身延・東松山【4】(2010/04/11)
地球観測センターの思い出話:
鳩山町といえば、ここ最近は夏場にかなりの高温を叩き出す街として知られつつあるが、JAXA(当時はNASDA)の地球観測センターという施設があることでも一部にはよく知られている。
ある時顧問が久しぶりに部室に顔を出したと思ったら、全員でこの地球観測センターへ見学に行きましょうと言い出した。もちろんマイクロバスなどない。自転車で行こうというのだ。簡単に言ってくれるが地球観測センターは学校のある場所から結構離れていて、そのうえちょっとした山の中にある。30分ほど田んぼの中を走った後、45分ほど山登りをしてようやくたどり着くような場所だ。そこに自転車で行けというのですか。
いや、自分は当時、1時間でも2時間でも自転車を漕いでいられるいっぱしのチャリダーだったので、その行程に特段の不安はなかったが、他の部員は体を動かすこととは対極に位置するもやしっ子とやる気のない帰宅部員である。全員がたどり着けるのだろうか・・・。
だが意外にも全員、無事地球観測センターにたどり着いた。
実はその顧問は柔道部の顧問を兼任している、というかそっちがメインで活動している人で、時々こうした体育会系の行軍を部員に強いることがあったのだ。拒否すると強制的に柔道部へ移籍させられるというウワサがあり、もやしっ子もやる気ナシ夫も拒否権がなかったので、歯を食いしばってやり切るしかなかったというわけだ。そのくせ当の顧問はスクーターにまたがっていたな。
顧問がここへ行こうと言い出したのはもちろん資料館を見学するためでもあったが、理科の授業で使う教材として気象衛星ひまわりが撮影した衛星写真の原本を分けてもらえないか交渉するためでもあった。館内でNASDAの職員と交渉したようなのだが、ひまわり画像は1枚7万円もするらしく、教材費では買えないとがっかりしていた。
見学を終えてそのまま帰宅するのかと思いきや、続けて葛袋に行くと言い出した。葛袋というのは今登ってきた山の麓の方にある集落で、サメの化石が出ることで知られている場所だ。そこへ発掘をしに行こうというのだ。部員ほぼ一同疲労困憊の色を隠せない状態だったが、拒否権がないので行くしかない。

▲その時の写真
そうして日が暮れるまでみっちりとしごかれて解散となったのだった。意外な体育会系の一面に面食らった帰宅希望部員は、その後他の部活に転部していった。そりゃそうなるよな・・・。
あれ、何の話だっけ?wそうそう、地球観測センターから葛袋へ向かう途中に今回立ち寄った岩殿観音があり、顧問が小休止と言って立ち寄ったんだった。ひと気のない寂しい寺だなと思ったのだが、今回改めて来てみたら、その鄙びた感じが何ともいえない趣深い場所だと考えを新たにした。
しかもここでも桜が満開に咲き誇っていた。
こうしてみると随分と風流を感じるお寺である。せっかくだからのんびりと境内を散策しようと思ったら雨が降り出してきてしまった。やむを得ず退散。
まぁ、ぼちぼち頃良い時間になってきたので、最後に東松山名物のやきとりを食べに行って帰ることにした。
やきとりひびき:
数年前のB級グルメブームに乗って、最近やきとりが東松山の新たな地元グルメとして知られるようになってきた。自分が埼玉にいた頃は完全なるローカルフードで、隣町に住んでいる自分ですらそんな話を聞いたこともなかった。
そのやきとりの店は東武東上線の東松山駅の近隣に数軒点在しているそうだ。予習を全くしていないので有名店の存在はおろか、そもそもどこで買えるのかすら分からない。とりあえず東松山駅に行ってみようということで、岩殿観音から30分ほど。駅に着く頃には雨も上がっていたので東口駅前の駐車場に車を置いて散策してみることにした。
駅前は再開発が進められていて小奇麗に整備されつつあった。以前の古臭くてあか抜けない駅前も好きだったのだが。
それはさておき、駅前ロータリーの目の前にデデン!とやきとり屋の看板が見える。

店の名前はひびきという。「響き」かと思ったら「日疋」の字をあてるらしい。前述のとおり何の下調べもしていない状況での訪問だったので労せず見つけることができたこの店で食べてみることにした。
さて、食べたことのある人はご存じのとおり、この店で提供される料理は焼き鳥ではない。豚のカシラ肉を串に刺して焼いた串焼きをやきとりと称しているのだ。物の区別が適当だなと思うが、同じようにやきとりといいつつ豚の串焼きを提供しているところは他にもあるので、案外この言い回しは普遍的に認知されているのかもしれない。

この店はレジで注文してから焼いてもらうスタイル。隣の壺は味噌だれが入っている。肉自体に味が付いているのでそのまま食べても普通に美味しいが、味噌だれを付けて食べるとコクがアップしてまた一味違った感じになる。
といっても元の味が強いので、付けすぎるとしょっぱくなってしまうので注意が必要。この料理は元々近隣の飲み屋のつまみだったものなので、ちびちび食べる前提で味が濃いのだろう。おかずとして食べても美味そうだが、やっぱり酒のアテにするのが一番うまそうな気がした。酒飲めないから知らないけど。
しかし繰り返しになるが、東松山の人たちがこんなものを食べていたなんて全く知らなかった。さては内緒にしていたなw
坂戸と東松山は隣町同士ではあるのだが、なぜか埼玉県をいくつかのエリアに区切ると大抵その境目になってしまうのだった。地域が属する郡でいうと坂戸が入間郡で東松山は比企郡のエリアになるし、電話番号の市外局番は坂戸が0492、東松山が0493(今はどちらも049)と分かれる。更に車のナンバーも坂戸は所沢ナンバー(今は川越ナンバー)だが、東松山は熊谷ナンバーといった具合だ。
そういうバックグラウンドがあるせいか分からないが、住民の気風は少し違っていた印象がある。より古くから発展していたのは東松山だが、早くからベッドタウンとして開発されたのは坂戸なので、千葉と埼玉くらいのライバル意識があったような気がする。どちらも心の中で〇〇より上だと思っているような感じ。ぶっちゃけ自慢合戦になるとお隣の川越から目くそ鼻くそと笑われるのが目に見えているので、表立って自慢するわけではないのだが、会話の端々にそうした意図が見え隠れしているような気がした。
自分が通っていた高校には両市の生徒がいた。坂戸の生徒は東松山の生徒に向けて「川向こうの原人」なんてからかうし、東松山の生徒は「川越のおまけ」なんて言い返す。そうなると近隣の鳩山とか鶴ヶ島とか吉見あたりの生徒が我関せずでフェードアウトしていくような感じ。何ともレベルの低い争いである・・・何の話だ?
ともかく、そんなわけで東松山の連中が坂戸の連中に教えたくなくて黙っていたな、と言いたかったのだ(もちろん言いがかり)。
ということで、今回のお出かけはこれでおしまい。東松山の散策はさわりだけになってしまったが、この辺りには全国区ではないB級スポットが点在しているので、そのうち改めて散策してレポートにまとめたいと思う。
(おわり)