東京水辺ライン【2】(2009/05/30)
江戸東京ぶらり旅 - 月島まで:
発着場の周辺を見て回っているうちに5分ほど経過したが、カミさんが一向に戻ってこない。傘を忘れたコンビニはここから200mほどしか離れていないので歩いて行ったにしても時間がかかりすぎている。万一乗り遅れたら次に乗れるのはいつになるか分からない。早く戻って来いと念を送り続けるが、そうこうしているうちに上流方向から船がこちらへ向かってくるのが見えてしまった。いそげー!
やがてその船が発着場に接岸し、中から係員が下船して乗り場の入口のゲートを開放した。ああ、もうダメか・・・と諦めかけたその時、ようやくカミさんが戻って来た。
遅いよ!と咎めたら、それでも走ってきたのだという。本当かぁ?
まぁ、出港には無事間に合ったからいいか。乗船するとすぐにカウンターがあり、そこに立っていた係員に一周してここに戻ってくることを伝えるとチケットを発券してくれた。
写真のとおり途中下船前途無効と明記されているので、今日の夕方に再び千住の発着場に戻って来るまでもう船の外には出られない。一周するのにかかる運賃は3000円である。なかなかのプライスだ。3000円で半日クルーズ、高いか安いかはこの後の行程で明らかになることだろう。
※当時は3000円で高いなと思ったが、2025年現在いちにちゆらり旅に乗船すると5200円だそうだ。倍近い。。。とても気軽に乗ってみようと思える値段じゃなくなってしまった。
上のチケットに写っている写真のとおり、船はかなり平べったい作りになっている。といっても身をかがめる必要はない。船室は天井部までガラス窓が回り込んでいるので圧迫感はない。こうした低いフォルムになっているのは、緊急時に都内の主要な河川に入り込めるようにするためだそうだ。
ちなみに、天井のみならず船底も平たい作りになっている。波を切る必要がないので平たくても問題ないらしい。
自分らが乗船した時点では船内にも乗客があまりおらず、空席も多かったが、どうせなら肌で風を感じていたかったのでデッキへ移動。その最後部には屋根上に設けられた別のデッキに出るための階段がある。あったら行くよね、ということでその上に登ってみると、こちらのデッキは四方遮るもののないお立ち台状態。全てがオープンエアーなので開放感が凄い。
散歩のコースで隅田川の川べりを歩くことがたまにあるが、船から見る景色は陸で見た景色とはまた一味違って見える。
船は白髭橋(しらひげばし)の下を通過。江戸っ子に言わせると「しらしげばし」。「ひ」と「し」の区別がつかないというのは有名な話。でもそれって文化的な背景があってそうなっているというよりは、単に言葉の使い分けが苦手でそうなっているだけのような気がする。それをことさらに江戸っ子だから、というくくりにするのはどうなのだろう、なんて思わなくもないが。。。
その橋の下を潜る時、船から橋の裏側に手が届いてしまうのではないか、というほどの高さで橋が迫ってきた。橋の上を歩いている時は水面まで結構な高さがあるように見えたが、下から見上げるとそれほどでもない。面白い光景だなと思った。
天気はどんよりとしてどうしようもない感じだが、幸いなことに今のところ雨は降っていない。ただ日が出ていないせいで思いのほか肌寒い。
もう5月も終わりなので厚着は不要だろうと2人とも長袖1枚で来てしまった。おかげでじっとしていると凍えてくる。完全に読みを誤ってしまった。でもまぁ今のところは我慢できる。デッキの上から見えるパノラマは寒さに耐えてでも見る価値がある。とはいえどうしようもなかったら客室に移動かな。。。
暫く進んでいくと桜橋発着場に到着。桜橋の発着場は進行方向右手側にある。船は左側通行なので右側の発着場まで斜めに川を横切って移動するのかと思ったら、発着場を一旦通り過ぎて少し進んだところでUターンした。対向する船と接触しないためのルールなのかもしれない。
ここでは数名の人が上下船した。意外に乗る人も降りる人もいるんだな。
