奄美皆既日食観測ツアー【11】(2009/07/20)
リレーつばめ:
パンを食べ終えてからもまだ15分くらい時間が残っていたが、ぼんやりと駅構内を眺めていたら列車到着のアナウンスが流れてきた。
で、到着したリレーつばめ。近年の鉄道車両にしては割と珍しいダークグレーのシックなカラーをまとった787系が担当している。
この列車は現在建設が続けられている九州新幹線のうち、博多と先行開業区間の始発駅となる新八代駅の間を結ぶリレー特急である。リレー特急の定めとして全線開業後には廃止となる運命の列車だ。
既にあらかた完成した九州新幹線の高架橋が並走している。もうまもなく博多~新八代間も開業するようなので、この車窓はそれまでの期間限定である。
さて、列車に乗車して自分の席のある4号車に入ってたまげた。
なんか座席がリッチじゃないですか。肉厚のシートは前後の間隔も広く、間違ってグリーン車に入り込んでしまったのかと思い乗車券を再度確認したが、やっぱりこの車両で合っている。
天井は楕円形のドームに間接照明があしらわれていて、なんかセンスの良い空間になっている。こんなところまで抜かりなく雰囲気作りをするなんて流石水戸岡先生の設計だけはあるなぁ、なんて思いながら着席しようとした時、ふと、あれ?と思った。この車両には荷棚がないのだ。天井に窮屈さがなかったのはそのせいか。
荷棚がないので手荷物は自ずと足元に置かざるを得ない。足元はかなり広々しているので、このようにスーツケースを置いても大して邪魔にはならなかったが、なんかそういう問題じゃない気がする。食べ物なんかはいくら何でも地面に置きたくない。
そこまでしてまでデザインを優先するのは流石に本末転倒では・・・と思ったら、この車両は元々ビュフェを備えた車両で楕円の天井の下、つまり今自分がいるあたりにそれが設けられていたらしい。後にビュフェの営業が終了となったため客室に改造したのだそうだ。だからシャレオツな天井だったのか。そしてやはり自分の予想どおり、構造上荷棚が設けられなかったために座席間隔を広く取ることになったのだそうだ。
荷物直置きはちょっと減点だが、広い座席にのんびり腰をかけて思いのほかリッチな気分で乗車することが出来た。
大牟田を出ると次の停車駅は熊本。熊本に近づくにつれどんどん雨雲の色が濃くなっていき、とうとう降り出した・・・と思ったらいきなり土砂降り。
明後日の天気は大丈夫か!?
九州新幹線つばめ:
そして熊本からさらに30分ほどで新八代に到着。熊本を過ぎて少しした辺りで雨は小降りになった。このまま止んで欲しい。
リレーつばめはリレー号を名乗るだけあって、九州新幹線ホームに直接乗り入れて、ホーム越しに新幹線と乗り換えが出来るようになっていた。流石にJR九州が社運をかけて建設している路線なのでその辺りは抜かりない。だが自分的には乗り換えの時に在来線ホームに停車する肥薩おれんじ鉄道の車両を撮影したかったので、列車が新幹線ホームに到着したのは想定外だった。しかも乗り継ぎが4分しかなく在来線ホームへ移動する余裕もなかった。
新幹線は800系つばめ。500系にも相通ずるスピード感あふれるデザインである。
自席に着席したらすぐ発車。
800系もまた新幹線車両としてはクオリティの高いインテリアになっている。座席は2+2の配置で大きなひじ掛けがおごられているうえ、木が多用されモダンな印象だ。
後で調べてみたらシート生地は西陣織だそうで、随分とお金がかかっている。さっきまで乗車してきた787系に引き続き、優雅な気分に浸ることができた。
ここから鹿児島中央まではおよそ1時間の乗車。景色を見たいところだがトンネル区間が多くあまり景色を楽しむことが出来ない。
10分ほどで最初の通過駅となる新水俣駅を通過。その直後のアナウンスで運転手の自己紹介と新水俣駅を時速260キロで通過した旨が知らされた。
飛行機みたいで洒落たサービスではあるが、オートパイロットである程度オペレーションを機械任せに出来るうえコクピットに複数名が搭乗する飛行機と違い、鉄道車両は運転手1人でオペレーションをしているうえ操縦は手動である。巡航速度になればある程度は余裕が出来るのかもしれないが、注意散漫になりはしないかといらぬ心配をしてしまった。無理に真似しなくてもいいと思う。
