奄美皆既日食観測ツアー【17】(2009/07/22)

見えるか!?皆既日食:


・・・いや、冒頭で見れなかったと書いてしまっているので、こんなサブタイトルで煽ってもしょうがないのだが。。。


これまで19日の晩にホテルで宿泊した以外は、フェリーの廊下やネットカフェの畳の上での仮眠しか取れておらず、いい感じに熟成されつつあった自分にとって、車中泊とはいえ周囲に人家の明かりひとつない真っ暗闇と柔らかなシートでの睡眠はどこまでも深い眠りに落ちることができる最高の環境だった。

おかげで目が覚めたら8:30を回っていた。食の始まりは9:35だそうでもう1時間しかない。慌てて周囲を見回す。
自分が観測場所と決めた駐車場の真ん前のポイントはまだ誰もいなかった。もしそこが他の観測者に占拠されてしまっていたら、何のためにここを選んだのか分からなくなってしまう。

ただし5、6台分ある駐車場はいつの間にか車で埋め尽くされていて、思いのほかここを観測場所にしようと思っている人が多いことに驚いた。

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頭上を見上げると薄雲が漂う微妙な空が広がっている。今のところ太陽は見えているが、薄雲に遮られてぼんやりとしている。そのうえ時折やや厚い雲が流れてきて一時隠れてしまうこともある。この後この雲がどこかになくなってくれたらベストなのだが、この分だと流石にそれは期待できなさそうだ。
もしこの状態で日食が始まったら太陽が隠れゆく様は見られると思うが、皆既日食の際に観測できるダイヤモンドリングやコロナなどは見ることが難しそうだ。それでもこれ以上に曇るというのならこのままでいてくれた方が良い。どうにかあと2時間、持ちこたえてくれることを願わずにはいられない。


とりあえず買ってきたパンをかじりながら9時になるまで車内でぼんやりと過ごした。その辺りでふと思いついてラジオを付けてみた。
丁度チャンネルが奄美のローカル放送局であるデイ!ウェイヴになっていて、日食の特番を組んで放送中だった。いつものスタジオから移動して今は奄美パークの特設会場で放送をしているそうだ。

思っていたよりも人の集まり具合は緩やかだ。ぽつぽつとここを通り抜けていく人はいるが、旧道の奥の方へ移動していくので自分の観測ポイントの辺りにはまだ誰もいない。ここなら車のエアコンで涼みながら出陣のタイミングを見極められるのでなかなか良好なポジションを選んだと思う。

ラジオからしきりに、あと〇分で日食が始まりますというカウントダウンのコメントが入る。これはありがたかった。時計に集中していなくとも見逃す心配がない。そういえば沢尻氏夫妻がこの島に来ている筈なのだが、番組中は沢尻のさの字も聞かれなかった。流石に地元ラジオ局にとって島きっての世紀の大イベントと芸能界のゴシップでは天秤にかける必要もないのだろう。東京のキー局の番組なんかでは取り上げられていたのかもしれないが。あまりのスルーっぷりに今頃滞在先のホテルで地団太踏んでいるかもしれないw


そうこうするうちに9:15になったのでセッティングを開始。

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今回、撮影の機材はなんと4台もある。内訳は、

  • 同僚から借りた一眼レフ → これは三脚に固定して日食の有様を定点観測する
  • 家のビデオカメラ → こちらも固定で動画撮影を行う
  • 家のコンパクトデジカメ → 周囲の撮影用
  • 別の知人から借りたデジカメ → 借りたというか撮影を頼まれた。とりあえずこのカメラはサブ用途とする予定

である。物々しい布陣だが、残念ながら自分の腕は4本もないし目は2個しかない。なので全てに気を配りながらの撮影は流石に難しい。最低限2台のカメラだけは撮り逃しのないようにしたいところだ。ちなみに一眼レフカメラはレンズを太陽光に向けていると壊れる可能性があるらしい。借りものを壊したら一大事なので熱と直射日光を遮るために普段はタオルをかけておくようにした。

周囲を見回してもこのような布陣で臨んでいる観測者は自分以外に居なかった。それだけに小間物屋状態で機材を展開している自分がやや恥ずかしかった。まぁマニアのおじさんたちに囲まれるよりは良いのだが。
見た感じみな地元の人らしく、ふらっと見物に来ただけのような出で立ちだ。ほとんどの人はカメラなんか持っていない。構えていたとしても携帯のカメラだ。


カメラをセッティングしていたら、車のラジオから第一接触が始まりましたという声が聞こえた。第一接触とは月が太陽と重なり始める瞬間を指す言葉である。第二は皆既の始まり、第三はその終わり、そして第四は月が太陽から完全に離れるタイミングをそれぞれ指す。ついに始まった!

