大島公園を通り越してして更に少し進むと「あじさいレインボーライン」という道が三原山の登山口へ向けて右に分岐し、その先にかつての溶岩流の跡である「石の反り橋」と、島の最古の桜といわれる「桜株」という見所があるそうだ。
まずは石の反り橋を見に行ってみようと地図に従って走ってきたのだが、目的地らしき辺りまで来てもそれらしきものが見つからない。情報が少しアバウトで正確な位置がはっきりせず、何度か周辺を行ったり来たりしてみたが、結局見つけることができなかった。
後日もう一度調べてみたら、目的地としていた場所から少し遊歩道を歩かなければならなかったようだ。
相変わらず雲が低く、気づけば雪もちらつき始めている。天気予報を信じればこのまま大雪になることはないと思うが、温暖な島だと思っていた大島で雪を見るとなんだかすごく意外な感じがする。
ひと気が少ないうえ、周囲は荒涼とした景色で、おまけに空もどんよりとしているので何とも言えない寂しさを感じる。。。
もう一つの桜株はレインボーラインの入口付近にあり、駐車場も整備されているので簡単に見つけられる。
敷地には木の遊歩道が整備され散策も容易だ。
桜株は地元の人から「さくらっかぶ」と呼ばれて古くから親しまれてきたものだそうで、かつては海からでも目印になったと言うほど立派な枝振りを誇っていたらしいが、後の大風によって倒れてしまい、今では方々を添木で支えられた痛々しい姿で佇んでいる。
桜は枝を地面に植えるとそこから根を生やすのだそうで、ここでも倒れた幹から根を張り、枝を四方に伸ばしていて非常にダイナミックだ。
桜株を見たら8時15分を回ったので、大島公園へ行ってみることに。
大島公園は広大な敷地に椿園と動物園が併設された都の施設で、椿まつりの会場でもある。
特徴的なドーム屋根をもつ広場はテレビの旅番組で何度か見たことがある。
中央に組まれたステージでは椿まつりイベントの準備が続けられていたが、背後に見える椿園の方はすでに門が開いていたのでお邪魔してみることにした。
園内には実に8700本、種類にして450種の椿が植えられているそうで、散策路を歩いていくとおなじみの真っ赤な花をつけたヤブツバキだけではなく白やピンクの椿、紅白が程よく散っている椿などが競うように花を広げていて、思いのほか見ごたえがある。
歩いていくと奥の方に温室があり、入口で清掃をしていたおじさんから、どうぞ、と声がかかった。
温室の中は甘い香りが漂っている。
おじさんいわく、「椿は本来余り香りの強い種ではないのですが、この温室には香りがする種が栽培されています。」とのこと。
温室の中に植えられている品種は希少な品種が多いようで、どれも大事に手入れがなされ、一見椿のそれとは思えないような形状の花弁を持つ品種などもあり、植物に関してはド素人な自分でも楽んで見ることができる。
なんだかめでたい感じがする椿だ。
ふと、頭上を何かが横切ったような気がして見上げると、メグロが二羽迷い込んできていた。
ハハジマメグロの時もそうだったが、この鳥は人間に対する警戒心は余りないようで、視界から消えることなくあちこちを飛び回っているのだが、とにかくすばしっこいのでカメラに収めるのは一苦労だった。
そんな感じで園内を一周して広場に戻ると、入口のわきに大島牛乳のスタンドが出されていた。
カミさんは寒がりなので冬場はことさら厚着になるが、何かに似てるなーと思ったらこれだったw
それはさておき、大島牛乳は伊豆大島で生育している牛から絞った牛乳だそうで、後で牧場へ行こうと思っていたモナーカミさんは思わぬタイミングでの遭遇に興味しんしん。
丁度その気配に気付いたスタンドのおじさんが、紙パックのまま湯煎していた牛乳を手際よく移動させながら、色々教えてくれた。
- この牛乳は島の牛から作った牛乳で、流通の範囲が島内に限られるから、通常よりも低い温度で殺菌できるので、非常に濃厚な味わいが楽しめる。
- しかし殺菌温度を低くしているため日持ちしないのが弱点で、島の南にある波浮(はぶ)のほうまで持っていくのですらギリギリになってしまう。
- かつて島は酪農で栄えていたが、徐々に需要が減ってしまい、数年前に一度廃業してしまった。
- 島の小学校の給食にこの牛乳を出していたが、別の牛乳に変えたところ、島の子供たちからこの牛乳のほうがよかったという声が聞かれるようになり、一念発起して再開させた。
- 以前は町議会の議長を務めていたが、牛乳作りをはじめてからこのかた無給&無休で携わっている。
- 休みが無いのはきついように思うけど、議長をやっていた時の方が、意見のとりまとめを行わなければならない分しんどかった。
- 実際、心臓が余り強くないので、議長をやっていたときは何度か倒れたこともあった。
- 土石流は大変だったが、もともとあの辺は土石流が起こりやすい地形らしく、過去にも2回同じような災害が起きたことがある。
などなど。
湯煎された牛乳パックは熱で膨らんだのかパンパンになっていて、それを見せながら、
「こうやって湯煎して飲むのが一番おいしいんです。」
と教えてくれた。すっかりその気になったカミさんが、一杯ください、と言おうとしたところで、ほかの客がおじさんと話し始めてしまい、話しかけるタイミングを失ってしまった。
後でまた来ますと伝えて先に動物園を見てくることにした。