八丈島上陸【13】(2014/09/21)
ほどなく我々たちもそのピークに到着。
先着していた折り畳み傘のお兄さんは、吹きつける突風に傘をおちょこにされたりしながら耐えている。いわんこっちゃない。
「・・・ここ、山頂ですかね?」
「さぁ。。。でも山頂なら三角点の一つもあってもよさそうですけどねぇ。。。」
山頂を示すような看板も何もなく、三角点も見当たらないので山頂と言う感じではないのだが、周りの視界は全くなく、この先の様子も分からない。
風雨は相変わらず強く、打ち付けるように降り続いている。
「多分頂上、ってことでいいんじゃないかな?」
「うーん。。。」
自分の発言に誰一人表だって同意はしないものの、これ以上進むのは億劫という感じで曖昧な返事を返す。
「しかし、散々な天気ですねえ。」
「私は今日で島を出るんですけど、最後なので登ってみたらこれなんで。。。」
「船で帰るんですか?」
「この後大島に行きます。」
「え!?竹芝に戻ってからですか?」
「竹芝へ戻るフェリーが大島にも止まるんですよ。」
知らなかった。。。
前回、新式神を訪ねたときの記事で神津から三宅を抜けて八丈へ行く船があればいいのに、と書いていたがいつの間にかそれに近いような運用が始まっていたとは。
「待っている間にガスが取れないかなと思ったんだけど、どうもダメっぽいのでそろそろ下山します。」
ということで、4人で記念写真などを撮り合ったりしたあと、その登山者は戻っていった。
取り残された3人でどうするか打ち合わせたところ、うちらも下山しよう、と言うことで話がまとまり、ほどなく後を追うように下山開始。
さて、我々が山頂としたピーク、本当に山頂だったのだろうか。
それはGPSのログに克明に記録されていた。
はい、残念!
ピークはもう少し先だったようだ。。。
無念。。。
ここまで20分かかったが、戻りは15分ほどだった。
元の分岐に戻ると、夫婦と思しき登山者が佇んでいた。
「頂上、行かれたんですか?」
「一応、それっぽい所までは行ったんですけど。。。」
「私らも少し進んでみたんですけど、無理や言うて戻ってきたところで。」
「いや、実際雨も風も強くて、その上道もよくないので思ったよりも大変でした。」
「そこの案内の石碑、傾いとったんで、今直したんですわ。」
へぇ、と言いながら石碑に近づくと、お義母さんが、
「あれ?これ頂上が違うほう向いてるよ。」
「え?本当ですか?」
よく見ると、確かに火口内へ降りてゆく道の方に頂上の矢印が向いている。
「ありゃ、こりゃアカンね。」
と言いながら石碑をぐるりと回して元通りに。
あまり深く埋まっていないようで、ぐらぐらしている。
「下の方行かれました?」
「下も大変でしたよ。道は急だし滑るし。。。結局こちらも途中で折り返してきました。」
その話を聞いてカミさんに、
「あのさ、俺、この下も行ってみたいんだけど、そんな道だと大変だから1人で行くからさ、2人で先に下山しててよ。」
と耳打ちすると、
「え?行くなら私も行きたい。」
という。じゃあ、お義母さんどうするの?と聞くと、その夫婦が自分たちも下山するから一緒に下山しましょうかと申し出てくれた。
が、お義母さん的には知らない人と下山するのはちょっとプレッシャーだったようで、戻ってくるまで待っているという。
すると、その夫婦が、じゃあうちらも一緒に待ってますよ、と言ってくれた。
じゃあ、お言葉に甘えて、と言うことで、
「どんなにかかっても往復で1時間はかからないはずなので、1時間過ぎても戻って来なかったら、すみませんが一緒に下山していただけますか?」
とお願いして、お義母さんに車のカギを渡して2人で火口に降りてみることにした。
この道を下ると浅間神社や中央火口丘の植物などが観察できる場所があるらしい。
夫婦が言っていた通り、足場はあまりよくない感じの急な下り道で、所々土嚢で土止めしてあるところもある。また、お鉢めぐりと違い、かなり鬱蒼とした森の中の道と言う感じだ。
まぁ、ストックもあるので夫婦が言っていたほどの困難さはなかったが。
5分ほどで一旦平坦なところに降り、分岐点に差し掛かった。
右に行くと浅間神社、左に行くと中央火口丘らしい。
先に浅間神社から行ってみることに。
この先はさほどアップダウンはなく平坦な道が続いているが、足場は滑りやすい溶岩の上を歩いたり、ぬかるんだところを歩いたりとあまり良好ではなかった。
それでも5分ちょっとで鳥居が見えた。
浅間神社は鬱蒼とした森の中の氏神様のような、ジブリのアニメの世界にでも入り込んだような神秘的な場所だった。
鳥居の奥に小さな石のお堂が祀られていて、2人して手を合わせる。
(この後の天気が回復しますように。。。)
戻りの道で、カミさんに何をお願いしたか聞いたら、同じことをお祈りしたそうだ。
再び5分ちょっとで分岐まで戻ってきた。ここまで20分ほどだったので、もう一つの中央火口丘にも行ってみようかと考えた。
が、ガイドマップには「悪路」と一言書かれている。
悪路かー、悪路ねー・・・。
いや、これ悪路とかそうレベルじゃねぇべし。。。
入り込んだら遭難してしまいそうだったので、ここは諦めて戻ることにした。
で、ほどなくお義母さんの待つ分岐点に戻ってきた。
「はやっ!やっぱり行けなかったですか?」
いや、神社も見てきましたよ、と答えると、目を丸くして驚いていた。
わざわざ二人のために足止めさせてしまったこと、お義母さんの面倒をお願いしてしまったことにお礼を伝えて、下山をはじめた。
下山中はこれと言って特筆することもなく30分ほどで無事戻ってくることができた。
雨で濡れて煩わしくなったレインコートをトランクに放り込んで、ようやく身軽に戻った。