中央防波堤と東京ゲートブリッジ【2】(2014/10/25)
2014/10/25
集合場所となる中防の合同庁舎は東京テレポート駅かお台場海浜公園駅から出ている中央防波堤行きのバスに乗ることになるのだが、休みの日はバスの本数が極端に少ないらしい。
清掃に関わる人しかいない島なので、休みの日にバスを走らせる必要はないということだろう。
はがきには、親切にも東京テレポート駅9時54分発のバスに乗るよう指示があったので、それに合わせて9時半に駅に到着。
バスの乗り場をチェックし、出発時間までは駅の周りをぶらぶら。
近くの広場ではフリーマーケットが開催されるらしく、参加者が準備を進めていた。
戻ったら見てみよう、と言ってバス停に戻ると、ほどなく中央防波堤行きのバスが到着。
乗り込んだ人は3組のみ。
まぁ、工場見学とかと違ってお土産がもらえるわけではないし、頭に「大人の」と冠するだけに子供たちが楽しめるような方向でもないようなので、うちらのような物好きはこんなものかなぁ、と思いつつ席に陣取ると程なく発車。
バスは船の科学館などへ立ち寄りながら南下し、お台場と中防を隔てる運河をくぐるトンネルを抜ける。
華やかなお台場も、トンネルの手前から徐々に工場地帯のような飾り気のない風景に変化し、トンネルを抜けた先は何ともホコリっぽくて男臭い現場だった。
それからちょっと走ると合同庁舎前。ここで下車。
目の前に合同庁舎の建物が建っている。
案内に従って10階の会場に入る。
100人くらい入れそうな会議室の前2列ほどの椅子の上に資料が置かれている。
バスに乗っていたのが3組だけだったので、それで全部かと思っていたが、室内にはすでに4組ぐらいの人が集まっていた。
てっきり、はがきに指定されていたバスにみんな乗ってくるのだとばかり思っていたが、ほかの時間帯のバスで来た人もいるらしい(多分、駐車場がないので、みんなバスに乗ってきているはず)。
着席して暫くすると制服姿の女性が入室し、見学会が始まった。
最初に30分ほどビデオを見た後、バスに乗って見学コースを回る予定だという。
ビデオは東京のごみ処理の歴史と中防の最終処分場の現状と未来、現在のごみの分別と中間処理の方法などを解説するもので、何の前知識もなく見学に参加した人にとっては、これから見て回る処分場の事前講習として最適な内容であった。
ビデオが終わると1階へ移動しマイクロバスに乗り込む。
ちなみにこのビルの10階は展望フロアになっていて、辺りに高い建物がないのでなかなかの絶景が堪能できる。
が、あまりじっくり見学する時間が取れなかったのが残念。とはいえ帰りのバスの時間が決まっているので、ここでのんびりしていたら見学時間が減ってしまうので、やむを得ないのだろう。
痛し痒しである。
マイクロバスの後部座席を陣取り、28年ぶりの中央防波堤ツアーに出発。
地図で見ると中防は北側のブロックと、運河を挟んだ南側のブロックに分かれる。
北側のブロックを内側処分場、南側を外側処分場とそれぞれ呼ぶそうだ。
小学生の頃来たときにはまだ内側処分場は作っている最中だったと思う。バスの窓から対岸の盛り土の上をダンプが行き来しているのを見た記憶がある。
今では内側処分場は埋め立てが完了し、ゲートブリッジも開通。近い将来、近隣に公園を整備する予定らしい。
ちなみに中央防波堤という名前が付いているが、防波堤という名前の割に防波堤らしきものがない。
元々、内側処分場の南端にある、東西に延びる堤防だけが中央防波堤として存在していて、その後北側を埋め立てたために、今では内側処分場の護岸の一部となっている。
東京湾のごみ処分場としての埋め立て地は、古くは江東区潮見地区から始まり、夢の島、若洲と続いて現在の中防という順に発展してきた歴史を持つ。
