奄美皆既日食観測ツアー【6】(2009/07/18)

東京ー博多(500系のぞみ):


2009/07/18

9時に起床。前日は仕事から帰宅後に荷造りを始めて、完了したのが夜中の2時過ぎになってしまった。若干睡眠不足気味だが、まぁ今日は新幹線に5時間揺られることになっているのでその間に仮眠を取れば大丈夫だろう。

乗車する新幹線は12:30発のぞみ29号。この新幹線で博多に到着するのが17:30頃となる。博多に着いた時点でもう夕方なのでほぼ1日が移動で終わってしまうがどうしてもこの列車に乗りたかったのだ。

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というのもこの列車は500系が充当される列車だったからである。JR西日本が山陽新幹線区間での300キロ運転を目指して開発した車両だが、ご覧のとおり新幹線車両の中ではずば抜けてイケメンである。

JR東海が増備を進めている700系列と比較するといかにも高速走行に適した形状をしていて、まるで戦闘機のような面構えである。
この車両は鉄道ファンのみならず一般の乗客をも魅了してやまない車両なのでホームにはご覧のとおり撮影者が鈴なりである。よく見ると撮影をしている人に女性が多く混じっている。携帯のカメラで撮影していることからも分かるとおり、この女性自身が鉄道ファンという訳ではなく恐らく同行するお子さんから撮影をせがまれたのだろう。

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戦闘機のキャノピーのような形状の運転席。高速走行時に細かい物を視認するのはそもそも至難の業だと思うが、それにしても視野の狭そうな運転席である。
東京駅のホームは先頭車部分にホーム柵が設けられているので撮影がしづらいのが難点。反対のホームに行けば綺麗に撮影できそうだが、400m離れている(25m x 16両)ので、荷物の多さに心が折れた。


撮影者が多かったのは500系がイケメンだからという理由だけではない。この系列は元々JR西日本が自社の路線である山陽新幹線区間のスピードアップを図るために開発された車両であるため、JR東海が所有する300/700系とは座席数や配置が異なっている。

車両を統一して運用コストの低減を図りたいJR東海からすると、他社の車両であり、かつ独自のレイアウトを持つ500系は取り扱いが面倒ということで、デビュー当時は東京博多間を結ぶのぞみとして1時間に1本程度顔を見せていた500系は徐々に山陽新幹線区間に追いやられ、今では1日に2往復しか東京に顔を出さなくなってしまった。

そして来年にはついに東京へ顔を出すことがなくなることが決まってしまった。それで見納めということで多数の撮影者がいるのだ。

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自分も撮影を済ませてから乗車。席に着いたらほどなく出発となった。列車内は3連休初日だけあってかなり混雑していて、座席はほぼ満席。自分は2列席の窓側を取ったが隣には初老の男性が着席した。

今回は博多まで5時間の乗車である。睡眠不足状態ではあるが少々リクライニングする程度の座席では仮眠くらいしか取れないので暇つぶしにダイナブックを持参している。ただしこのPCは既にバッテリが半死状態なので電源が繋がる所でないと使いものにならない。
この500系には車端部に電源コンセントが設置されているということだったので席もそこを押さえたつもりだったのだが、コンセントがあるのは3列席の窓側で、自分が座っている2列席側には設置されてなかった。結局余計な荷物を持ってきただけになってしまったな。それなら先に仮眠しておくことにした。


寝たり起きたりしているうちに列車は名古屋を過ぎ京都に到着。隣の乗客は京都で下車してようやく広々使えるようになった。
そこそこ睡眠も取れて目が覚めてきたので、もうひとつ暇つぶしアイテムとして持参した新田次郎の「劒岳 点の記」を読んで過ごすことに。新田次郎は吉村昭と共に自分が好きな作家のひとりである。

・・・が、自分は新幹線で読書をするとすぐに目がやられることを忘れていた。目頭が強ばってきたので読書は小1時間ほどで終了。あとはとりあえず景色でも見ながら過ごそうと思ったのだが、山陽新幹線区間はトンネルが多くて景色が優れない。困った。。。


そんなこんなでようやく岡山に到着。全行程の6割くらい進んだか。やることがなくなってしまったのでとりあえずバッテリーが切れるまでノートPCでWebのチェックをすることに。といっても新幹線乗車中はインターネットに繋がらない。ということで予め自宅で見たいサイトを開いておいて、そのまま持ち込んでオフラインで閲覧した。毎日更新のある読み物サイトがメインだったのでどうにかそれでも凌げた。

※この記事をリライトした2025年現在では新幹線の各席にコンセントが設けられるようになり、フリーWiFiも完備されている。モバイルルーターから接続することもできるし、スマホでテザリングすることもできる。なんならスマホ自体で閲覧できる。そんな今の感覚では信じられないことだが、この旅行の当時はフリーWiFiはまだ一般的ではなかったし、スマホではなく携帯電話だったのでWebの閲覧もできなかった。そうした中でどうにかWebを閲覧するためには上記のような方法をとらなければならなかったのだ。


凌げたのはいいのだが、やはりバッテリがすぐに枯渇し、広島に到着する前に電源が切れてしまった。もうどうしようもないので後は景色を見たり目を閉じたりして博多への到着を待った。自分が子供の頃は新幹線にはビュッフェとか食堂車といった設備が付いていた。街中の店と比べて高価だったので自分は利用したことがないが、自分で稼げるようになった今なら食堂車にご飯を食べに行った気がする。

