気球に乗ってきた話【2】(2023/05/20)
気球の乗り方:
自分らの前の人が体験搭乗している間、傍らにいたスタッフから色々教えてもらった。曰く、
- 今日は朝の時点で風があまり吹いていなかったので開催することにしたが、少し前からいくらか風が出てきてコントロールが難しくなってきている。
- 通常は地上と紐で結ばないので、風が強いと転落の恐怖を感じるくらいゴンドラが傾くこともある。だからある程度風が強くなると中止せざるを得ない。
- 中止すると参加者から恨み言を言われてしまうのだが、風で大きく傾いているゴンドラを見せると大抵納得してもらえる。
- 乗客の体重を考慮しながら丁度良くなるように浮力を調整しているので、ゴンドラ内の重量が大きく変化しないようにする必要がある。なので交代の際は1人降りて1人乗る、みたいな形で搭乗するので協力してほしい。
などなど。
スタッフは風が吹き始めたと言っていたが、ここで感じるのはそよ風程度の弱い風だ。風速にしたら1~2m/秒程度と言ったところ。だがその程度でも気球は風を受けて時折傾いている。その傾きは風の強さの割に随分大げさだ。これ以上風が強くなったら、地上の人が保持しているロープが外れてどこかへ流されてしまうのではないか、とか、逆に変な風を受けて気球が急速にしぼんで墜落するのではないか、みたいなことが連想されてしまい、なんだか少しひやひやした気分になった。
登場開始:
そうこうしているうちに前のグループが地上に戻ってきたので、いよいよ自分らの順番が回ってきた。数分前から雨がぱらつき始めた。問題なく飛ぶのだろうかという不安がなくもないが、ここで中止になったらそれはそれで困る。だがその心配は杞憂だった。
さて、我が家の誰もが経験したことのない熱気球への搭乗である。果たしてどんな乗り心地だろうか。
ゴンドラの扉が開いて前の乗客が2人ほど降りたら、スタッフから大人から乗って!と声がかかる。チビを残してまず自分とカミさんが搭乗。それから3人目が降りてきた所でチビも搭乗。こうして重量が大きく変化しないようにしているという訳だ。
今回は我々と後ろに並んでいた親子連れが一緒に乗ることになった。後ろの親子連れはお父さんと子供の2人だ。
これに気球をコントロールするためのスタッフが1人乗って、しめて6人。ゴンドラはすし詰め状態である。
チビは身長が低くてゴンドラの手すりの所から頭が出なかった。これだとチビはゴンドラの壁しか見えないかな、と思ったが、運よくチビが立った場所の真ん前に網がまばらになっている場所があり、そこから外の景色を見ることが出来た。少しだけ搭乗を怖がっているきらいがあったので、このくらいしか見えない方が恐怖感は少ないかもしれない。
上昇:
スタッフから、手元のひもに掴まってくださいと指示されたので、ゴンドラの壁に付けられた紐に掴まる。
皆が乗り込んで扉が閉まったらスタッフがバーナーに点火する。するとすぐに浮き始めた。
スルスルと高度が上がり、あっという間に周囲の木々より高いところまで上がってきた。高さで言うと12~3mくらいか。
さらに登って20mほどになった。地上にいるスタッフはあっという間にミニチュアの人形のようになってしまった。
恐怖を感じるほどの高度感はないが、熱による上昇気流が我々の重さと風との間でせめぎあいをしていて、ちょいちょいふらつく。今のところはなんと言うこともないが、確かに紐に掴まっていないと、急に姿勢が変化してしまったりした時なんかにゴンドラの外に投げ出されてしまいそうな怖さがあった。
チビは件の小さな隙間から食い入るように外の景色を眺めていた。チビにとってはほぼ目線の高さだが、もう1人の女の子はチビより背が高く屈みながら窮屈そうに覗き込んでいる。普通に真っすぐ立てば普通に景色が見られそうだが、そうしないのはやっぱり怖いのだろうか。
バーナーのコントローラーはこのようになっている。それぞれがどのように機能する物かは分からないが、スタッフはこれをちょいちょいいじりながらバーナーの出力を細かく調整して浮力を調整していた。
上空に上がって少し操作が落ち着いたところで、スタッフのおじさんがこんなことを言っていた。
- 今日みたいに気温が低くて更に風のある日に飛ばすと、強めに焙らなければならないのと、細かい調整を沢山しなければならないのとで、バーナーのガスがあっという間になくなってしまう。
- 濡れたまましまうとシートが綺麗に乾かせずカビが生えやすいので、本当は雨が降っている時はやりたくない。
降下:
そんなお話を聞いていたら時間が来たらしく、とうとう降下が始まった。もう少し上空からの景色を堪能したかったが、順番待ちの人も沢山いるのでやむを得ない。
降下もまた細かいバーナーさばきが必要になるそうだ。バーナーを止めると一気に降下して地上に激突してしまうので、適度に間隔を開けながらバーナーを小刻みに点火して、気球内の空気がゆっくり冷ましながら徐々に下降させていく。
ある程度まで下がると今度は地上側のスタッフがロープを手繰って姿勢を安定させつつゴンドラを着陸させる。
それでも着陸の際はスーッと降りるのではなく、軽い衝撃があって1,2度小さくバウンドをしてから、ようやく静止した。
さて、これで体験は終了なのだが、我々が降りる前に先にボンベを交換することになった。これも重さが急に軽くならないようにするための工夫だが、逆に言えばボンベもそれなりの重さがある。それをゴンドラの壁をまたがせて狭いゴンドラの中に入れ込むので、持ち上げるスタッフも引き受けるスタッフも大変そうだった。
ボンベの交換を終えたら我々の降りる番である。乗船の時と同様、後に来た親子がまず降りて我々が下りる前に次の家族が乗り込む。
それからようやく我々tが降りてもう一組が乗船する、と言った具合にとにかく重量バランスを崩さないようにすることを徹底していた。
というわけで、数分ぶりに地上に戻ってきた。
あとがき:
いやしかし、気球に乗るなんて滅多にできない体験が出来て本当に良かった。ただ、何度も乗りたいか、と言われると正直それほどではなかった。
気球というとふんわりとした乗り心地で、すーっとどこかへ飛んでいくようなイメージだったので、イメージしていたものとちょっと違う感じだったからだ。今回は風の影響があったためか思ったよりも随分とスパルタンな乗り心地で、常に緊張しっぱなしだった。
もう少し気候が穏やかなタイミングで乗ることが出来たら、あるいはもっとのんびりと時間をかけて乗ったりしたら、もしかしたら今回とはまた違った印象を受けたのかもしれないが。
今日の回が空いていたのは天気の悪化を予想して辞退した人が多かったためなのではないか、と思った。
(おわり)