富士山に登ろう【7】(2009/09/06)

そして頂上へ:


その岩場を通過すると進みが幾らか速くなった。が、既に頭痛は治まって意識もはっきりしている。なのでペースアップにも充分ついていくことができた。まぁ、ペースアップといっても牛歩が多少マシになった程度だが。

呼吸の際、外気が冷たくてそのまま吸い込むと喉の奥が痛かったので、首に巻いていたネックウォーマーを口元に引き上げてマスク代わりにしていた。こうすることで冷たい空気を吸わずに済むので喉は楽になったが、新鮮な空気が吸えないので息苦しさを感じる。どちらも苦痛なのでネックウォーマーを引きずり上げたり引きずりおろしたりを繰り返しながら登っていた。

空気はいよいよ乾燥しているらしく、外の空気を吸っていると口の中も乾いてくる。それがまた不快だったので水分を補給するのだが、沢山飲むと胃がまた反乱を起こしそうな気配が残っている。なんかもどかしい。

「頂上の鳥居が見えてきたよ!もうすぐ頂上だよ!」

カミさんが自分の脇で絶叫した。そう言われてみれば少し前にずいぶん遠くに見えていた鳥居がいつの間にか目前に迫っている。あれをくぐれば山頂である。もはやここまで来れば山頂到達はほぼ確定。ついにここまで来れたか。なんか感無量である。いやいや、歓喜にむせぶのはまだ早い。一歩一歩ゆっくり、しかし確実に進んでいくとやがて鳥居の下を通過となった。おめでとう、自分。ありがとう、カミさん。

 

空は幾分白み始め、漆黒から群青へグラデーションしている。驚いたことにこれだけ渋滞に巻き込まれながら日の出の前に頂上に到着することができた。頂上エリアに入れず登山道からご来光を眺めて終わるものだと思っていただけに、頑張った自分と自分に寄り添って登り続けてくれたカミさんにもうひとつご褒美がもらえたような気分だった。

これで日本で一番高い所に上り詰めたと言いたいところだが、日本最高所はここからお鉢巡りの方へもうひとしきり進んだ先に有る。せっかくここまで来たのだから、そこまで行ってみたいという思いもこみ上げるが無理は禁物である。まずは2度目にして頂上へ到着できた喜びを噛みしめようじゃないか。

 

いやいや喜ぶのは後。まずは別行動にて先行しているMちゃんとW氏に合流しなければ。待ち合わせ場所は鳥居近くとしていた。だがここはメッカなのか?と思うほど周囲に人があふれている。その中から2人を探し出すのは困難を極めた。ひとしきり目を凝らすが全く見当たらないので、もうひとつの鳥居の方と勘違いしているのではないかという話になった。

じゃあそっちに行ってみよう、とゆるゆると動いている人の波に紛れてもうひとつの鳥居がある方へと移動する。移動している最中に空はどんどん明るくなり、いよいよ日が昇りそうな状態になってしまった。

 

ご来光:


これを見逃してなるものかと、一旦合流は先送りにして空いている一角を陣取って東の空を眺めた。

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そして空の向こうから太陽が昇り始めてくるのが見えた。これがご来光か。

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麓に浮かぶ雲を抜けて緩やかに顔を覗かせる太陽。これまで初日の出を見るために何度か旅をしているが、その時に見た太陽以上に感動的な日の出だった。

辺りから、おお~というため息にも似た歓声が上がる。

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みんな一斉に太陽の方向を向いて、写真に撮る人、ビデオで撮影する人、肉眼で眺める人、様々だった。自分はあまのじゃくなのでそういう時に後ろを振り返る。振り返ったらご来光を眺めて感動に浸る人たちの後ろに綺麗な満月が出ていた。満月が、なんだよ俺の方も見てくれよといじけているような気がした。俺は見てるよw

しかし見事に抜けるような青空だ。富士山頂でこれほどまでに綺麗に晴れ渡る中でご来光を眺められることはどのくらいあるのだろう。なんか奇跡っぽい。

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それにしても凄い人だなぁ。高々日の出を見るためにこんな所まできて・・・そうまでして見たいものかね?と、ここに到着するまで思っていたが、そうまでして見る価値のあるものなのだとこの時理解した。

下山道が混雑することを嫌ってか早々に下山を開始している人がチラホラいる。気の早い人たちだ。。。

自分らは太陽がそこそこの高さに登るまで暫く見とれていたが、ふと早く合流しないと彼らが心配すると思い2人を探すことにした。カミさんが言うもうひとつの鳥居の方まで歩いて行ってみたが、その周辺にも2人の姿は見えなかった。

もう一度最初の鳥居の方へ戻ってみよう、ということになったのだが、もはや人の流れが一方通行になっていて流れに逆らって進めなかった。仕方ないので途中にあるベンチに腰掛けて、運よく2人が通りがかるのを待つことにした。まぁ、ここまで来たら最悪五合目で合流できれば大丈夫だと思うので見つからなかったら下山だ。

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ベンチから見た幾分高いところまで登った太陽がまた神々しかった。周囲を見回すと今回の登山における一大イベントを無事に見届けて気が抜けたようになっている人が沢山いた。かくいう自分もその状態である。太陽から降り注ぐ熱が何とも心地よくいつの間にかウトウトとしていた。考えてみればほぼ完徹である。眠くないわけがない。

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麓の方向をズームで狙ってみたらトイカメラで撮影したような写真が撮れた。

自分がウトウトしている横でカミさんはご来光の余韻に浸っていたらしい。ふとカミさんが歓声を上げるのが聞こえて目を覚ますと2人が我々を見つけてくれて無事合流と相成った。とりあえず頭痛は無事治まったこと、ご来光も無事見ることができたことを報告。登った所の鳥居の辺りは見たんだけど2人が見つからなかったという話をしたら、ずっとその辺にいたよと言われた。まぁ、あの混雑だからな。

そんな感じで一頻り雑談を交わしつつ休憩して、程よき所で下山開始となった。

Posted by gen_charly