青森出張【2】(2021/08/28)
2021/08/28
昨夜、客先に出向くときに間違えてサンダル履き(しかもカミさんの便所サンダル)で来てしまって焦る夢を見た。なんだそりゃ。
正夢じゃないことを祈るw
嫌な夢はいいことの前兆ということか、この日の作業は頗る順調に終わり、17時には宿に戻ってこれた。
今からならメモリアルシップの見学に間に合いそうだ。ということでI君を散歩に誘ったが、少し休憩したいということで断られてしまった(昨日のことを根に持ってる!?)。ということで1人でぶらついてみることに。
青函航路は、かつて国鉄によって運営されていた本州と北海道を結ぶ重要な連絡航路だった。一般には青函連絡船という名前で知られている。
終戦からまだあまり時を経ていない昭和29年、発生していた台風の進路を読み誤って出港した洞爺丸が激浪に巻き込まれ、転覆、沈没するという事故があった(洞爺丸沈没事故)。
更に付近にいた他の青函連絡船5隻も同時に沈没し、この事故によって1100名あまりの死者・行方不明者を出す大惨事となった。
この事故を契機として、本州と北海道の間を気象に影響されないトンネルで結ぼうという機運が高まる。長年にわたる工事の末、昭和63年に青函トンネルが開業したため、青函連絡船は80年の歴史に幕を下ろした。
余談だが、昭和63年は3月に青函トンネル、4月に瀬戸大橋が立て続けに開業し、本州と九州、四国、北海道の主要4島がレールで結ばれた歴史的な年であった。
この時のキャッチフレーズ、「レールでつながる一本列島」というあたりに当時の高揚感が伝わってくるのではないだろうか。
前年には国鉄がJRグループに分割民営化されたばかりで、私鉄路線なども相次いで開業し、鉄道業界は相次ぐイベントに熱気を帯びていた。
もっとも、翌年には昭和天皇が崩御され、63年間に渡って続いた昭和が終わるという、歴史的なターニングポイントがあったので、その熱気も一旦は冷めることとなるのだが。
ちなみに、瀬戸大橋の建設の機運を高めたのも、洞爺丸事故の翌年に発生した宇高航路の紫雲丸沈没事故がきっかけだった。事故と開業が同時期というのも、偶然とは思うが因縁めいたものを感じなくもない。
このメモリアルシップは、青函連絡船廃止時まで運航されていた船の一つである、八甲田丸を係留、保存展示しているものである。
入場料を払って船内へ。時間はすでに18時近い。受付のおばさんに少し怪訝な顔で見られた気がするが、気にせず入場。
とはいえ、19時には閉館となるので、残された時間は1時間。少し急ぎ足の見学になりそうだ。
船内は順路が設定されていて、その順路に従って見学していくようになっている。
まず最初、階段を上がると、かつての青森駅前の一画を模したセットを背景に、乗船客や彼らを相手にする仕事に携わっていた人たちの様子を再現したマネキンが展示されている。
連絡船が営業していたころの文化や風俗などにも興味がないわけではないが、パネルの情報量が多く、全部読んでいたら他を見る時間が無くなりそうだった。マストで見たいものが船内の様子と車両甲板に格納された鉄道車両なので、この辺りは急ぎ足で見学。
次は事務長室。
スチールデスクに昭和を感じた。右側の白い台はハイベッドになっている。仮眠用なのだろうが、幅がかなり狭く、しかもフレームがスチールで作られているので、大柄の人は寝心地が悪かったのではないかと思う。
もっとも、日常業務において、ここで仮眠をしてよい場面があったのかは不明である。そのほかの乗組員の仮眠所はなさそうなので、事務長だけがここで仮眠をとっていたとも思えないのだが、どうなのだろうか。
船長室。
ややうつむき加減のマネキンが背を向けて座っていた。なんか一瞬認知症の老人に見えたw
哀愁を感じる背中に、日中の便もあれば夜間の便もあり、凪の日もあれば荒天の日もある。そんな中、船長はここでどのような思いで業務にあたっていたのだろうか、などと思いをはせてみた。
サロン会議室。
他の部屋と違い、プリント柄の壁材が使われていて高級感がある。ソファーにかけられたカバーの柄にレトロを感じる。
ここでどんな会議が催されたのだろうか。入室した賓客たちは、傍らの日本人形で和んだりしたのだろうか。
続いて、エレベーターで上階に上がり、操舵室(ブリッジ)へ。
各種機器の色が薄緑色で統一されている。この色はかつての国鉄型車両でもよく使われていた色だ。
こんなところで国鉄の所有物であることを主張しているんだなと思った。
窓際に立っている人は、もちろんマネキンである。
船を操縦する乗組員たちは窓からこんな景色を見ていたのだろう。
そして、順路によって甲板に誘われた。
すでに夕闇迫る時間帯になってきている。
遠くの丘に沈まんとする太陽がきれいだった。
今回の客先は以前職場の上司も訪れているのだが、その際、新幹線の待ち時間を使ってここに来たらしい。
作業の引継ぎを受ける折に、煙突に登る階段で蜘蛛の巣にやられたからぜひ行ってみて、というよくわからないアドバイスをもらっていた。
これが、その煙突か。煙突に登ってもねぇ。。。
甲板からでも見晴らし充分なので、ここを登る必然性を感じないのだが、上司に指示された以上、結果報告しなければならないので登ってみた。
煙突だった場所だけに何とも重油臭い。階段を登ると写真の上の部分に立つことが出来る。
こんな景色である。蜘蛛の巣は張られていなかった。その旨報告しておこう。