岩手の地震の爪跡を訪ねて　-　４（2011/05/01）

— 小さい地震は気が付かない —

夕方頃におばさん宅に到着。
従弟は建物には大して問題がなかったようなことを言っていましたが、到着してみると確かに見た目は昔のままで、特に大きな被害は出ていないように見えました。

従弟一家も揃っていて、荷物を降ろしておばさんの淹れてくれたお茶で一服。
コストコで入手した支援物資を渡すと、幸い喜んでもらえました。

程よく夕方になってきたので、晩御飯を食べに連れて行ってもらえることになりました。

おじさんがちょっと前から気になっていた韓国料理の店があるというので市内へ出向いたのですが、おじさんが 「ここなんだけどね」と指差した店は小粋なイタリア料理でも出しそうな店構えで、 およそ韓国料理を出す店には見えません。

ドアを開けて中に入ると、ダイニング風のテーブルが並んでいて、やっぱり、間違ってイタ飯屋に来てしまったのではないかと不安な気持ちにさせられます。

席に通され、メニューを開くとチゲやらチヂミやら、韓国料理の名前がずらりと書かれているのを見てやっとここが本当に韓国料理の店だと飲み込めました。

大人数だったので、コースを頼むと暫くして大皿料理が出てきました。
作られた料理は店のいでたちに似合わず、思いのほか本格的（失礼！）で、しっかりと辛いキムチチゲもあって、美味しく食べることが出来ました。

家に戻って、リビングで近況などをおしゃべりしていると、徐々に３・１１の地震の時の話になってきました。

おばさんと従弟は次々に地震の記憶を話し始めました。

• 少し遅めのお昼を済ませたら、地震が来て、棚は倒れてくるし、色んな物が崩れてくるしで大変だった。
• 辺りの建物のガラスが一気に割れる音や、金属の部品などが落下する音がして、それが結構耳に残った。
• それで外に出ると、目の前の道が敷地とばらばらに動いていて気持ち悪かった。
• 食器棚に入れていた高価なコーヒーカップが飛び出して割れてしまい、なぜか安いものは壊れなかった。
• 棚の下に挟み込んで倒れにくくする転倒防止器具を付けていたが、結局倒れてしまって余り役に立たなかった。
• 庭の塀が崩れたので、業者に頼んで撤去してもらったけど、隣のうちの見晴らしがよくなってしまった。
• ２階の外壁の隅が全部割れちゃって、そのままにしておくと崩れそうだから業者に直してもらった。
• 地震の直前に納車されたばかりの車が車庫から崩れてきた荷物のせいで傷がついてしまった。
• 周辺を見て回ったら、傾いている家や崩れている家も結構ある。道路は道路であちこち地割れしている。
• ４月の余震の時もひどい揺れで、その時はリビングのテレビが倒れてしまった。
• その後、また停電になったけど、懐中電灯が見つからなくて、しょうがないから結婚式で貰ってきたキャンドルで凌いだ。
• これだけ大きい地震に立て続けにやられると、震度１とか２とかの揺れだと気が付かないことがある。
• 飼っている犬は地震という言葉が分かるようになったらしく、「地震きたよ！」と声をかけるとおびえてしまう。
• 直しても余震でまた壊れちゃうから、修理のお金ばかり出て行って困っている。
• 沿岸部に住んでいる親戚に津波で流された人がいて、残った人たちが離れた親族を頼って遠いところに疎開するというので、 暫く会えなくなるからと会いに行ってきた。
• 道路はまだ瓦礫が残って狭くなっているので、すれ違えないし、至る所に釘とかガラスが散乱しているので、 うっかり踏んでしまいそうで危なかった。
• おじいさんが亡くなってしまったが火葬場の手配は出来ないし、 やっと手配できたと思ったらガソリンの残りが少なくて斎場まで行くのが大変だったし、お墓も石がずれちゃったりして大変だった。

。。。。。。

到着した時は、普段と変わらない雰囲気で、「あ、いつもどおりにやっているんだな」 と思いましたが、実際には色々と深刻な被害を受けていたり、そういう光景を見てきた現実を知って軽くショックを受けたのですが、みんな不思議とあまり悲壮感無く話すので、なんだか遠くの地での出来事を聞いているようでもありました。

悲壮感が無いのは決して能天気な訳ではなく、沿岸部の被害の悲惨さを知っていて、「自分たちはまだまし」 という感覚があるからで、一般に忍耐強いと言われている典型的な東北の人としての振る舞いなんだと思います。

その後、風呂を頂いて、寝床を用意してもらった部屋に戻り、ネットで情報をチェック。

明日は平日で、従弟は仕事があるということなので、原付は一人です。
花巻電鉄の写真でも撮りに行って、その後は成り行きに任せてみようと思います。