— 本土最南端へ —
この日の夜は全く寒さを感じる事が無く久々に熟睡できたので、目覚めもすっきり。
着替えて外に出てみたら外も妙に暖かくて、松の内の早朝とは思えないほど。
これが南国の陽気か。。。
それでテンションが上がり、てきぱきと寝袋を片付け、朝食を済ませて、早速本土最南端の佐多岬へ向けて出発。
佐多岬までカミさんが運転するというので、原付はリアシートでふんぞり返っている事に。
人の運転でリアシートでふんぞり返って観光するのは実に(・∀・)イイ!
しかし、出発地点の道の駅根占から佐多岬までの道のりは本当に人口希薄地帯で途中、佐多街道(国道269号)の終点となる佐多の集落以外には殆どまとまった集落らしい集落がありません。
コンビニはおろかスーパーですら見当たらなかったので、昨日のうちの今日の朝食を仕込んでおいたのは正解でした。
佐多の集落から山あいの道に入り、ウネウネといくつかの小さなピークを越えていくと、半島の先端の一歩手前、大泊の集落に着きます。
この集落から佐多岬ロードパークの道が分かれ、こちらへ進んでいきます。
現在は無料開放されていますが、かつては有料道路だったので、料金所の残骸が残ったままになっています。
そのまま料金所跡の脇を素通りし、ロードパークへ。
通行する車はほとんどなく、綺麗に晴れ渡った空の下、南国の色の濃い草木を分け入って進む道は何とも爽快なものですが、いかんせん勾配もカーブもきつく、普段余りワイルドな道を運転しないカミさんにとってはちょっと面食らった様子。
15分位でトンネル手前の駐車場に到着。
車を降りると思った以上に気温が高く、ジャンバーは全く不要。
まさしく南国。
長袖のシャツ一枚で充分凌げるくらいなので温度は多分14~5度くらいはあったと思います。
いよいよ南の果てに来たんだなぁ、としんみり実感。
ここでトイレ休憩を済ませてから本土の最南端へ向かうことになるのですが、その前に。
本土最南端の公衆電話だそうで。
灯台を模した電話ボックスがご愛嬌。
カミさんが実家へ新年の挨拶を兼ねて電話してみるというので、本土最南端の電話のかけ心地を味わってもらいました。
もちろん、別段変わった所はない、というのがその感想ですが。。。
では、改めて本土最南端を目指して。
駐車場の先には車が通れるくらいの道幅のトンネルが延びていて、それを抜けるとすぐ道が遊歩道サイズに狭まり、更に暫く歩いていくと小さな神社が現れます。
「御崎神社」という神社で、境内はヤシなどの南国っぽい木々に囲まれ、青島神社と同様、楽天的な雰囲気を漂わせています。
ここは多分本土最南端の神社である気がするのですが、そういう情報に当たらなかったので違うのかな?。。。
ちゃんと社務所もありお守りやおみくじなども売られています。
カミさんが青島神社でおみくじを引けなかったからといって、ここで引くことにしたようです。
結果は大吉。
今年の中ごろにご利益があるらしく、青島神社で運試しした真砂願貝で6というキーワードが出ていることとあわせて 「やっぱり6月なんだ!」とつぶやきました。
だから、何がよ?
ちなみに原付は青島神社で浮気をしたせいか、中吉とやや冴えない感じです。。。
お参りを済ませて再び遊歩道を歩いていくと、今度は窓などが撤去されつつある廃墟が見えてきます。
ここはかつてレストハウスだった場所ですが、
ご覧のとおり中はドンガラ。
もはや解体まで秒読みと言った感じで、ここがなくなるのは時間の問題っぽいです。
その敷地の脇をすり抜けて更に暫むと、ちょっとした展望台風の広場があったので、二人で記念撮影でもしておくかと、カメラを構えていたら、遊歩道を歩いてきたおじさんが、
「写真撮りましょうか?」
と声をかけてくれたので、お願いしました。
写真を撮ってもらってお礼を言うと、
「展望台がもう少し先にあるから、そこまで来たらまた写真を撮ってあげますよ。」
と言って展望台の方へ行ってしまいました。
このときは、田舎のおじさんは親切だなぁ、位にしか思わなかったのですが。。。
それから歩いてほんの数分で最南端の展望台跡に到着。
本土最南端、ついに到達!
