— 天空の拝殿 —
ということで、次の目的地は「三峰神社」です。
国道140号をひたすら走っていくと秩父湖(二瀬ダム)の手前にある有名な信号にぶつかります。
この信号はとにかく待ち時間が長いことで有名で、うっかり赤信号に引っかかると信号が壊れているんじゃないかと疑いたくなるくらい待たされます。
今回も残念なことに信号は赤。
最近になって信号の脇に待ち時間表示が出るようになったようですが、ギアをパーキングに入れて一息つけるくらいの待ち時間が有ります。
待ち時間が長い理由は、信号を右に折れた先にあるトンネル。
すれ違い不可の一車線トンネルが延々と続いていて、更に途中でダムの堰堤に続く分岐があるため、3分岐それぞれの道を一方通行で順番に通行させなければならず、いきおい待ち時間が長くなってしまうと言う訳です。
堰堤のある側に左折し、これまたすれ違い不能な道幅の堰堤を抜けたところに、こちら側の信号があります。
信号を過ぎてからも道は細いまま続き、人気のない寂しい山道を少しずつ登って標高を稼いでいきます。
下を見ればダムの湖面がわずかに氷結して白い模様を作り、向こうを見れば山肌に雲の塊が絡みついてなかなか幻想的な光景が広がっています。
なんだか途方もない山奥へ来てしまったような気がして、うら寂しい気持ちになってくるのですが、暫く進むと三峰神社方面の分岐があり、そこから急に片側一車線の快適な道に変わります。
この道はかつて有料道路でしたが、現在は無料開放されています。
道は広くなったものの、勾配とカーブは急に厳しくなり、九十九折ので一気に高度を稼いで、最上部まで上ると駐車場に到着。
そこから鳥居までは軽い登りの遊歩道になっています。
雨も降り続き、しかも結構寒かったので、それなりに準備を整えて出発。
三峰神社は原付が中学生の頃に親に連れられて来たことがあるのですが、当時は麓の国道から三峰ロープウェーが出ていて、一気に神社の手前まで上って来れたのですが、これは数年前に廃止されてしまい、今は車でしか行けなくなってしまいました。
※ 1990年ごろのビデオのキャプチャ
ドライバー的には、険しい山道を延々登ってくることを考えればロープウェーで一本の方が相当安楽なので、廃止されたのは残念ですが、施設が老朽化して差し迫った状態になっていたそうで止むを得ない決定だったようです。
それはさておき、遊歩道を少し進むと大鳥居に迎えられます。
雨が一向に止まず雲も降りてきているのでぼやけた写真になってしまいました。。。
また辺りには雪が残っていて、ある程度の除雪は行き届いていますが、一部滑りやすくなっている場所もありました。
その参道を登っていくと、本殿の脇に出ます。
正面入り口的な参道を登ってきたのに本殿脇に出て来たのが妙な感じですが、良く見ると正面からも参道が伸びています。
実はこの正面の参道をずっと下っていくと、件の廃止になったロープウェイの駅に至ります。
この神社は恋愛成就にご利益があるそうで、絶賛彼氏募集中のYちゃんもそれは真剣にお祈りしていましたが、他にも境内には女性の参拝客が数人。
みな一様に真剣な表情でお参りしていました。
その様子は、ともすれば悲壮感すら漂わせるほどの真剣さで、こんな山奥に来てまで大ごとだなぁ、と思いながら原付夫妻もお参りを済ませました。
ちなみに、この神社には「興雲閣」という宿泊施設があり、日帰り入浴可能な温泉も沸いているとのこと。
これがまた、こんな山奥には似つかわしくない立派な建物で、トイレ休憩でお邪魔することに。
建物は昭和のテイストがそこかしこに感じる造りになっていて、興に乗ったら一度泊まってみたいなぁと思ったものの一泊1万円以上するそうで、 ちょっと無理かなぁw
トイレを済ませてからロビーのソファーに座ってコーヒー休憩をしている時にふと玄関先を見ると、奥の方に「えんむすびの木」 なるちょっと興味を惹かれる看板が出ていたので行ってみることに。
建物の脇を抜ける道をロープウェイの駅の方向へ行くと少し先に櫓が見えてきました。
これが、その櫓。
えんむすびの木は、この櫓の裏手にあります。
これが、えんむすびの木。
靄って分かりづらいですが、一つの根から生えた幹がすぐに二手に分かれ、付かず離れず真っ直ぐと延びています。
これは確かにご利益がありそうです。
雨に煙った山道は残雪と相まって何ともいえない風景を作り出し、一瞬ここが現世なのかどうかが分からなくなりそうです。。。
それから再び本殿に戻り、散策しながら麓に降りることにしました。
本殿のすぐ脇に小さなお社がいくつも並んでいる場所がありました。
一つ一つに「諏訪神社」とか「浅間神社」といった神社の名前が書かれています。
家に戻ってから調べたところによると、この場所は「摂末社(せつまっしゃ)」と呼ばれ、三峰神社に縁の深い神様を祀ったものだそうです。
それから、参道に直角に交わるように階段が続いている場所があり、そこも登ってみることにしました。
階段を登り切ると、展望台のような施設が作られていました。
ここは「遥拝殿(ようはいでん)」と呼ばれる場所で、奥の宮を遥拝するための場所だそうです。
景色はほぼホワイトアウト状態で奥の宮は望むべくもありませんが、遥拝殿の脇に延びる細い山道には雪の上に点々と足跡が残っていました。
柵も無く危険極まりない道にわざわざ入り込んで何処へ行くのでしょう。
それから参道を戻り、鳥居に到着。
ふとYちゃんが鳥居の両脇に鎮座する狛犬を見て、「変わってる!」と声を上げました。
それで思い出しました。
少し前にNHKでやっていた「見狼記」という特番で、三峰神社が狼を祀っている神社として登場しました。
番組は、明治時代に絶滅したとされるニホンオオカミを十数年前に秩父で目撃したという主人公が、狼にもう一度会うために痕跡を求めて方々を訪ねて歩くという内容で、その中で秩父地方は古くから狼との関わりが深い土地で、三峰神社では狼を「ご眷属」 として祀っていると紹介されていました。
今回は見逃してしまったのですが、えんむすびの木の道をもう少し行くと「お仮屋」と呼ばれる山中に居るご眷属を祀るための宮があるそうです。
今度来ることがあったら、もう少しじっくり散策してみたいです。