信州ドライブ【13】(2010/09/20)
丸窓電車:
5200系の姿を拝むことは叶わなかったが、上田電鉄にはもうひとつ貴重な車両が残されている。それが丸窓電車と称される5250形である。この車両は3両製造されたのだが、現在まで全て現存している。そのうちの1両は近隣の長野計器の工場にあるということなので、まずはそこに訪問してみることに。

車両は道路に面した入口の見えやすいところに保存されていた。写真を見てもらうと分かると思うが、ドア横の窓(戸袋窓という)が円形になっている。大正時代に製造された車両によく見られた装飾的な窓で現存するのは貴重。地元住民からも丸窓電車として愛されたという。1986年に電圧を変更する工事が行われたことで、旧型の電車が走行できなくなり廃車となったのだが、それ以来今日まで保存されているのは、それだけ愛された電車だったことの証左だろう。
自分が鉄道ファンになる前、まだ小学生の頃だったと思うがマルシンハンバーグのCMにこの車両が登場していた。「忘れられない友がいて、忘れられない味がある」という名調子は今でも頭に残っている。まぁ、毎日のように見ていたアニメの合間のCMだったので、刷り込み効果があったのだろう。
さてこの車両だが、係の人に申し出れば車内を見学させてもらうことができるという情報を聞いていたのだが、車両の前に、係が不在のため公開できませんと書かれた立て看板が置かれていて、こちらもまたお預けを食らう格好となってしまった。考えてみたら休日だから工場はやっていないよな・・・。
気を取り直して、もう1か所車両が保存されている別所温泉駅へも行ってみることにした。


車両は駅近くの留置線に停められていて、駅構内に入場しなくても近くへ行くことができるようになっていた。ただ、写真のとおり保存の状態はあまり良くない状況で、また手すりや看板などが邪魔をしてイマイチ写真に撮りづらかった。こちらも車内を公開しているとのことだったが、訪れた日は扉にカギがかかっていて見学することはできなかった。なんか全体的に上田電鉄に嫌われている・・・。
別所温泉 大湯:
駅の名前にもなっているとおり、この辺りは別所温泉の温泉街になっている。別所温泉は歴史のある出湯であるそうで、せっかくなのでひと風呂浴びていくことにした。駅でもらった観光マップによると温泉街の中に数軒の共同浴場があるそうだ。その中でも一番規模の大きいその名も大湯というのがあるそうなのでそこに行ってみることに。
一旦車に戻って風呂道具を引っ張り出し、代わりにいらないものを全部置いて出発。大湯までは駅前の道をひたすら歩いて行けばよいのだが、途中なかなかな急坂があったりして少々へこたれた。
やがて道が突き当たりのようになるとそこにあるのが大湯である。軒先に飲泉場があったので一口含んでみたら、それはゆで卵の風味のお湯だった。この温泉は硫黄泉とのことなので硫黄の香りがするのは至極当然なのだが、予想はできても実際に味わったことはない。なんだか不思議な味だった。ちなみに硫黄泉ということもあり、大量に飲むのはNGだそうだ。
それから湯舟の方へ。大湯を称するだけあって湯舟は結構な大きさがあった。更に露天風呂も付いている。公衆浴場の露天風呂は珍しい気がする。湯加減は熱すぎず温すぎずという感じで、41度くらいと思われるが、露天風呂の方はそれよりもぬるめだった。なので時間をかけてゆっくり浸かるには露天風呂が最高なのだが、そこから道向かいの旅館の廊下が見える。ということは向こうからはこちらが丸見えということだ。一応窓はカーテンが閉められているので、あえてめくらなければ見えることもないのだろうが何だかなぁという感じである。まぁ、オッサンの裸見て喜ぶ人間はあまりいないと思うので実害はないと思うが。
洗い場はシャワーなしなので、体を流す時はケロリンの桶にお湯を貯めて流す。自分が子供の頃住んでいた家にはシャワーが付いていなかったのでもっぱら湯舟のお湯を汲んで体を流していた。それを思い出させてくれてなんか懐かしかった。地元のおじいさんたちはカランからお湯を汲むのがまどろっこしいのか、湯舟のお湯を掬ってバサバサかぶっていた。ちなみに頭を流す時に硫黄の香りがしたので、カランから出るお湯も温泉であるようだ。
名湯の名に恥じない良く温まるお湯だった。風呂から上がって外のベンチでクールダウンさせていたら程なくカミさんも上がってきた。どちらからともなく、ぼちぼちお腹減ったねと言いだして、じゃあ昼食を食べていくかという話になった。
緊急事態発生:
それで温泉街をあてどなくぶらついてみたのだが、飲食店の類が少なく食事できる場所がなかなか見つからなかった。そのまま少し離れた方へ歩いて行くと、焼き鳥桂という店が開いているのを見つけた。焼き鳥屋というか居酒屋なのだが、ランチ営業をしていてラーメンなどが食べられるらしい。
もう店が見つからないからここでいいじゃない、といってこの店に入った。店内に客はおらずちょっと寂しい感じだったが、まぁ時間を外しているからかもしれない。

