’88埼玉県民の日 (1988/11/14)

1988/11/14

11月14日は埼玉県民の日である。この日は県内の小中学校は全て休校となる。そのうえ大手鉄道各社が、県内乗り降り自由のフリー切符を子供200円未満という格安料金で発売していたので、電車が空いている平日に安価に遠出ができるまたとないチャンスである。県内の鉄道キッズにとって、この日は待ち望んだ特別な日なのだ。

ということでフリー切符を入手して撮り鉄の旅に出ることにした。

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惜しいのは各社がそれぞれフリー切符を発売していたので、その分何枚も買わなければならなかったことだ。どうせならば全社共通で利用できるように1枚にまとめてくれたらいいのにと思っていた。

それはさておき、今回はこの切符を活用して埼玉の縁をぐるっと回るコースで散策することにした。


まずは自分にとっての定石に従って、越生駅→東飯能駅の順に進んで、西武秩父線に乗る。前回乗車した列車は通勤電車だったので、ロングシートでの山越えだった。どうせ行楽(といえるかは分からないが)へ行くのだから、クロスシートの4000系に乗ってみたい。

現代では鉄道のダイヤはインターネットであっさりと検索できるが、当時は私鉄のダイヤを把握するのは気軽ではなかった。どこの書店でも売られていた時刻表は基本的にJR線について網羅したもので、私鉄線、特に大手私鉄の時刻は特別列車以外が省かれていることが多かった。なので、地元から離れた路線のダイヤは、駅で配られている手帳サイズの時刻表を入手するくらいしか確認する手段がなかったのだ。

後に主な私鉄が個別に時刻表を発売するようになり、いくらか検索性は向上したのだが、それでも各社の時刻表を揃えることは容易なことではなく、相変わらずまずは乗換駅まで行って、そこで時刻表を見てどの列車に乗るか決める、というのが長らく一般的な方法だった。

この日は東飯能駅のホームで時刻をチェックしたら、少し待てばその4000系の列車がやってくることが分かったので、駅で少し時間つぶしをしてその列車が来るのを待った。

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4000系の車内は東武6050系と非常によく似たレイアウトになっていた。6050系よりはだいぶ新しいが。

列車は徐々に山間部に分け入り、秩父盆地の手前で山を1つトンネルで越える。そのトンネルは正丸(しょうまる)トンネルといい、この辺では珍しい長大トンネルである。

トンネルの手前にある正丸駅でいったん下車し、やってくる列車を狙ってみることにした。

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しばらくしてやってきたのは貨物列車だった。線路が日陰になってしまったのが残念なところだが。。。
秩父は昔から石灰が取れる場所で石灰の貨物輸送が盛んだった。西武も自社で電気機関車を用意して貨物輸送を行っていた。

JRのEF65形を彷彿とさせるデザインの機関車だが、似ているのは前面の印象のみ。サイドビューや色の塗り分けは全然違って、西武鉄道の機関車であることを主張していた。


次の列車に乗車して西武秩父駅に到着。そこから秩父鉄道に乗って熊谷駅方面に出たと思うのだが、写真に残していないので記憶にない。恐らく1000系がやってきたので撮影の食指が動かなかったのだろう。

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次に撮影した写真は大宮駅で撮影した真紅のDD16だった。何の用途に使っているものか分からなかったが珍しい色だったので撮影した。調べてみたら大宮工場の入替機だったらしい。こういうのがちょっと調べればわかるなんていい時代になったものだw


で、今度は東北線(宇都宮線)で栗橋駅に向かった。そこから東武に乗り換え。

伊勢崎線・日光線系統は川越近辺で暮らす人間にとってあまり縁のない路線だ。同じ東武鉄道なのに、あっちは日光へ行くための「けごん」「きぬ」のロマンスカーや、伊勢崎へ行くための「りょうもう」、快速で使われるクロスシートの6050系などなど、多種多様な車両が走っている。いつも4扉の通勤電車しかやってこない沿線の住民にとって羨望の対象であった。

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▲「きぬ」1720系。

東武のロマンスカーは比較的古い時期にデビューしたせいか、撮影当時でも古風に感じるいかついフロントマスクを持っていた。今になってみればこれはこれで味わい深いデザインだなと思うが、当時は他の路線にスマートなデザインの優等列車が走っていたので、あまり好きな車両ではなかった。

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▲快速急行「おじか」6050系

本線系統ではこの車両が特別料金なしで乗れるクロスシート車である。こういう電車に気軽に乗れるなんてうらやましい。

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他にも何枚か撮影したが省略。小1時間ほどホームで撮影にいそしんでいるうちにいよいよ日が傾いてきた。そこから宇都宮線の写真を撮るために新栃木駅まで足を伸ばし、そのまま折り返して春日部駅へと戻る。移動中にすっかり日が暮れてしまった。


春日部駅から大宮駅へ向かうために野田線ホームに移動すると、その時やってきた列車が、

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2080系!

野田線の中でもレアな3000系以上に超絶レアな列車だ。なのにこの辺でカメラのフラッシュが点かなくなってしまった。なんでいつもこういうときに限って。。。

ちなみに2080系は日比谷線直通用に用いられていた2000系を改造して野田線に転属させた車両である。東武という会社はこのように古い車両でも使えそうなものは限界まで使う。ただ、転属先の路線の需要にあっていないこともよくあって、割と早々に引退してしまうことが多い。そういう意味でも一期一会的なのだが、こうして撮影に失敗すると二度とその姿を見られないまま過去帳入りしてしまったりするので、撮影失敗はひときわがっかりするのである。。。

ということでまたしてもレア物ゲットならずで帰宅したのだった。

(おわり)

Posted by gen_charly