奄美皆既日食観測ツアー【12】(2009/07/20)

フェリーという名の難民船:


ここから奄美大島まで11時間の船旅である。大型フェリーだからあまり心配はいらないとは思うのだが、念のため今回も酔い止めを飲んでおくことに。

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乗船口へ進むと乗客が列をなしてゆっくりと船の方へ進んでいた。この人たちがみんな日食を観測しに来たのかと思うと、意外に物好きが多いなと思うが、日本の人口からしたら微々たるものだ。

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入口まで進むとそこに立っていた係員から自席の場所を案内された。そこはひとつ上の階になるそうだ。臨時席は座席表がないので迷うと思ったのか席までアテンドしてくれるというのでその後ろについていく。

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そこはデッキ前の通路だった。通路のリノリウム張りの床の上にじゅうたんが敷かれ、その上に15人分のマットが敷かれていた。小笠原に行った時のフェリーもこんな密集っぷりだったなぁ。。。自分の場所は写真でいうと手前側の列の真ん中。真ん中の列じゃないことに安堵。頭の上方向にデッキへ出入りする扉があるが流石に閉鎖されていた。頭の上で扉をバタバタ開閉して人が出入りしたら流石に安眠妨害なので、その配慮にも感謝。

こんな所で寝かされるのかという落胆と、思ったより劣悪な場所じゃなかった安心感とで複雑な心境だがまぁ仕方なし。横になれるだけマシ。ちなみに思いがけずラッキーだったのは、目の前にコインロッカーが設置されていたことだ。貴重品を含めロッカーに突っ込んでおけば、席を離れる時の不安もない。先着なのをいいことに速攻でロッカーに荷物をしまった。


さて、出港までにはまだかなり時間がある。とりあえず出港まで外のデッキに出てみることにした。

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目の前に鹿児島のシンボルである桜島がその雄姿を惜しげもなく披露していたが、ご覧のとおり山頂部は雲に覆われて見えなかった。
桜島といえば頻繁に噴火を繰り返す山として知られている。活発な時だと1日に何度も噴火することもあるらしい。年中些細なことで怒り出すけど、放っておけば大した害もないオヤジみたいなものか。

そんな山からわずかこれだけの距離に鹿児島県一の繁華街があるというのも不思議なものだ。自分はまだ火山が噴火しているところを生で見たことがない。なのでタイミングよく噴火する瞬間が見られないかなと内心思っていたのだが、この日は全くその気配がなかった。まぁ、仮に噴火したとしてもこの雲では何も見えなかったと思うが。


デッキのベンチに腰掛けて桜島や乗船客の流れをぼんやりと眺めていたら、ひとつ下のデッキで若者が誰かと電話で会話しているのが聞こえた。なんか知らんが彼は声がでかく会話が筒抜けである。その話を聞くとはなしに聞いていたら彼は船の予約が出来なかったらしく、今日のキャンセル待ちにワンチャン賭けていたらしい。ところがいざ現地に来てみたら、誰もキャンセル待ちをしている人がいなくてあっさり乗船券がゲットできてしまって拍子抜けだった、というようなことを話していた。

ということは予約時にキャンセル待ちになった人にも全てチケットが行き渡って更にまだ余裕がある状態だったということだ。キャンセル待ちとなった人の人数は聞いてはいないが、普通これだけ乗船できる船だったら100人とか200人といったレベルでキャンセル待ちを受け付けている筈だ。キャンセル待ちをキャンセルした人もいるだろうから全員が全員ではないと思うが、それにしても相当な数のキャンセルが出たということだ。あれだけ電話が繋がりにくかった中、仮押さえでチケットを手配するような人がそれほど沢山いたのだろうか。

というか正規の席のキャンセルな訳だから、もしかしたら下で電話をしている彼は通常の船室の席が確保できているのかもしれない。そう考えると頑張った末に通路で寝かされる自分は何なのか。何ともいえない気分になった。


その後更に20分ほどぼんやりとしたが、だんだんと眠くなってきた。酔い止めが効き始めてきたようだ。ここで眠ったら風邪をひきそうなので船室に戻ることに。

自分の席の周りはまだぽつぽつと人がいるのみで閑散としていた。まだ出港まで30分くらいあるからこの後続々と乗船してくるのだと思うが、せっかく酔い止めパワーで眠くなっているので今のうちに眠ってしまおうと思った。ここで少しでも熟睡しておけば後で騒がしくなって眠れなかったとしてもそれほどつらくはならないだろう。


次に目が覚めた時には船は既に出港していた。時間はまだ19時前だったが既に2時間くらい眠っていたようだ。周りの席はあらかた埋まっていて、荷物だけおいて席を外している人、自分と同じように毛布にくるまって寝息を立てている人、様々だった。

本当は出港の前に起きて錦江湾の両側に広がる大隅半島や薩摩半島の写真でも撮ろうかなと思っていたのだが、よくよく考えたら桜島があの調子なので大した景色は見られなさそうだ。それに薬のせいで眠気も断続的に襲ってくる。なんか面倒くさくなって結局布団から出なかった。カミさんがいればこういう時も起きてあちこち見て回っていたと思うのだが、1人になると途端に面倒くさくなる。。。

自分が惰眠を貪っているデッキには給茶機が設置されていて、割と頻繁にお茶を汲みに来る人がやって来る。何人かで集まってやってくる連中は大抵ワイワイと騒ぎながらやってくるのでその都度起される。普段ならそんな風に何度も起こされたらストレスMax状態になっていたと思うが、今回はずっと眠気に支配されているせいか、割とどうでもよかった。


船内セルフツアー:


そうして20時半になった。まだ体は何となくだるいのだが、風呂が21時で閉まるらしいので一度起きて風呂に入りに行っておくことにした。

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このフェリーはちゃんとした湯舟を備えた浴室が設けられている。
脱衣場に入った瞬間、至るところが水浸しになっていた。どんな風呂の入り方したらこんなになるんだよ。。。

靴下が濡れないようとびとびに乾いている場所を選びながら、脱衣カゴを確保し服を脱ぐ。浴室の入口に「展望風呂」と書かれていたが、この時間窓の外は漆黒の闇なので展望もへったくれもない。日中帯にお風呂が開設されていることはあるのだろうか。

脱衣場の惨状には閉口したが、お風呂はいい湯加減でリラックスできた。


部屋に戻るついでに少し船内観光をしてみることに。

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こちらはレストラン。夜の営業時間は案外短くこの時間は既に休憩エリアとして開放されていた。

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一方売店はまだ営業中。お菓子などが置かれている。またちょっとしたお土産もあるようだ。

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自販機エリアもあり、もちろんカップ麺などのインスタント食品も入手できるので真夜中に空腹になっても大丈夫。

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そしてゲームコーナーもある。しかし、この揺れる船内でよくゲームなんかやるよな。見てるだけで酔いそうだw

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最後にエントランス部分にあるフロント。この時間は人がいないが、普段は常駐していて問い合わせなどに対応している。

ということで、ざっと船内を回って再び自席に戻って来た。船は東シナ海の外洋を航行するうえ、低気圧が接近しているという話も聞いていたのである程度の揺れは覚悟していたが、案外殆ど揺れもなく平和なクルーズが続いている。奄美までこの調子だとありがたい。

とりあえずもうやることがなくなってしまったのでまた布団にくるまってしまうことに。普段なら一度起きて、まして風呂なんか入りに行ったらもう目が覚めちゃって暫く寝付けなくなるのだが、今回は幾らでも眠れそうだ。酔い止めパワー恐るべし。

Posted by gen_charly