かつては、ごみを分類せずにそのまま埋め立てていたのだが、隙間が多くかさばってしまったり、ごみから発生するメタンガスによって悪臭や火災などが度々発生したりと問題が多かったそうだ。
また、そのことに起因してハエなどの害虫が大量発生するなど、衛生面は最悪の状態だったという。
さっき見たビデオでは割烹着姿の主婦の背中にびっしりとハエがたかっているような衝撃的なシーンも登場した。
自分が見学した約30年前には、すでにごみの分別や減量についてあちこちで啓蒙していた記憶があるが(だから、社会科見学のテーマになったのだろう)、こんにちの様にこまごま分離するところまではできていなかったような気がする。
増え続けるごみに追われる形で内側→外側の順に埋め立てが進んでいったわけだが、じゃあ、どんどんごみを埋め立て続けるとどうなるか。まさか東京湾を全てごみで埋め立ててしまうわけにはいかない。
東京湾の中で東京都として使ってよいエリアというのは決まっているそうで、そこから湾内に入港する船の航路などのスペースを除くと、すでに中防(と新海面処分場)しか埋め立て可能な場所がなく、それ以上拡張することが出来ない。
しかも、そのまま埋め立てていたら30年くらいしか持たないらしい。ということで、近年、本格的なごみの減量作戦に取り組んでいるそうだ。
現在では、収集したごみをいったん中間処理施設に運び、高温で焼却できる焼却炉を使ってプラスチック類までの燃えるごみは全て焼却処分、燃えないゴミは完全に原料別に分類し、資源はリサイクルへ、廃材などは細かく破砕してから、可能な限り焼却して埋め立てているそうだ。
ウチらが住んでいる23区は、上述のとおりプラスチック類は燃えるゴミとして出すことになっている。プラスチックは燃えないゴミで捨てる、という常識でずっと生きてきたので、引っ越してきたばかりのころは捨てる時に罪悪感を感じたものだが、プラスチックも高温で完全燃焼させてしまえば、有毒ガスなどはあまり発生しないそうだ。
捨てる側としては、ごみの分別は正直かなり面倒くさい作業なので、他の自治体でも同じようにしてくれたら助かるのだが、このような焼却炉は非常に高価ということで、なかなか広まらないらしい。
ちなみに、近年ではリサイクルやごみの減量など、捨てる側の意識も変化してきていて、ごみの排出自体が以前と比べてかなり減ってきているそうだ。
これらの対策によって中防が満杯になるタイムリミットがいくらか先延ばしできたのだが、それでも50年程度しか持たないらしい。我々が死ぬ頃にはこれからのごみをどうやって処分するのか、大きな社会問題になっているかも知れない。
今でも、この処分場の寿命を少しでも伸ばせるよう、あれこれ対策が練られているそうだ。
そうこうしているうち、バスは中間処理施設が立ち並ぶ通りに入った。
この機械は畳を破砕する機械だそうだ。
畳はそのまま燃やしても燃え残ってしまうため、このように小さく裁断してから燃やしているとのこと。
また、別のエリアにはベッドのマットレスが積みあがっていた。
マットレスの中身はスポンジとコイル、つまり燃えるゴミと燃えないゴミが同居している。それでいてかさばるので、そのまま埋めるわけにもいかず、専用の機械でばらしてから、さらに人力で解体するという手間のかかる処理が必要になるのだそうだ。
特に最近の高級ベッドはコイルに布が巻いてあったりして、面倒なことこの上ないとのこと。
その辺、メーカーに申し入れているが、なかなか改善には至っていない、とボヤいていた。
中途半端な写真に なってしまったが、このゲート状の建物は不燃ゴミを持ち込むトラックの重量を量る施設らしい。車ごとに予め乾燥重量が登録してあり、ドライバーの重さを一律60kgとして差し引きの重さで持ち込まれた量を計算しているとのこと。