そのタイミングで一度日食グラスで太陽を見てみた。が、当たり前だが太陽はまん丸のままだった。空模様もさっきと全く変わらない。

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こちらは10:03に撮影したもの。第一接触から30分弱経過した。太陽がわずかに欠けているのが見えて地味に感動。この写真はカメラのレンズの前に日食グラスを当てて撮影したものだ。

太陽が欠けて見えることは通常ないのでなんとも不思議だ。その欠け方もファンタジー系の漫画に描かれる三日月のような欠け方である。小学校の時に理科の先生がそうしたファンタジー系の月のイラストを手に、月の満ち欠けではこのような欠け方はしませんと話していたことを思い出した。


ぶっちゃけ第二接触が始まる前までは暇である。徐々に欠けていくのみなので目まぐるしいイベントがなく、10分おきくらいにシャッターを切るくらいなものだ。ただ、ある程度ズームで寄せていると思いのほか太陽の動きが大きく、ぼんやりしているといつの間にか太陽がフレームアウトしている。それで位置を直そうとアングルを変えている時にうっかり太陽を見失ったりするとちょっと焦る。

その時、自分の隣のエリアに陣取った女性から声をかけられた。

「日食ってデジカメで写せますか?」

なんだそのバナナはおやつに入りますか?みたいな質問は。。。やってみたらええがなと思ったが、それだとイヤミなマニアのおじさんになってしまうので、太陽光が強い時は多分まともに撮れないと思うけど、皆既日食の前後とか光が弱まっている時なら大丈夫だと思いますよと優しく回答した。

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10:31。皆既の始まる25分ほど前の空の様子。幾分空が暗くなってきた気がする。ただ同時に雲が空全体を覆い始めたので、そのせいであるような気もする。

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10:35。太陽の光は見えている。が、雲のせいで欠けている様子が分からない。本来ならもう太陽の半分ほどが既に隠れている筈だ。光が弱くなっているので日食グラス越しに見ると太陽が見えなくなってしまう。ただそれが太陽光が弱まって来たからなのか、厚い雲に覆われているせいなのかは分からない。

どうにかこの後30分ほど雲が切れてくれないだろうか。。。心の中で願い続けるが全くそういう気配がない。

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10:52。この数分前ごろから空が明らかに暗くなっているのが分かるようになった。直射が弱くなったせいか、日陰に入ったような涼しさを感じる。

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10:55。もう間もなく皆既日食が始まる頃合いだが、ご覧のとおり丸い太陽が見えるばかりで、あと数分でこれが隠れるという感じがしない。。。
もっとも、写真はカメラをズームして撮影したものなので、前に掲載した写真と同じような大きさに見えているが、実際にはさっきよりだいぶ小さくなっている。ただそれすらも日食のせいなのか厚い雲のせいなのかが判別できなかった。いかんせん皆既日食を見たことがないので、どういう経過を辿るのかがよく分からない。

子どもの頃に部分日食を見たことがあるのだが、その時は空が全く暗くならなかった記憶がある。それで太陽はある程度遮られても感じられる光量には大きな差がないのだと知った。皆既日食では最終的に太陽が全て隠れるので流石にそこまで行けば空は随分と暗くなる筈だが、どの辺からそういう変化が現れるのかが分からない。なのでこの暗さが雲によるものなのかが判断できないのだ。まぁ日食によるものなのだろうとは思うのだが。ともかく太陽が欠けてゆく様が分からないのがもどかしい。

もはや肉眼で直視しても眩しさを感じないくらいの弱い光になっている。もう流石にこの状態から雲が切れることはないだろう。少しがっかりした気持ちになる。

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こうして空が徐々に暗くなっていく30分あまりの間に、目の前の奄美空港から飛行機が3機ばかり離陸していくのが見えた。
1機は旅客機だったので単なる定時の離陸だと思うが残りの2機はセスナ機だった。ということはあいつらは上空で雲の上から日食を見てやろうと考えているのだな。言ってもしょうがないがあえて言う。ズルい!

というか、あの旅客機の乗客は飛行機の窓から日食が見られる筈である。もちろん全く興味のない人も乗り合わせているのだと思うが、偶然搭乗した人はラッキーだなと思った。

Posted by gen_charly