八丈島上陸【14】(2014/09/21)
さて、お次は。。。とりあえずふれあい牧場にでも行ってみましょうか。
ふれあい牧場は登山口から鉢巻道路を数分戻ったところにある。
入口に立つ看板に「おじゃりやろうか」と書かれていた。
「おじゃりやれ」と言うのは「いらっしゃい」と言う意味の島言葉だが、「~やろうか」だとどういう意味になるのだろう。
やはり疑問形なんだろうか。気になったので、帰ってからネットで調べている時に島言葉の話者の音源を見つけた。八丈島の島言葉は、無アクセント型と呼ばれるアクセントに決まったパターンを持たない話し方が特徴で、茨城や福島辺りと同じようなイントネーションに聞こえる。上のリンクの話者のしゃべり方もテープの逆再生を聞いているような独特な雰囲気だ。
そういえば昨日のおんたけ山のおじさんも同じような話し方をしていたっけ。
それはさておき、その会話中に興味深いものを見つけた。
リンク先に音源を書き起こしたPDFファイルがあるのだが、それを読むと話者が家を訪ねて「オジャリヤロカーイ」とか「オジャリヤルカー」と問いかけている場面がある。
それに対する標準語訳はどちらも「おいでになりますか」となっているので、やはり疑問形で良いようだ。
となるとこの牧場の「おじゃりやろうか」は、この場でかけるべき言葉としてはふさわしくないような気がするのだが、さらに調べてみると、八丈方言のルーツともいえる公家言葉では「おじゃる」は「行く」「来る」「居る」を区別しないそうだ。
そうであれば島言葉も恐らく同様だろう。つまり、「来るだろうか」、転じて「来てみませんか?」と言うことなのかな、と思うがどうだろう?
まぁ、うんちくを垂れなくても、見ればなんとなく分かるわけだけど。
くどい話はこのくらいにして、ふれあい牧場の中に入ろう。
車を降りると背後の柵越しに数十頭の牛が放牧されていた。みんな自由にやっている。
自由と言えば、どうも柵の作りが厳重ではないようで、柵の外に出て草を食んでる牛もいる。
カミさんは、この牧場のジェラートが食べたいと思っているらしいのだが。。。
奥の方に山小屋風の建物が建っているが、妙に閑散としていて殺風景だ。
そんな建物の入口をあけると、中に人の気配もない。
壁に島の酪農の歴史を掲示した展示パネルなどが飾られている。奥の方まで入ると片隅のカウンターにジェラート販売は8月31日で終了しました、と出ていた。残念。。。
ここの牧場には観光ガイドなどにも紹介されている展望台があるので行ってみることに。
ご覧の通り、見晴らしはよさそうだ。
なお、遊歩道の道々にはさりげなく牛糞が落ちているので気を付けて歩く必要アリ。。。
展望台の近くまで来たときに、西の空から飛行機のエンジン音が聞こえてきた。音のする方を見ると、ジェット機が間もなく着陸するところだった。
急いで展望台に駆け寄り、着陸の瞬間を激写!
新島でもドルニエの着陸シーンを捉えたが、やはりジェット機の方が迫力がありますな。
うむ、満足w
改めて景色に目をやる。三原山が島の南部に横たわる姿が一望でき、これまた見事な展望を得ることができた。
この牧場ではジャージ牛も飼育されているようだ。
ちなみにジャージ牛とは彼のことだ。
振り返ると、ついさっきまで登っていた八丈富士が眼前に迫る。
が、相変わらず頂上付近は望めない。
山肌はまだらに木が刈られ、木が残されたところが何かの模様のようにも、文字のようにも見えるのだが、いくら目を凝らしても意匠の意味は分からなかった。
ということでまぁこれ以上見る物もないようなので、先に進むことに。
鉢巻き道路を走らせると西海岸の向こうに八丈小島が見えてきた。
八丈小島は標高616mの太平山を頂点にする周囲8キロほどの小島である。
南北に細長く、島の東西は急な斜面で海へと落ち込んでいるが、南北方向は幾分なだらかになっていて、ここに1969年まで人が暮らしていた。
当時建てられていた建物などはほぼ破壊されて現存しているものは少ないが、集落を通る都道や敷地の石垣などはまだ残っているという。
自分がこの島の存在を知ったのは、HEYANEKOさんと言う方のWEBサイトだった。
10年ほど前に記事を拝見して以来、いつか訪ねてみたいと思っている島であるが、無人島なので当然定期船などはなく、島に渡るためには漁船をチャーターしなければならない。
漁船のチャーターは非常に高額で、大人数で集まればまだ割り勘もきくが、一人や二人で渡るとべらぼうな金額となってしまう。マニアックな趣味だけにそうやすやすと同好の士を見つけることもままならず、まーとにかくハードルが高いのだ。
・・・などと思っていたら、最近では島を訪ねるツアーを開催している業者があり、割と安価にガイド付きで島に上陸できるらしい。
旅行前に情報を知って、行ってみたいという思いが頭をもたげたが、流石にお義母さんを連れて行くような場所ではなく、今回は眺めるだけで満足しておこう。
次回八丈に渡った時にぜひとも申し込んでみたいと思う。
鉢巻き道路をさらに進むと、遊び平という展望台があるらしい。
坂をぐいぐいと登っていくと、あまり手入れのされていない展望台の建物があった。
これだけみすぼらしくても落書きひとつされていないあたりは流石離島である。
上に登ってみると、ここからも八丈小島がよく見えた。
こうやって見ると、いかにも「島」と言う感じの好ましいシルエットだ。
そしてここへきてようやく青空が見えてきた。このまま進んでいくともう少しでさっき登り降りした登山道に戻る。この際もう一度登ってやろうかという思いが一瞬よぎったが、それは無謀すぎる。。。
更に走らせると、道の片隅で何か動くものを見つけた。
目を凝らすと鳥の親子がいるようだ。
道を自由に横切ったりしている。
ゆっくりと近づけば気配に気づいてどこかに避けてくれるかな、と思いながら進んでいくが車の進行方向へ歩いていくばかりでなかなか避けてくれない。
飛んで逃げることもしないし、車に対して恐怖心を感じないのかも。
鳥は詳しくないので何という鳥かもわからないが、のんびりしたものだ。
30mほど追いかけたらようやく路肩の茂みに入り込んで道を開けてもらった。
そして鉢巻き道路を一周し、麓に降りてきた。