自分は肉うどんを注文。取り立てて特徴のない普通の肉うどんだった。

カミさんが注文したのはつけ麺。麺はラーメンだがつゆがそばつゆという一風変わったラーメンだった。その組み合わせは合うのかなと思ったが案外違和感なく食べられた。
麺を食べ終わってつゆをすすっている時にあることを思いだし、その途端背筋に冷たい物を感じた。ウチら金持ってるんだっけ?
自分らは温泉などに入浴する際は入浴中に盗まれることのないよう、基本的に財布は車に置いて入浴代+α程度の現金のみしか持ち歩かない。今しがたお風呂に入った後なので自分はほとんど現金の手持ちがない。多分カミさんも同じはずである。このままでは無銭飲食になってしまう・・・。
一足先に食事を済ませて店内のテレビで放映されていたドラマを見ていたカミさんに、お金持ってる?と小声で尋ねると、途端にカミさんの顔が青ざめた。やっぱり持っていないよね・・・。
自分が車に取りに行ってくるからカミさんは店で待っててというと、1人残されるのは嫌だと言った。わがまま言うでないと思ったが、まぁ1人じゃ心細い気持ちも分かる。じゃあちょっと取ってきてと頼んで、ここから駐車場までのざっくりとした道順を伝えてお使いに出した。
カミさんはそそくさと立ち上がり足早に店外に出ていった。心配なのはカミさんが方向音痴であることだ。無事に車まで辿り着いて、更にここまで戻って来られるか不安。まぁ、道迷いしたら携帯に連絡をよこしてくるだろう。丁度、店内の壁の一角にこの辺りの地図が掲示されていたので、もしカミさんから連絡があった時にガイドできるよう、改めて地図をおさらいしておくことにした。そしたら、また青ざめた。さっき説明した道順、間違ってる・・・。
どうも自分の中で把握していたこの店の位置と実際の位置がずれていたらしく、さっきカミさんに指示した道順で歩いて行くと駐車場のある方向とは真逆の方へ進んでしまうことが判明。これはまずい。カミさんに軌道修正してもらうため慌てて携帯にコールした。と、自分の1m向こうで着信音が聞こえた。あいつ携帯持って行ってねー!
これはまずいことになったぞ・・・。自分がこの店を出たら食い逃げになってしまうので、カミさんを探しに行くことができない。仮に出られたとしてもどこを歩いているのかなんて分からないのだから、すれ違いになるのが関の山だ。だけどカミさんが道迷いしたら最悪自分はここで何時間も待たなければならなくなるかもしれない。いや、戻って来てくれたらまだ良いがそのままどこぞで遭難なんて話になったら大変。
もう不安は最高潮である。だがどうすることもできないもどかしさ。まんじりともしない気持ちで座して待っていたら、意外にも20分ほどで戻ってきた。道が分からなくなって引き返してきたのかと思ったらカミさんの手にはしっかり財布を握られていた。ちゃんと取りに行けたんだ。どうやって辿り着けたのだろう?・・・全身脱力。
と、そんなわけでどうにか代金を支払うことができてことなきを得た。戻り道でカミさんに自分が間違った道を説明していたことを話し、どうやって車まで辿り着いたのか尋ねたら、そもそも初っぱなから自分が説明したのとは違う道へ進んでしまったらしい。それで途中で道が分からなくなって通行人に道を尋ねたりしながら駐車場にたどり着いたそうだ。方向音痴は相変わらずだが、恐るべきサバイバル能力である・・・。