彼らの乗船が終わったらすぐに出発。船は上流方向を向いているので、そのまま少し進んだところでもう一度Uターンして元の進路に戻った。
川べりにアサヒビールの本社ビルが見えた。首都高向島線を走っていると否が応にも目にする奇抜なオブジェが、その形状から不名誉なあだ名を付けられてしまっていることで有名なビルだが、川の上から見てもやっぱり奇抜だ。建物の中から見える景色はやはり黄色いのだろうか。
このビルを過ぎると間もなく浅草である。が、浅草にも発着場があるが船はそこには止まらずにその先の両国発着場に止まる。ここでまとまった人数の乗船があるので暫く停船しますとアナウンスがあった。事前にそれが分かるということはその人たちは予約をしているということだ。電話口の人は予約受付していないと話していたことを考えると、団体などの予約だけ受け付けているのかもしれない。
そのアナウンスを聞いて自分らも一旦下のデッキに降りてベンチで小休止。興味深い景色の連続だが立ちっぱなしはやはりつらい。。。
少しして団体客と思しき一行が20名ほど乗り込んで出発。船内がにわかに賑やかになった。
この船は見た目からしてのんびりと進んでいきそうなイメージがあるが、フル加速をする時は船尾に結構な波を立てながらグイグイと進んでいく。ちょっと意外に感じた。
それからほどなく船のスピーカーから何やら話している声が聞こえてきた。耳を傾けてみたら川沿いの見どころを解説しているようだ。自己紹介によると東京都のボランティアが案内しているらしい。ボランティアは船室内で何か資料を手にしながら話しているようなのだが、ここからだとそのボランティアの姿は見ることが出来ない。なので時折何の話をしているのかよく分からない時があった。とりあえず耳で聞いているだけでも分かるところだけをつまみ食いしながら聞いた。
そうこうするうち総武線の鉄橋が見えてきた。この鉄橋をくぐるとその先で神田川が隅田川に合流している。そのすぐ近くに自分が仕事で時々顔を出しているお客さんがいるのだが、ここからもその事務所の辺りの風景が見えた。いつもは岸に係留されている屋形船越しに見ていた隅田川はこちら側から見るとこんな風に見えるのか。
さらに下ると隅田川と晴海運河が枝分かれする。その分岐点にある人工島が月島である。月島といえばもんじゃ焼きが有名。江戸の昔からあるような雰囲気を持っているが、この島はそこまで古くない。その島の舳先のようになった部分には、かつて石川島播磨重工の工場があったが、今はその跡地に夥しい数のタワーマンションが建っている。リバーシティ21というマンションである。
石川島播磨重工といえば、その略称はIHIである。IとHは「Ishikawajima-Harima」のイニシャルだろうなとすぐに分かるが、最後のIは何の略だろう。そう思って調べたら「Ishikawajima-Harima Heavy Industry」の略だった。Hはそっちの略か。IHHIとならなかったのは合併当時の力関係だろうか。
それはさておきリバーシティ21である。東京の華々しきウォーターフロントエリア(死語)のランドマーク的な位置に聳えており、都心からも近いことから結構な高額物件であるにもかかわらず、売れ行きはかなり好調だったようだ。
でも埋立地でしょ。地震とかで建物が傾いたりしないの?もし傾いたらどうやって復旧するのか。そう考えると仮に買える値段だったとしても自分なら買わない。
※と、言いつつその後発生した3.11では特に被害はなかったそうだ。軟弱地盤に建っているだけあってむしろ念入りに対策されているようだ。でも高層階の揺れは恐ろしかっただろうな。。。
ちなみに地図で月島を見ると、リバーシティ21の裏あたりに運河で仕切られた一角があるのが分かると思う。この一角は佃島という。佃煮の発祥の地というのは有名な話。ここが埋め立てられたのは江戸時代で、当時はぽつんと浮かぶ孤島だったが、その後周囲が埋め立てられ今では月島地区の一角のような感じになっている。