石川逃避行 - 3(2011/03/19)
時計を見ると16時過ぎを指していました。
いくら雪は降っていないと言っても、3月の北陸で車中泊は流石に寒そうだなと思ったので、どこか安宿で一泊しない?とカミさんに提案すると、最初はあまり乗り気ではなかったのですが、次第にまぁ、いいか、と消極的に賛成してくれました。
女湯の隣には「山中座」という山中節の公演が見れるという演舞場があり、その一画に観光案内所があったので、そこで聞いてみることに。
窓口に居た人が朝食つきで6500円の宿があると教えてくれました。
6500円ならまぁいいか、と思って早速その宿に電話してみると、6500円の部屋は満室で、今あるのは少し広めの7000円の部屋になるとのこと。
まぁ、たまの宿泊だから7000円でもいいか、ということになり、それを申し込むことにしました。
まずはチェックインをしようと宿に出向くと、その宿は割と風情ある感じの外観なのに余り人気が無く、外で従業員の人が手持ち無沙汰にしていました。
なんだか微妙だなぁ。。。と思いつつ、車を降りるとその従業員が近寄ってきて、荷物を持って中に案内してくれました。
とりあえずチェックインを済ませて、所定の部屋番号のドアを開けるとちょっとびっくり。
明かりのついていない廊下の雰囲気が、なぜか自宅に帰ってきたような錯覚に陥りました。
それで部屋の電気をつけると、部屋の構造が少し見えてきました。
和室2室の続き間プランと言えば、温泉宿では非常に豪華な作りの部屋になるのですが、ここはどちらかというと20年位前のマンションの一室、といった方がしっくり来そうです。
何がって、宿なのにダイニングキッチンが有るんですよ。
入口入ってすぐの部屋がキッチンで、奥に黄緑色の年代を感じさせるシステムキッチンがあり、手前には木製のダイニングテーブルと4客のイスが置かれ、何ともいえない生活感をかもし出しています。。。
小さめの冷蔵庫が置かれただけの微妙な殺風景さが単身赴任のお父さんの家にでも来た時のような気分になりました。
その隣が6畳ほどの和室で、布団が二客敷いてありました。
突き当りの部屋が居間となる和室で、ここだけは座椅子と座卓が置かれ、旅館然としている部屋でした。
窓際の縁側にはテーブルと二客のソファーが置かれ、窓の外からは鶴仙溪が一望でき、その辺りだけはなかなかいい雰囲気をかもし出しています。
まぁ、この部屋にいればそれなりに宿に泊まっているような気になれそうです。
特徴的な間取りの部屋に面食らってあちこち眺めてしまいましたが、何はともあれ、腹が減ってしまいました。
夕食なしプランなので、まずは荷物を置いて晩御飯の調達に。
折角キッチンが付いている宿なので、部屋でのんびり夕食を楽しむのも良さそうだということで、近所のスーパーで食材を買出してきました。
キッチンが付いているといっても、鍋や包丁などの調理器具もガスコンロも無く、使えるのは冷蔵庫と電子レンジとポットのみだったので、お惣菜が中心ですが、それでもテーブルの上に並べて見るとまぁそれなりに豊かな食卓になりました。
テレビをつけると地元ニュースでは、さほど普段と変わらないような内容のニュースが流れるのですが、東京キー局の番組では原発関連の特集が組まれ、震災関連報道が続いていました。
その一方、こちらまでは地震が伝わってこないので、全く揺れることがなく、数時間おきに揺れが来ていた当時の感覚からすると、異世界にでも来てしまったかのような変な感じになります。
それなのに、延々と流れ続ける震災報道は、こちらの人にとっては多分あまりピンとこないだろうし、なんだか押し付けがましく映っているんじゃないかな、と思うと何とも微妙な気持ちになりました。
CMはスポンサー各社が自粛をしてしまったために、ACのCMばかりが流れ、何度も何度も「ぽぽぽぽーん♪」 と聞いていると頭から離れなくなってしまいます。
こんな状態は、昭和天皇が崩御された時以来な気がします。。。
それでも他に見るものもなく、ぼんやりとそんな番組を見ていたのですが、それはさておき、この部屋はエアコンが一台しかなく、しかも性能の低いものなので、全力で最高温度に設定していても、部屋が一向に暖まらず、何とも落ち着きません。
安宿なので、こんなものなのかなぁ、と部屋の仕切りのふすまを閉めたりして少しでも温かくなるよう努力してみましたが、焼け石に水でした。。。
なので、温泉で暖まってこようと繰り出してみることにしました。
ここの温泉は露天風呂になっているというので行ってみると、何だか廊下の途中に唐突に外に出る扉があってそこから裏庭を少し歩くと衝立で仕切られた湯船があります。
3連休の初日というのに、廊下を歩いていても殆ど人とすれ違うことも無く、露天風呂も貸し切り状態。
これはこれでラッキーといえなくも無いのですが、露天風呂は温度がぬるくていくら浸かっても体が暖まらず、だんだんふやけてきたので結局そこそこにして上がってしまいました。
なんとなく薄暗い廊下を通って再び部屋に戻ったものの、相変わらず部屋の中は寒いままで、何ともいえない惨めな気持ちになりました。。。
居間の方ですら、浴衣でいるとなんとなく寒いくらいで、続き間の方は吐く息が白くなるほど冷え切っていて、そんなところで寝る気にはなれなかったので、居間を片付けてそっちに布団を敷きなおして、布団に包まりながらまた暫くテレビをみて、早々に就寝と相成りました。