というわけで、ようやく元町の集落にたどり着いた。元町は大島の中心的な集落で、行政施設などもここに集まっている。
大きな集落だけに見どころもあちこちあるのだが、時間はすでに15時半を回り、もう日没まであまり時間がない。。。
集落に入って程なく、昨年10月に発生した土石流で被害を受けた地区が見えてくる。
10年に一度とも言われる猛烈な台風により島の上空に前線が停滞して、24時間の間に824ミリもの大量の雨を降らせた。
これによって保水力を失った三原山の斜面が崩壊、大量の土砂と流木は沢を伝って流れ下り、下流の神達地区や元町3丁目付近に押し寄せ、周辺の人家を押し流して39名もの死者行方不明者を出す大惨事となってしまった。
災害から5ヶ月近く経っているが、未だに1階部分が押し流されてがらんどうになった建物などが無残な姿のまま残されている。
その様子に、津波の被災地の姿が重なった。
異なるのは、ほんの50m先は何事も無かったかのように普通に建物が残っていることだ。
近くに車を停めて少し歩いてみることにした。
土石流の流れ下った沢沿いの道を山のほうへ歩いてみると、沢に面した家は軒並み被害を受けているのに対し、道向かいに建つ家はあまり被害が見受けられず、沢に面した家を中心に被害が生じたことが分かる。
道を少し進むと大きく崩れて土がむき出しになっている斜面の中を道が横切っているのが見えた。
その道は「御神火スカイライン」と言い、三原山の登山口へと続いているのだが、この道を作ったことで斜面が弱くなったと話す地元の方もいるらしい。
もう少し奥の方を見てみたい気もしたのだが、時間的にキリがなさそうだったのと、車を路肩に停めっぱなしにしているのとで、ほどほどの所で折り返すことにした。
再び一周道路に戻ると、道の反対側に「大島椿」の看板を見つけた。店内に入ると「大島椿本舗」と書かれた看板が掲げられ、色々な椿油がショーケースに並べられていた。
客の姿も無く、細々と土産物を売っているような地元の商店かと思ったら、売り物の椿油のパッケージはあちこちでよく見かける有名なもので、こんな慎ましい店がその本店ということに驚いた。
中に入って暫く商品を見ていたら奥から主人が出来てきて、カミさんが、「この椿油は島で作っているんですか?」と聞くと、
「製造は今は八王子でやっています。生産力や流通のことを考えるとあっちに有った方がよいので。」
とのことで、これまた意外だった。逆にここでしか売ってない物がないかと聞いてみたら、
「そこにある椿油の小瓶と、石鹸と、白髪染めトリートメントはここで作ったものですよ。」
と教えてくれた。最初は自分用のものを買おうかと考えていたようだが、結局ご両親へのお土産として白髪染めトリートメントを購入していた。
店の場所は、土石流被害のあった場所から50mも離れていないのだが、店内に土石流の被害の痕跡が無く、その辺を聞いてみると、
「水は入ってきましたが、建物は大丈夫でしたね。」
とのことだった。
本当に被害にあった場所が限定的で、これほどまでに運命が分かれてしまう理不尽さを考えてしまった。。。
お礼を言って店を出たあと、次のお店まで急いで移動。
次のお店、と言うのは元町の街中にある「フジカフェ」という店で、島の名産品を使って作ったというパウンドケーキがウリらしいのだが、閉店が16時と非常に早い。
閉店までの残り時間も少なく少し慌てたが、迷うことなくたどり着くことができた。
日よけに書かれた店名は手作り感あふれる書体で小さく書かれているので、遠くからだとちょっと分かりにくいかもしれないが、紫の日よけは目立つのでそれを目印にすればよいだろう。
この店は島内にある障害を持った方たちが通う藤倉学園という学校が直営しており、商品はそこの生徒たちが作っているものだそうだ。店内はその名の通りカフェになっていて、食事などをとることもできるようになっている。
カウンターにお目当てのケーキが並べられているのを見つけたのだが、それらは「明日葉ケーキ」や「青唐辛子ケーキ」など、それ本当にケーキと合うのか?と思わず首を傾げたくなるようなラインナップで、事前に話に聞いていたとはいえ、実物を見るとちょっとドキドキしてしまうw
中でも強烈なのが島の焼酎である「御神火」をふんだんに使って作ったという「焼酎ケーキ」で、カミさんがこれをぜひとも食べてみたいというのだ。
おいらが酒を飲めないの知ってて言っているのかな?w
手にとって見るとずっしりと重くかなり食べ応えがありそうだが、お値段は600円と思ったよりも手頃だ。
店員に聞くと、かなりの量の焼酎を染み込ませているので、そのままだとケーキの下のほうに焼酎が溜まってしまうらしく、食べる一日前くらいから逆さまにしておいてから食べると焼酎が全体になじんで美味しく食べられますよ、と教えてくれた。
って、こりゃ相当濃そうだな。
焼酎、と言ってもフレーバーではなくガチのアルコールが入っているので、食後は運転禁止だそうだ。ウィスキーボンボンみたいなものか。
自分的にあまり食べられなさそうなので、他のケーキの方が気になったのだが、カミさんが是非に、と言うのでこれを買ってみることになった。
家に帰ってから食べてみたので、感想はまた後ほど。
というか、生徒さんたちって未成年、だよね??
ということで焼酎ケーキも無事入手完了。
店の外に出るとドアにかけられていた札がいつの間にか「Closed」になっていた。時計を見るとちょうど16時、ギリギリセーフだったようだ。
日が沈むまでにはもうちょっと時間がありそうなので、もう一か所、「溶岩流遊歩道」という場所を見に行ってみることに。