荒川と隅田川を結ぶ水路(旧綾瀬川)に設置された水門が船のサイズギリギリしかないらしく、屋上デッキに人がいると通過できないので立入禁止にする必要があるんですと教えてくれた。
暫くするとその水門が見えてきた。
ああ、ここは前に散歩したことがある。東武線堀切駅のすぐ横にある水路だ。確かに奥に見えるゲートはかなり天井が低そうだ。
現在の綾瀬川は中川と同様、荒川の東側から流れてきて、合流する所から暫くの間荒川に沿って流れ、下流で中川と合流する経路になっているが、かつてはこの先で隅田川に注ぐ川だったそうだ。
そういえば堀切駅あたりは手前の牛田駅からかなりの急カーブで進路を南に変えて、堤防に沿ってまっすぐ進んだあと鐘ヶ淵駅の手前で再びカーブするコースを取っている。ここもかつては隅田川の流路と一定の間隔を開けながら綺麗に半円を描いていたのだが、荒川放水路の建設の際に水路と線路が重なってしまうことから、線路を現在の位置に移設したという経緯があるそうだ。
鉄道の線路敷きを移動させてしまうほどの強権が発動されたプロジェクトだったのだな。今ではなかなかこうはいかないだろう。
船が水門を通過するタイミングで撮影。ご覧のとおり上も左右もギリギリである。確かにこれではデッキの上には立てないな。というか何もここを無理に通らなくてもそのまま岩淵水門まで遡ればいいのにと思わなくもないが、そうはいってもこんな所を通るのはかなり珍しい体験だ。
旧綾瀬川は流路の上に首都高速の高架があるので随分と圧迫感のある光景だ。といってもこの旧綾瀬川はわずか数百メートルほどで隅田川に合流するのでこの光景は一瞬だ。
そして再び隅田川に戻ってきた。数時間前に見た光景が復活した。千住の発着場は少し上流側にあるのでここから上流方向へと遡る。
そうすると今回の水上バスの旅も間もなく終焉を迎える。
下船準備をしつつ発着場への到着を待つ。
そして千住発着場に接岸し、およそ5時間ぶりに地面に足を付けた。
下船したのは我々のみ。船はすぐに折り返して下流へ向けて出発していった。
5時間ぶりに地上へと戻った我々は、、、とにかく腹が減った。そして寒い。目の前にはそんな我々を引き寄せるファミレスの看板がある。無条件にファミレスの店内へ誘(いざな)われ、暖かい店内で遅いランチを堪能した。
あとがき:
水上バスの旅は普段見慣れている景色を見慣れない角度から眺めたり、あまり立ち入らないところへ立ち入ったりするなかなか充実したものだった。3000円を払って乗る価値はあると思った。強いていえばもっと頻繁に運行して知名度を向上させた方が、多くの人に乗って貰えるのではないかと思った。まだ実証実験レベルなのだろうか。
ちなみに食料は絶対に持参すべきだ。とにかく船から下りることが出来ないので一切食事のアテがない。せめて軽食の自販機でもあれば空腹は凌げるのだが。。。水上バスという響きに軽い心構えで乗り込んでしまったが、考えてみたら5時間に渡って乗船するのだからちょっとしたフェリーの船旅にも匹敵する準備が必要だ。
また、真夏以外はしっかりした防寒対策が必要だと思った。我々は幸い大した雨に降られることなく戻ってくることが出来たが、いかんせん寒くて仕方なかった。まぁ、その辺は自分が奇特なだけで船室に入ってしまえば心配不要だが。
最後に、満席表示により我々が乗船を見送った翌31日のいちにちゆらり旅の方だが、日中帯に割と強い夕立があったので31日の方に乗船していたら楽しみは半減していたかもしれない。そういう意味でも30日の便に乗れてよかったと思う。
(おわり)