というか最近はそういう風に運転手が車内アナウンスするのが流行のようだ。路線バスでも運転手が右に曲がりますとか停車しますとか、こまめにアナウンスしている。かつてのバスや鉄道の乗務員には横柄な人が多かったので、年配の乗客などはその当時のイメージを未だに引きずっている人がいる。こうした運転手のアナウンスがそうした乗客に対して安心感を与える効果はあるのだろう。とはいえ自らも車のハンドルを握る自分としては、ちゃんと運転に集中してね、と思う気持ちの方が強かったりする。
脱線した。
出来たばかりの新幹線は殆ど揺れることもなく、定刻に鹿児島中央駅に到着。
なかなかに長い旅路だった。鹿児島はカミさんのご両親の郷里なので以前にも訪れたことがあるがあの時は車だったので鉄道での鹿児島入りはこれは初となった。
鹿児島中央駅は少し前まで西鹿児島駅という名称だった。西鹿児島と聞くとブルートレインを想起するのは自分がオッサンだからだろうか。
中心市街地なのに西が付くのも変ということで、駅名が変更されて中央を名乗るようになった。個人的には西鹿児島の方が遠くまで来たなという気分に浸りやすいが、鹿児島の文字を見ただけでも充分はるばる感は感じている。
鹿児島にも路面電車が走っている。路盤を緑で覆っているので、ヨーロッパあたりの路面電車のような雰囲気がある。
鹿児島港フェリーターミナル:
時刻は15時前。ここからフェリーターミナルまでは3キロほど離れている。バスに乗っても行けるのだが面倒なのでタクシーを使うことにした。と、その前にコンビニに寄って食料の調達。フェリーの中にも売店はあるだろうが混んでて席から離れづらくなる可能性もあるので、最悪自分の寝床から一歩も動かずに済むよう食料の類は予め確保しておくことにした。
それから駅に戻り、駅前からタクシーに乗った。フェリーターミナルへ向かってほしいと伝える。
ターミナルまでの車中、運転手から日食を見に来たのか?と聞かれた。そうですと答える。
「昨日、岩手から来たって人を乗せたですよ。その人はトカラへ行くって言うとりましたね。」
おお、トカラ行く人やっぱりいるんだな。羨ましいがずっとテント泊ってどうなんだろう。
「そうですか。自分はトカラのチケットが取れなかったので奄美に行くことにしました。」
「晴れるといいですね、なんか低気圧が来てるらしいのでどうなりますかね。」
そうなのだ。今朝ホテルのテレビで見た天気予報は明後日の奄美の天気は曇り時々雨と伝えていたのだ。現に今日は朝からどんより雲が漂っていて熊本の辺りではそこそこのにわか雨もあった。九州本土から奄美までは数百キロ離れているので、こちらの天気がそのまま向こうの天気とイコールではないのだが、微妙な予報なのでどうにかいい方に外れて欲しいところだ。
そんな雑談をしているうちにフェリーターミナルに到着。時間は間もなく16時というタイミング。もうすでに混雑しているのだろうか。不安に駆られ急ぎ足で窓口に向かったら、意外にもそれほど並んでいる人はいなかった。手続きも10分程度で終了。
ただ、待合所の方は流石に沢山の乗客が詰めかけていて、どうにも居場所がなかったので一服を兼ねて一旦外に出た。
乗船までの時間つぶしにカミさんに進捗報告を兼ねてコールしてみた。ターミナルが混雑していて一息付ける所がないんだよねぇと話すと、そんなときのためにイス持って行ってるんじゃん!とツッコまれた。
そうだった!日食観測の時に場所取り用を兼ねて折り畳みイスを鞄に忍ばせてあったのだ。確かにこんな時こそ出番じゃないかw
それからもうひとしきりカミさんと会話した後、鞄からそのイスを取り出す。奥の方に入り込んでて手こずったが、腰掛けたらすごく楽ちん。が、1分もしないうちに乗船開始のアナウンスが流れてきた。あれ、随分早い。恐らく混雑するから早めに乗船開始にしたのだろう。
だったらさっさと乗船して自分の居場所を確保した方がよさそうだ。せっかくイスを引っ張り出したのにすぐにしまうことになってしまったのが癪だが。。。