— 思うに任せない石垣積み —
割と古い建物なので、今回の地震であちこち壊れているのではないかと思っていましたが、建物自体はさほど影響ないようです。
ただ、よく見ると、入り口のガラス戸が傾いているのが分かります。
建物が若干ゆがんでいる様子です。。。
岩手に来る前に聞いていた、庭の石垣もだいぶ派手に崩れていました。
それよりも、少し高台にある隣の家のブロック塀の亀裂が深刻で、大きい揺れが来たら土台ごと崩れてしまうかもしれません。
家に上がってみると、中の家具などは一通り片付いていました。
聞くと、原付が来る前にどうにか片づけが済んだということです。
片づけをするつもりでやってきたので少し拍子抜けしてしまいました。
しかし住人がいなくなった家は徐々にくたびれていくようで、歩くと所々床が柔らかくなっているところがあったりします。
ということで、原付と従弟に課せられた指令は、崩れた石垣の片付け。
軍手をはめて早速取り掛かります。
おばさんは畑の草むしりをしているそうです。
石垣は50センチくらいの高さのものなので大したことはないと思っていたのですが、見た目は小さい石も持ってみると意外に重いものです。
石垣を組んでセメントで固めていたらしく、大体ここだろうな、と当たりをつけてはめ込んでいきますが、なかなかきれいに収まりません。。。
それもその筈、よくよく見ると石垣の上にあたる建物の土台部分のコンクリートが一部で割れて5センチほどの段差になっています。
ここも敷地の土台の土が石垣の方向に向かっていくらか沈下してしまった様子です。
その分、建物も石垣方向に少し傾いてしまって、一番上の写真の通りのサッシのずれになっていたわけです。
これでは、石垣が完全に組み上げられず、隙間が出来てしまいます。
それだとちょっとした地震でまた崩れてしまいます。
そのことをおばさんに話すと、まぁ、それでもよい、ということなので、出来る限り石垣の隙間に石を詰め込んで、 余った分は上に上げておくことになりました。
1時間ちょっと格闘してどうにかひと段落しました。
庭のテラスに放置された椅子に腰掛けて、眼下に見える国道を眺めながら小休止。
時折吹き抜ける風が涼しくて汗が引いていきます。
「今は誰も住んでいないけど、誰も住まなくなると家って傷むんだね。」
「昔はこのテラスにみんなで集まってバーベキューをやったんだよな。」
「親戚のおじさんは酔っ払って線路の方に行って電車にはねられたし。。。あの時は電車は止まるし、警察は来るしで大変だったなぁ。」
「土台も傾いているみたいだし、場合によってはここも取り壊しになるかもね。」
「思い出が沢山あるから、取り壊すのはしのびないなあ。」
「取り壊されてしまうなら、居間の柱は残したいなぁ。あそこに小さい頃、背比べした柱の傷が残っているからなぁ。」
「ここは石垣が崩れているけどまだいいほうで、両隣の家のほうが地盤が悪いんだって。片方は盛り土してるし、 もう片方はむかし沢だった所を埋め立ててるって言ってた。じいちゃんは土地を探す時にその辺は気にしたみたいでね。。。」
そんなことをとりとめもなく話していると、かわいい珍客が。
おばあちゃんの家は路地の突き当たりにあるのですが、敷地内まで3人の女の子がやってきました。
道がどこまで続いているのか探検しに来たようです。
おばさんが「どこからきたの?」と聞くと「おばあちゃんのうち」 と答えました。
地元で見ない子なので、田舎に遊びに来ているのだろうと思って、「(地元は)どこに住んでるの?」 ともう一度聞くと、意味が分からなかったのか「おばあちゃんのうち」 と同じ答えを繰り返しました。
ちぐはぐなやり取りを何度かして、結局どこから来た子供達なのかは分からないまま子供たちは去って行きました。
いっとき賑やかになったそのテラスは子供たちが去ってまた静かになりました。
「のどかだねぇ。」
「うん、のどかだ。」
「東京のせわしなさからすればこっちはどこにいてものどかだけど、岩手にいてもばあちゃんの家はのどかに感じるもの?」
「のどかだねぇ。のどかだけど時間が経つのが退屈しないね。」
「確かに。」
「そうだ!今年のお盆に時間が出来たらみんなで集まってここでバーベキューやろう!」
「いいねぇ。」
「コンロは用意するけど、電気と水道はどうしよう?」
「電気は通ってるけど、水道は壊れちゃったから水は出ないよ。」
「水はどうにかなるでしょ。電気通ってるなら問題ないよ。お盆にやろう!」
「時間取れるようにがんばるよ。」
そうしてお盆にバーベキューをやる約束をして、おばさんが「そろそろ行くか?」というので、 おばあちゃんの家を後に。
原付のお土産を買いに近所のスーパーに付き合ってもらうことになりました。
車で10分ちょっとでスーパーに到着。