奄美皆既日食観測ツアー【18】(2009/07/22)
皆既日食:
10:54。いよいよ空は夕方のような暗さになって来た。流石にここまで暗くなると、それが厚い雲のせいではないことは明らかである。
なんだか夜明け前の空のような雰囲気だが、それともグラデーションの仕方がちょっと違う気がする。見たことがありそうでない空の色だ。そしてここまで来るともう間もなく皆既である。島の上空はこんな空だが、東の方はまだ雲が薄い所が残っているようだ。あの辺りまで行けば太陽が見えるかもしれないのに!
そして。。。
10:55。空の一点に収束しつつあった太陽の光がとうとうその姿を消した。厚い雲にいよいよ隠されてしまったのではないかと疑ってしまうようなボンヤリとした消滅であった。もちろん本来なら観測できる筈のダイヤモンドリングもコロナの噴き出す様子も一切見れなかった。。。
10:55。その直後、周囲からは拍手や歓声が沸き起こった。西の空が夜の様な暗さになっているのを見て皆既日食の真っただ中にいることを実感する。
10:55。一方、反対の東の空は朝焼けの様な色合いを残している。全ての物が切り絵のような黒一色の物体となる。見物している人たちは世紀の大スペクタクルに圧倒されて、小さな声で、おお~とため息を漏らしているのが聞こえる。意外に馬鹿騒ぎをしている人はいなかった。そして夜が訪れたと勘違いしたのか、さっきまでやかましいくらいに騒いでいたセミの声や鳥のさえずりが全く聞こえなくなり、辺りは静寂に包まれた。
自分はその感動を誰と共感することもなく、ただ淡々とビデオカメラを回し続け、カメラのシャッターを押し続けた。
10:58。およそ3分ほどの静寂の後、空の一点が再び光り始めた。それと同時に空が急速に明るさを取り戻し始め、鳥やセミもほどなく日常を取り戻した。
これで、昨年10月からあの手この手を駆使してようやく訪れた奄美大島での皆既日食の観測は終わった。
ラジオから、日食はまだこの後も第四接触まで続きますのでぜひ皆さん最後まで観測を続けてください、と何度も繰り返しているのが聞こえた。が、この曇り空では天体観測を趣味にするもの以外、この後の天文ショーは変化の少ない余興でしかない。
多くの見物客は、終わった終わった~という空気感を醸し出しながら三々五々撤収を始めている。
11:04。一瞬見えた太陽はその直後に流れてきた厚い雲に隠され、再び見えなくなってしまった。これが皆既日食中じゃなくて良かった。。。
ラジオのDJは最後まで見てってくれよなと言っているがこれでは見ようがない。撤収やむなしだ。
それにしても皆既日食が終わった僅か5分後にはこれである。本当にギリギリのタイミングまで雲が持ちこたえてくれたのだな。ダイヤモンドリングが見えなかった、なんていうのは贅沢かもしれない。
実際、ねぐらに戻った後に知ったのだが、最も長い皆既時間を誇ったあの悪石島は、皆既日食の少し前から大雨に見舞われたらしく、一時撤収命令が出されるほどの荒れ模様となったそうだ。プラチナチケットを手にしてそんな結末では救われないなんてものじゃない。やはり自分はラッキーだったと思った方がよさそうだ。
もっとも、お隣の喜界島では雲のない状態での観測に成功したらしい。それを聞くと、どうにか喜界島に行っておけばよかったかなと思わなくもないが、レンタカーも宿もない状態では仮に上陸できたとしてもにっちもさっちもいかない。そう考えると自分にとっては奄美大島で観測することが最善だったのだろう。
帰還:
さて、見物客が続々と撤収している。恐らく他の場所で見物している人たちも同じような行動に移るだろう。そうなると道が混むと思うので自分も撤収開始。荷物を積み込んで車を出したらもう目の前の道が渋滞を始めていた。凄いな、奄美の人間は皆せっかちか?
このまま渋滞の流れに乗ってダラダラ進むのはダルいので途中で右折して山を越えた西海岸側に移動した。昨日ロケハンで何度か行き来した道である。ロケハンがこんな所で役立つとは。西海岸に降りて国道58号に入るとこちらは全然ガラガラだった。やっぱりこちら側で観測した人は少なかったようだ。だったら前肥田漁港で観測してもよかったかな。
運転している間、例のデイ!ウェイヴをずっと流していたのだが、奄美パークで観測に参加したという専門家がコメントしていた。雲のせいでダイヤモンドリングやコロナが観測できなかったことを残念と捉える向きもあるが、皆既日食を経験できたということ自体が貴重なことなので全てを受け入れることが大切だみたいなことを言っていた。悔しかったんだろうな。なんかそのキリストの教えみたいなコメントが自分のことを言っているような気がしてギクッとなった。言っていることはもっともである。受け入れなきゃいかんよな。というか沢尻はどうした?
それはさておき、国道は途中の龍郷という街で奄美パーク方面からの県道と合流する。この辺りだけ少し混んでいたが10分ほどで抜け、その先は順調に市内まで戻ってくることが出来た。
ベースキャンプに戻る前に件のダイエーに寄って空箱を物色してきた。日食の観測も済んだし明日の夜にはもう帰宅なのでほとんどの荷物が不要になる。なので宅配便で発送してしまおうという寸法だ。これは2000年に札幌のS君の家を訪ねた時に見出したライフハックなのだが、後日自宅に荷物が届けられると、カミさんからは甘ったれてんじゃねーと叱られた。。。
ベースキャンプに戻って不要なものを空箱に詰め込む。受付のおばさんに相談したら発送対応してくれるというのでお願いした。
さて、本日のメインイベントもつつがなく終わり、あとは明日早朝の船の時間まで特にやることがない。とはいえ空も曇っているし、なんとなく気が抜けちゃって今からどこかへドライブへ行こうという気にもなれなかった。遠出しないならレンタカーも不要になるので返却してしまうことにした。
昨日は風呂に入っていないし、今日も海沿いで潮風を浴びながら汗もかいたのでとりあえずお風呂で汗を流したい。どうせなら広い風呂で足を伸ばして入りたいと思い、再び受付に行って近所に銭湯がないか尋ねてみた。おばさんはここにシャワールームがあるから入っていかれては?と提案をしてくれたのだが、湯船に浸かりたいんですよねぇというと近隣の銭湯を2軒教えてくれた。ただし両方とも15時からの営業とのこと。まだ2時間くらいあるので一旦ブースに戻ってひと眠りすることに。