が、今ではそうしたサービスは過去のものとなってしまった。世の中ままならないものである。もっとも当時と違って今はノートPCなど高額な物を持参していることも多いし、当時と比べたら遥かに治安が悪くなっているので、荷物を荷棚に無防備に残置したまま席を外しにくくなってしまった。そうしたことも利用率の低迷につながったのかもしれないが旅情という点では味気ない。

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そんな訳できっちり5時間の乗車をもって新幹線はようやく博多に到着した。流石に遠かった。。。体が凝り固まってゴリゴリである。まぁ、普通は飛行機で来るところだよな。

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ホームには懐かしの100系の姿があった。自分のランキングではこの新幹線が最もイケメンだと思っている。しかしSMBCみたいな塗分けだな。


彦山を目指す:


まずは駅を降りて九州散策のために手配したレンタカーを受け取りに営業所に向かった。
そのレンタカー会社はMMCレンタカーといってその名のとおり三菱系列の企業である。なぜこの店を選んだかというと軽自動車のアイという車種を指定でレンタルできたことと、そのクラスのレンタル料金が他店より安かったからだ。アイは乗ったことがない車種だったのでインプレを兼ねて予約してみたのだった。

だが、地図に記載されたその店舗の場所は歩いてみたらやたら遠かった。重たい荷物を持参しているのでへばる。なんでこんな辺鄙なところに店を構えているのだろう。。。

とりあえずどうにか店に辿り着いた。手続きは無事済んで荷物を車内に放り込んで出発。考えてみたら荷物は駅のコインロッカーにでも預けておけばよかったかな。


さてこの後の行動予定だが、家で九州方面の鉄道写真のコレクションを確認したところ、北九州・筑豊方面が手薄になっていることに気が付いたので今回はその辺りを中心にあちこち回ってみようと思っている。

さしあたりまずは彦山という所へ向かおうと思っている。その近くに道の駅歓遊舎ひこさんというのがあるようなのでそこを目的地に設定した。

今日は道の駅まで移動するだけなのでそれほど急いでいないこともあり、一般道を走ることにした。道は途中の甘木市の辺りまでは交通量が多く、ゆるゆると渋滞を繰り返すような感じで思いのほか進みが悪かった。ふと時計を見ると19:30を回ろうとしていた。

だが空はまだ夕暮れの薄明りを残していてちょっと意外な感じがした。関東に住んでいるといくら夏至に近い時期といっても19時を過ぎれば空は暗くなってしまう。なので最初は時計を見間違えたのかと思ったが、携帯の時計をチェックしたら車の時計と同じ時間を指していた。

少しして合点がいった。そうか、西に移動すると夕暮れの時間がこれほどまでに変わるのか。日本の標準時は兵庫県明石市にある標準子午線を基準にしている。当然東に行けば夕暮れが早まるし西に行けば夕暮れが遅くなる。そういう理由で九州の辺りでは20時近くまで空が暗くならないのだ。九州の人は夜遊び好きという印象を持っていたがあながち間違いではないのかも。

逆にいうと東に行けば行くほど夜明けが早くなる。以前北海道で朝の4時前には空がうっすら明るくなり始めたことに驚いたことを思い出した。同じ日本といっても夜明けから夕暮れまでこんなに時間が変わるのだから、東京の基準とは全く異なる常識で暮らしている人も意外と多いんだろうなと思った。


車は甘木市街に入った。その市街を通り抜ける頃には走行する車の数もぐっと減ってきた。この先彦山方面へは国道500号という道を通る。マイナーな国道であり、かつ山越えをするルートであるせいか、国道を名乗ってはいるものの道幅は1.5車線程度が続く。カーブが続く山越えのコースは自分の前後に走行する車もなく真っ暗。本当にこの道で合っているんだよねと不安になる。だが、山を越えて麓に下ったらちゃんと彦山に着いた。

まずはJR彦山駅へ行ってみた。時間は21時半を過ぎていた。周囲には店舗などもなく駅舎だけがぽつんとあるような駅だ。明かりこそ灯っているがひと気は一切ない。時刻表を見たら終列車も行った後だった。そりゃひと気もない訳だ。。。

とりあえず見るものはなかったのですぐに出発し、今日の寝床となる歓遊舎ひこさんに移動。適当なところに車を止めて就寝の準備。

今回レンタルしたアイはフロントシートとリアシートのフルフラットが出来なかった。出来るだけ足を伸ばして眠りたいと思い、リアシートを畳んでラゲッジルームを広くしてみたらいい感じの寝床になった。一応薄いパンチカーペットが敷かれているので肌触りはそれほど悪くないのだが、ものすごく暑い。。。アイはリアにエンジンを搭載している車である。つまり、鉄板の1枚下はついさっきまで熱をたぎらせていたエンジンがクールダウン中なのである。そりゃ暑いに決まってる。

車の窓に装着するタイプの網戸を持ってきていたのでそれを装着して窓を開けてみたが、焼け石に水だった。。。それでもここでどうにか横になる以外の方法はない。少しでもエンジンが冷えて涼しくなるまでノートPCでこの日の出来事をまとめておくことにした。

小一時間くらいやっていたら流石に眠くなってきたのでその勢いで寝てしまうことにした。

Posted by gen_charly