奥の島の頂上に建つ灯台が佐多岬灯台です。
今でこそ無人化されていますが、かつては灯台守が交代で詰めていたそうです。
それはさておき、さっきから本土最南端と何気なく連呼していますが、良く考えると何だか違和感のある言い回しです。
言うまでもなく一般人が到達できる日本の最南端は沖縄の波照間島なので、本土という枕詞が必要になるわけですが、九州最南端というなら分かるのですが、東京基準で考えると、九州だって海を隔てた島なので、その流れでいくと本州の最南端は和歌山の潮岬という事になってしまい、それではいくらなんでもパッとしません。
要は普通に「日本」と言ったときに想像する北海道、本州、四国、九州をひとまとめにして「本土」といっているのだと思いますが、江戸時代ならともかく、現代においてはなんとなく沖縄をないがしろにしているような違和感を感じないでもありません。。。
わかるんだよ、わかるんだけど。。。なんだろ、このちょっとスッキリしない感じ。。。
で、無理やり当たり障り無く、納得できる定義づけを考えた結果、「本州から歩きで行ける最南端」ということでどうですかね?
え?長い?
・・・まぁ、それはさておき。
この佐多岬一帯は元々岩崎産業という企業がさっき通ってきたロードパークと一緒に開発した私有地で、以前は料金所で通行料(入場料)を支払わないと入る事が出来ませんでした。
なぜか自転車・歩行者は頑なに通行禁止だったそうで、有料道路時代のチャリ旅や徒歩旅をされていた方のブログなどを見ると、永遠の憧れの地のような書かれ方です。
確かに日本各地の端っこを目指していて、到達できない場所が一箇所でもあれば、まさに画竜点睛を欠く状態で、その気持ちは良く分かります。
今では南大隈町に移管されて無料化したので自由に立ち入れるようになっています。
それにあわせて、さっきのレストハウスと、ここの展望台は老朽化のために取り壊す事になったようで、展望台もレストハウス同様ドンガラの状態です。
右手側を見ると、対岸の薩摩半島の先端にそびえる開門岳がうっすらと見えていました。
ようやくここまで来たかと、達成感を噛み締めていたら、さっき写真を撮ってくれたおじさんがひょっこりと現れて、
「ああ、来ましたね。また写真撮りましょう。」
と言ってくれました。
再度二人並んだ写真を撮ってもらいお礼を言うと、イントネーションが違ったからか、どちらから?と聞かれたので、東京からです、と回答。
そこから少し話が弾んで、
「初日の出は見れましたか?」
「宮崎の日向で見ようと思ったんですけど、曇ってて朝焼けしか見れませんでした。」
「ここは綺麗に見えましたよ。」
といって、今度はおじさんが携帯で撮影した初日の出の写真を見せてくれました。
その写真には、綺麗に日の出の様子が写っていて、宮崎とは大して離れていないのに、結構違ったんだなと思いました。
「この辺から屋久島とか種子島とか見えるんですか?」
「屋久島はどうかな。今日は見えませんが、空気が澄んでいればそちら(やや左手)に種子島が見えて、あとそちら(やや右手方向)には竹島と硫黄島(薩摩硫黄島)が見えますよ。」
「よくここへ来られているんですか?」
「私は仕事でここに来ているんです。今も来ている人の数を数えていたんですよ。あそこの灯台は少し前まで灯台守がいて、こちらから通っていたんです。島の脇に階段見えるでしょ?あそこから登っていっていたんですよ。」
「へぇ、チャンスがあればいってみたいですね。」
「渡し舟で行くことは出来ますけどね。」
「今日も釣りしている人いますね。」
「そうです。神社の脇からふもとの海岸へ降りることができるので、そこから渡してもらうんですよ。」
「この辺だと大物が釣れそうですね。おじさんは釣りされるんですか?」
「行きますよ。」
「時間があったら少し釣りしたいと思っているんですが、この辺で堤防釣りをやるのにオススメの場所ってありますか?」
「堤防は分からないけど、そこの灯台のたもととか、その辺の岩場とか渡し舟で渡してもらって釣りしている人は一杯いるよ。」
「そうなんですか。でもそこまで時間は取れそうに無いなぁ。。。」
「・・・ところで、ここの岬には本当の最南端っていうのがあるんですよ。」
「本当の最南端、ですか!?」
「行ってみたいですか?ちゃんとした靴履いてきているから行けるでしょう。案内しましょうか?」
「本当ですか!?ぜひお願いします。」
と会話の流れで突然“本当の最南端"と呼ばれる場所に連れて行って貰えることになりました。
なにこのステキな展開!